第二十二話 被害報告
「風邪をひいた心当たりはありますか?」
ただ原因が分かればいいと思っていた。
しかし、放たれた言葉は、彼女自身を傷つけるような。
そんな自暴自棄な思考が見て取れた。
「たたき起こされたのですが......。」
「すまない、昨日のデラストレイレスについて詳細な報告が入ったのでな。」
終わったら寝かせて下さい、とエミラッシェさんは言いつつ席へ座る。それに続いてハルセンジアさんとシリアスさんも席についた。しかし違和感に気づいたシリアスさんはエデルジート団長を睨む。
「フィリアちゃんとミレーマーシュさんは?昨日いなかったからと言って情報を共有しないとは......。」
「フィリアは風邪をひいて、ミレーマーシュはそれを観察しながら使う魔法を見定めている。彼女らに対しては後で情報の共有をするので問題ない。」
今起きてきた人達は少し心配したような顔をしたが、すぐに興味は情報に移った。急かされたエデルジート団長は紙を取りだし、詳細な情報を言い始める。
「昨日言った通り、暁の瞳団の主要メンバーは全滅。仕事の処理が追いつかなくなることを危惧した騎士団は、暁の瞳団に回す仕事量を減らす方針だ。元々暁の瞳団に回すはずだった仕事の大半は少し下級のギルドに下げ渡され、回された仕事の数に応じてさらに下のギルドへ他の仕事を回す事で、依頼が溜まるのを防ぐそうだ。」
「つまり、ここにもある程度の仕事が回ってくるということですね。」
そうだ、と頷いて次は逆光の鏡団についての事を話し始める。
たしか昨日の報告によると、団長が死亡したと記憶している。
「サンデルエイト団長が死亡。だが彼は引退真近であり、既に後継ぎが決まっていた為に二、三日で仕事復帰できるだろう。後継ぎはサンデルエイト団長の孫のカルテラッシェ。サンデルエイト団長の死について、かなりショックを受けていたらしいが......。」
「......嘘、ですよね。」
ああそうだ。そう言ってエデルジート団長はうんざりしたような顔でため息をはいた。なにか知っているのだろうが、質問しても今は教えてくれなかった。
「......騎士団についてだ。サーテレラが休養、アルテラが死亡。カルメティとシュクレイトが行方不明だ。次にギルド全体について。白金の天使団も主要メンバーは全滅。前述した上で死亡者は二十一人、重傷者は十七人、行方不明者は三人。南側の村の被害は四十三人が行方不明、恐らく捜索は早めに切り上げられるだろう。」
「生きている可能性なんて限りなく低いですからね......。」
力を注ぐのはなぜデラストレイレスが出現したのか、それについてらしい。そのことを告げた後、エデルジート団長は俺を向いて。
「ヴィンデート、君のスキルで獲得した情報を教えてほしい。あのデラストレイレスは何年目だった?」
「えっと......、5歳って表記がされていました。」
そう言うと、ハルセンジアさんが眉間にしわを寄せて首を振った。
「五年だと?何故発見されなかったのだ?」
「恐らく、人の意思が介入していると思われる。おそらく......。」
エデルジート団長は苦虫を噛み潰したような顔で何かを言いかけたが、憶測のみは良くないと言って話題を変えた。
「そういえば、南の村の生き残りはここで生活をするようだ。そのなかの一人がここのギルドで働きたいと言っているが......。」
「うーん、食費を納められる働きができるのならば......、でしょうね。」
シリアスさんが唸り、しかし条件付きで許可を出す。
誰だろうという疑問を口にすると、エデルジート団長は。
「顔は知っているだろう?そう聞いた。村長だったテレヴァンスだそうだ。」
ああ。出迎え、案内し、剣を渡してくれたあの金髪の女性だ。
知っている顔が生きている事に安心して、顔が緩む。その時。
「ヴィンデート、フィリアが呼んでますよ。」
ミレーマーシュさんがお茶会部屋に入ってきた。
「何の魔法を使うかは分かったか?」
「ええ、テレセレアを使えばいいかと。」
ねーちゃんの病気は治るみたいだ。安堵してねーちゃんの部屋へ向かう。
廊下に出ると、ミレーマーシュの声が聞こえた。
「さて、エミラッシェ。フィリアになにをしたのですか?」




