第三十一話 明日の準備
あと少し......。もう少しで、デート・ガルディアの街に着く......。
早く、この危険を......しら......せなければ......。
「必要な物をまとめよう。......武器、食料、移動力強化の魔術具等だな。」
「魔術具についてはあまりわからないので、武器と食料を準備しておきますね。」
そう言い置いて、俺はミレーマーシュさんがいるキッチンへ向かった。
「ミレーマーシュさん、護衛に必要な保存がきく食料が欲しいのですけど......。」
「はい、デート・ガルディアの街なら、護衛対象含めて......これぐらいでしょうか?」
ミレーマーシュさんは奥にある扉を開け、沢山の袋を抱えて戻って来る。
小分けにしてハルセンジアさんの所へ往復した方がいいと思い、まずは三袋抱えた。
「これで食料は全部か。次は武器だが......、ヴィンデートはあの剣で大丈夫だろう。俺の分は俺で準備するので、ヴィンデートはエデルジート団長に移動力強化の魔術具の貸し出しの許可を出してきてくれ。」
五往復してやっと全ての食料を持ってくることが出来た。帰ってきたら、ハルセンジアさんの部屋に、紙が束になって積み上がっているのが見える。
「この紙はなんでしょう?」
「道中にある地形や、魔獣、魔物の資料だな。あとは依頼人に出発日時を指定する手紙だ。準備が終わったらこれらを確認する。」
「はい、わかりました。ではエデルジート団長の所に行ってきます。」
エデルジート団長に移動力強化の魔術具の貸し出しを申請するため、執務室へ向かう。扉を開けると、そこにはエデルジート団長と、どこかで見覚えのある男性がいた。
「これはどうも。私はラクタウトと申します。[王の道]の捜索の任務を共に遂行しましょう。」
「よろしくお願いします。」
ぱっと見、二十代後半だろうか。がっちりとした体型に長い金髪が少しアンバランスだ。
「エデルジート団長、移動力強化の魔術具が必要みたいなので、借りてもいいでしょうか?」
「ああ、そうだな。案内する。」
そう言ってエデルジート団長はラクタウトに一言置いて立ち上がり、執務室から出た。俺も付いていこうとしたところ、ラクタウトに声をかけられる。
「デラストレイレスが五年目であるという情報、そして戦闘中の攻撃の察知の情報、どちらも助かりました。改めて礼を言います。」
俺は振り返ってにこりと笑顔をつくり、執務室の扉を閉めた。
エデルジート団長に連れられ、本館でも寮でもない、倉庫のような建物に入る。
「これだな......。しばらく使っていなかったが、問題なく動くだろう。」
「ありがとうございます。」
周りの魔術具にも様々な形があるが、この魔術具は緑の球体だった。ガラスのように奥まで透けて見え、大きさは俺の頭ぐらいか。
「この大きさではヴィンデートは厳しいか......。俺が持っていこう。」
ハルセンジアさんの部屋へ、魔術具を持っていく。
と、言っても持っているのはエデルジート団長だが。
「エデルジート団長。」
「持ってきたぞ。これで準備は万端か?」
「あとは道中の注意事項のみです。」
注意事項はしっかりと頭に入れなくては。気を引き締め、拳を握る。
「ラクタウトを待たせる訳にはいかないので、ハルセンジアは後を頼む。」
「わかりました。」
エデルジート団長はここから退出し、俺はハルセンジアさんと二人きりになった。
「では、道中の地形を説明しよう。」
ここから約一時間にわたり、地図と資料を使ってデート・ガルディアへの道のりが説明された。簡単にまとめると、平原をひたすら通れば最短で行けるが、途中から魔物の攻撃が激しくなる為、迂回して森に入るそうだ。ハルセンジアさんは全て倒せると自慢げに話していたが、護衛対象がいる為、迂回せざるを得ないらしい。平原、森、平原と通ると、デート・ガルディアの街が見える。
「次は出現する魔獣、魔物についてだ。」
一つ目の平原には特に注意すべきものは無いらしい。レレティック、サウディパウロ、スウィントゥーと、今まで戦ってきた魔獣しか出ない。強いて言えば、全てに共通して盗賊等に気をつけることぐらいだ。そして、要注意である森。迂回の原因である平原ほどでは無いにせよ、魔物クラスが出てくるらしい。
「魔物は魔獣と違い、殺傷能力がかなり高い。だが出てきても精々一体だろう。ここには群れを成す魔物はいないはずだからな。......注意すべきは魔物と魔獣が同時に出現したときだ。」
その時は俺が魔獣を足止めし、ハルセンジアさんが魔物の相手をする。それと、護衛を常にカバーできる範囲にいる。それらを確認し、デート・ガルディアまでの平原を見る。
「一つ目の平原とほとんど同じだ。魔物は出ない。」
ハルセンジアさんは地図上の平原を指差し、そう言った。
ちょうど昼食の時間になる。ハルセンジアさんは立ち上がり。
「昼食が終わったら復習をしておけ。資料を渡しておく。......昼食が終わったら俺は管理支部へ行って、依頼人に説明をしておかなければならない。」
その後、昼食を食べ終えて、自分の部屋で夜まで自習をしていた。