第二章 エピローグ・旅
道。歩くだけ。
「なにかあったら俺に相談して。今度は、俺がねーちゃんを守るから。」
あの言葉を思い出す。
ありがとう、ヴィンデート。もう私、いらないよね。
守れるくらいに強くなったんだね。
私、逃げよ、遠くに。
地平線。眩しい半円へ向かって、私は歩いている。
死ぬのは怖い、いたいかも。でも今はつらい。だから消えたかった。
私には死ぬ勇気がないのかな。
そんな私は、殺す事は許されないのかな。
地平線。欠ける満月に背を向け、私は歩いている。
おなかがすいた。くらくらする?
そうだね、いたいぐらいおなかがすいた。
かってにしねる?きえれるかな。
ちへいせん。そんなものはみえなかった。
眩しい。眩しい。眩しい。
手には血。鼻には鉄の匂い。口には生肉。
わからない。なんでこんな事になったんだろう。
「ごめんね。」
目の前に横たわる元小動物。現肉塊。
痛み、空腹に私は耐えられなかった。
地平線。眩しさがうっとうしかった。
傷、傷、傷。
肉、肉、肉。
見える度に襲って、喰らう。
その度、私に傷が増えていく。
歩く、走る、喰らう。
水平線。ここはどこだろう。
いたい、いたい、いたい。
見えない。目を押さえようとも、どろどろしてねちゃねちゃして。
そんな時に温かい吐息がお腹にかかる。
なんだろう。そう思ったら。
あつい。いたい。
私の肉に食い込む何か。
それは私を引き裂こうとしている。
ああ、私、食べられてるんだ。
温かい。死んだのかな、私。
でも、右手を動かせて足を触る。
死んでない。生きてる。
でも、見えない。真っ暗。
聴こえない。だから声が聞こえない。
さみしいよ。やっぱり死んじゃった?
その時、人の感触。
私に残る五感の一つにすがる。
人の手、人の吐息。温かさ。
人だ。人だ。人だ。
真っ暗にすがる。
でも、いつの間にか。
私に光が戻っていた。
「おはよう、アグライト。」




