第二十四話 山積み
「テレヴァンス、とりあえず許可を求めてきますね。」
シリアスさんはそう言って、茨の城へ向かった。
あと少しで冬があける。冬があけたのなら、本格的なねーちゃんの捜索が出来るとエデルジート団長が言っていた。
「ヴィンデート、エデルジート団長が呼んでいます。」
「わかりました、シリアスさん。」
ねーちゃんの事だろうか。談話室に向かう。
「なんの用でしょうか?」
「......[ステータスオープン]とは、能力を数値化出来るのだよな。」
俺がこくりと頷くと、エデルジート団長は顔を引き締めて口を開く。
「あのデラストレイレスはかなり特別な種類だとわかった。そのために何が違うのか、数値で見てみたいという意見が騎士団長で出てきた。」
「通常のデラストレイレスも見に行くんですか?」
「そうだ、それとできればあのデラストレイレスの数値を思い出してほしい。」
理解した。あの時の数値は頭にこびりついているように残っている。
いつ行くのか、そう聞くと、エデルジート団長は頭を悩ませた。
「やることが沢山あるんだ。意見が出ただけで具体的な計画は決まっていない。」
「デラストレイレスの影響で多くのギルドの被害が出ましたからね、それとねーちゃんの捜索も......。」
それに加えて仕事が多く回って来る。それぞれ処理していかないと全て間に合わないのだ。この事がどれだけ大事なのかでいつ行うのかが決まる。
「デラストレイレスの処理はこの一週間で終わりますか?冬があけるとねーちゃんの捜索って......。」
「気持ちはわかるが落ち着け。......デラストレイレスについてはかなり面倒なことになる。少なくとも夏まで引きずるだろうが......、人の手が介入しているのだ。予測が出来ない。」
エデルジート団長の口ぶりから察するに、今回は完全な騎士団上層部の独断みたいだ。
本題はなぜデラストレイレスが五年間生き延びたのか、そのことに対して誰が補助したのか、だ。五年間デラストレイレスが生きたデータがないので、出来れば今のうちに回収してしまおうということか。
そのことを話すと、正解だ、と言われて団長は肩の力を抜いた。
「理解が早いようで助かる。それで、協力できるか?」
「できますよ。あのデラストレイレスのステータスは記憶しているので、今書いておきます。」
ペンで紙にあの時の数字を書き写す。
感謝する、と言われて退出の合図を出されたので、俺はお茶会部屋へ向かった。
「戻りました......、あ、エミラッシェさん。」
「......。」
エミラッシェさんはちらりと見ただけで、視線を机の上の資料に移す。
最近はずっと部屋に引きこもり、姿を見かける事が無かったのだ。
「エミラッシェ、挨拶ぐらいしなさい。」
「......。」
ミレーマーシュさんが指摘しても、ただ無言で書類にペンを走らせるだけ。
ついには席を立ち、お茶会部屋から出ていってしまった。
「......彼女こそ、自分の言葉に責任を持ってほしかったです。」
何があったのかは聞きたくない。
それでも、何かをしてしまった事はわかる。
玄関のベルが鳴り、お茶会部屋にシリアスさんが入ってきた。
「とりあえず......。はい、テレヴァンスの資料ですね。」
「このギルドに入団させるのですよね?」
デラストレイレスの被害を直接受けた村の村長だ。
資料には年齢や性別、入手した資格等が乗ってある。
「二十四歳......若いですね。村長だっただけあって、資料等を処理する能力が高いようです。ほら、この資格の事ですが......。」
「ええ、非戦闘要員ですね。書類仕事は多過ぎて手が足りないので助かります。」
ミレーマーシュさんとシリアスさんは、彼女の能力について話し合っている。
少し目を通したが、資格についてはあまり分からなかった。
「ヴィンデートは、彼女を入団させることに賛成ですか?」
「初対面の印象はよかったし、資格について大丈夫なら賛成ですよ。」
シリアスは満足そうに頷き、メモをして管理支部へ向かった。
閉まる扉を見て、ミレーマーシュさんは小さく呟いた。
「さて、やることが沢山ありますね。」




