第二章 エピローグ・闇
「アグライト様に祈りを!」
僕、サイファリアはアグライト様を誰よりも信仰している自信がある。
朝起きた後、朝食前後、午前の仕事前、昼食前後、午後の仕事前、夕食前後、寝る前。
この世に生を受けてから十三年。ずっとこの毎日を繰り返してきた。そのおかげで、アグライト様を絶対神として崇めるアグライト教の幹部として、仕事をこなす毎日を過ごしている。
「おい、サイファリア。昼食だぞ。」
「はい、今行きます。」
同い年のアグラメシィアが呼んでいる。
廊下を通り、合同の食堂へ行こうとしたところ、少し暗くなった気がした。
「なんだろう、不具合かな。」
気持ち少し寒い。冬の寒さが残っているとはいえ、不自然だ。部屋を暖かくする魔術具がきれたようで、臨時で蝋燭を出し、炎の魔法で燈そうと詠唱している人が見える。それを尻目に、僕は急いで食堂へ向かった。
「何か不具合がありましたか?」
「サイファリア様、何かが変なのです。」
どうやらビートを元とする炎の魔術具のみきれたらしい。
しかし、魔術具のみならず、自分達も炎の魔法が使えない。
「ビート・ボア・タイトレア」
試しに唱えてみるが、発動しない。
おかしいと思って大司教様の下へ向かおうとする。
「おい、俺も連れていけ。魔術具の整備をしているから何か分かるかもしれない。」
「いいですよ。」
アグラメシィアを連れて、大司教様の部屋へ向かった。
「サイファリアです。」
「アグラメシィアです。」
大司教様のベールの奥から篭った声が聞こえ、用件を尋ねられる。
「ビートを元とする魔法が使えなくなりました。」
「存じておる。ビートは落ちた。我等はアグライト様を信仰する者......。アグライト様が絶対......。」
「......はい。」
大司教様はアグライト様が良ければいいらしい。
しかしビートがなければ生活が困るのだ。
そう言おうとしたとき、大司教様の口から驚きの言葉が出た。
「アンデルビートがビートを取り込み、支配下に置いたと通達が入った。これの原因だ。それによって調和が乱れている......。よって、いま、我等が、アグライト様を......。ふはは、はははははははははははは!!」
「......大司教様?なにを?」
「サイファリア。」
「はい!」
急に名前が呼ばれた事に驚き、少し飛び跳ねた。
緊張で顔が引き締まる。
「リア、花の神、だったな?」
「......どういう事ですか?」
「アグラメシィア。」
「はっ。」
アグラメシィアも呼ばれるが、落ち着いて返事を返した。
少し、笑みを浮かべている気がする。
「アグライト、我等が闇の神、それが由来......。」
「おっしゃる通りです。」
「ふふふふ......ははは。愛されている!愛されている!アグラメシィア!愛されている!」
大司教様は狂ったように笑い、甲高い声は部屋中に響く。
ふらりと大司教様はアグラメシィアに近寄り、両肩にそれぞれの手を当て、寄りかかる。
「神にならないか?アグライト様を自由に、全てを支配させる......。」
「ええ、アンデルビート国王も出来たのです。私も神になります。」
アグラメシィアは何かを知っているが、恐らく教える気がないみたいだ。
二人とも狂気に満ちている。手に負えないとわかり、部屋から退出しようとする。
「報告が終わりましたので、これで私は......。」
「せっかちな......、まあいい。」
心臓が跳ねる。何かが変わりはじめた日。ビートが落ちた日。
物語の始まりです。




