第三十八話 罠
ガズバースへ
明日の昼頃にライガの森を通る。
そこで襲撃するぞ。兵は三十ほどで良い。
ああ、王国兵の服を用意してくれないか?
もう騎士団の服など着たくないのだ。
アスタルテの友人のアルニエスより。
「騎士団、アルニエス!ラクタウト!オスター!ラッテルタ!」
まだ暗い空の下、ファントレアル騎士団長の点呼にはきはきと応える騎士団の捜索メンバー。起床後、急遽オスターが加わることがエデルジート団長から告げられた。元々茨の城団から複数人を参加させるなら参加しないという予定だったが、なにやらアルニエスが不穏な動きをしているらしい。
「茨の城団、エミラッシェ!シリアス!ハルセンジア!ヴィンデート!」
「「「「はい!」」」」
ここにいるメンバーは、アルニエスの動きに気付いている。オスターは元々、ファントレアル騎士団長に命じられ、アルニエスの素性を探っていた人物だと聞いた。
「皆、力を合わせて任務を遂行すること!」
「「「はっ!」」」
アルニエスが不安材料だとしても、[王の道]を[探知]しないとねーちゃんを捜すことが出来ない。全員でアルニエスをマークすることで対策するみたいだ。
......何が狙いだろう。
そう思考を巡らせつつ、俺達は北へ出発した。
騎士団用と茨の城団用。それぞれの馬車を二台連ね、北へ進む。
ルートとしては、北へ向かってデート・ガルディアを通り、そこから更に北へ向かって王都で物資を補充する。そこから東を回ってセントレイクの街へ一旦戻り、次は西を回って王都へ向かうらしい。
「......森だ。」
「ビシュレックライガが出現した所ですよね?」
デート・ガルディアまでは、逆毛の霊獣団の護衛任務と同じ道を通る。平原ではあまり魔獣に襲われなかったし、このまま静かに通りすぎれば良いとは思っているが、現実はこうも甘くは無かった。
そろそろ昼食の為、保存食を皆取り出す。俺も五個ほど手に持って、一つずつ口に入れた。
と、その時。
「っ!アルニエス!?」
先行している騎士団の馬車が、がたりと揺れる音がした。
俺達が身を乗り出すと、アルニエスが木々に身を潜めたのが見えた。
「上だ!」
ハルセンジアさんが叫び、斜め上を見上げると、大量の火の玉が降り注ぐところだった。シリアスさんが無詠唱で魔力の固まりを飛ばし、相殺する。しかし騎士団の馬車まで守る事は出来なかったようで、それの被害は甚大だ。
「ビート系の魔法......!?」
「使えないはずですが......。」
騎士団の馬車から、ラクタウト、オスター、ラッテルタが逃げ出した。皆火傷を負っている為、ここはエミラッシェさんの出番だろう。
「今癒しま......、っ!」
エミラッシェさんの横から魔法弾が飛んできた。エミラッシェさんに直撃するが、すぐに自己回復する。飛んでくる魔法弾には堪らず、ハルセンジアさんが防衛陣を出現させる呪文を唱える。
「デート・フィーリア・アルペネイン!」
茨の城団を守る防衛陣と、騎士団を守る防衛陣の二つを出現させるが、ハルセンジアさんは膝をついてしまった。元々魔力量が低いので、無理をしたのだろう。
「ごめんなさい、反応できませんでした。」
「いい、それより周りを見渡せ。」
シリアスさんが謝罪するが、ハルセンジアさんはそれを流して索敵をするように言う。ぐるりと見渡すと、森に隠れきれなかった人がちらほら見える。
「茨の城団!魔術具で回復したため、もう大丈夫だ!防衛陣を解いてくれないか?」
「了解した。」
ハルセンジアさんが防衛陣を解くと同時に、オスターが剣を抜き、森に隠れている人を攻撃する。それに続いてシリアスさんが大量の魔法弾で辺りの木々を薙ぎ倒し、あぶり出し始めた。
「ははっ、シリアス!助かるぞ!」
「無理はしないようにしてください、オスターさん。」
二人の連携で、なんとか打開出来そうだ。
「ラクタウト!襲撃者は何人いる!?」
「見える限りでは残り二十二人ほどです、オスターさん。」
「多いな。」
その時、こちらに三人ほど襲い掛かってきた。ハルセンジアさんと俺が剣を抜き、シリアスさんの意識が三人の襲撃者に向いたのが分かった。
「シリアス、サポートを頼む。」
「ラッテルタ!茨の城団をサポートしろ!」
「「了解しました。」」
三人はそれぞれ別れて、別々の角度から攻めてくる。俺とハルセンジアさんが一人ずつ、ラッテルタとシリアスさんで残り一人を対応する形だ。俺は[ステータスオープン]を使い、一番弱い襲撃者を足止めすることにする。
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シルライア 24歳
攻撃力 62
守備力 23
魔力量 12
速さ 11
体力 43
獲得スキル
[基本剣術]
[格闘術]
[基礎魔力操作]
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相手は抜刀状態だが、不意の[格闘術]に注意しておきたい。
「子供でも、容赦はしない。」
そう言って斬りかかってくるのを受け止め、剣同士をぐるんと回して地面に剣を押し付ける。ここで攻撃力と速さが上昇するのが見えた。
......[格闘術]!
左に飛んで、足蹴りをかわす。そこから姿勢を低くして、足を斬りつけた。
「ぐわぁっ!」
宙に舞う人間の血を見て吐きそうになる。殺さなければいけないのに、大事な時のあと一歩が踏み出せない。
......ここで、殺さなきゃ。
「大丈夫だ。」
胸を穿つ剣。ハルセンジアさんが止めを刺して、相手は絶命した。
「まだ、人を殺すのは難しいよな?俺がやるからサポートに回ってくれ。緊急時とはいえ、こんな事をさせようとして申し訳ない。」
「......だ、大丈夫です。ではサポートに回ろうと思います。」
シリアスさんとラッテルタが担当している相手も倒れ、それぞれの持ち場に戻った。
そこから約三十分、俺達は戦い続けた。
分かった事は、俺達が戦ったのが王都の王国兵だということ。
その途中で、アルニエスがやってきた。
「......アルニエスッ!貴様!」
そこにやってきたアルニエスは、王国兵の格好をしている。王国兵とは、もちろんアンデルビート国王派だということだ。前々から感じていたが、ここで始めてアルニエスに罠にかけられたのだと確信した。




