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スキル・ステータスオープンはステータスを見るだけ  作者: ぐざいになったねこ
第二章 ギルド勤務一年目
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第十七話 責任逃れ

ふしんかん たすけてなんて おこがましかった

「この仕事で魔力操作に慣れていきましょうか。」


そう言って、エミラッシェさんはバインダーから取り出した紙を読んでいく。

その内容はセントレイクの富豪より、数百ものビート石に冬を越せる分の魔力を込めてほしいというものだった。


「一部を手伝ってくれるだけでいいのです。慣れていきましょうか、フィリアちゃん。」

「はい!」



次の日、依頼人の所へ行く道中。

あまり良い調子に見えないエミラッシェさんと一緒に大通りを歩いていた。


「どうかしたんですか?」

「いいえ、大丈夫よ。」


そうは言っているが顔色が悪い。

昨日の夜に談話室へ呼び出されていたので、エデルジート団長に何か言われたのだろうか。話したい事があるのに。

そう考えていると。


「着いたわよ、フィリアちゃん。」



富豪とは聞いていたが、ここまでとは予想していなかった。

管理支部から右に曲がった所にあるその屋敷は二階建て。

中に入るとカーペットが敷かれており、上を見ると吹き抜けでシャンデリアの周りを囲うように通路がある。そこに続く階段の裏には食事をとるらしき部屋がある。


「......すごい。」

「......懐かしいわ。」


そうエミラッシェさんが言ったが、いいえ、と誤魔化す。

触れられたくない過去。元々はエデルジート団長の婚約者だったので、このような屋敷で暮らしていたのではないだろうか。


「わざわざご足労いただきましてありがとうございます。さて、ではこちらへどうぞ。」


私達を出迎えた依頼人の男性は、すぐに作業部屋へ通す。自己紹介もせずに。

通された部屋の中央には紅色のビート石の山があった。


「では、昼頃に使いを向かわせるので......。」


そう言って依頼人は扉を閉め、仕事をさせる。

彼の雰囲気は......なんか嫌な感じではあるが、仕事なのですぐにビート石へ手を伸ばす。


「いい加減ですよね。」

「......そうですね。」


不機嫌になっても仕事だ。私が出来ることをするために、ビート石へ魔力を込める。今日の朝。ヴィンデートにステータスを見てもらうと、魔力量が9に上がっていた。少しでも上がっていることが嬉しくて、道中で話そうと思っていたけれど。



体内の波を押し流して三十分。

三個のビート石に魔力を流したところでリタイアした。


「初めはみんなそんなものよ。少しずつ慣れて効率良く魔力を流せるようになりましょう。」

「......はい。」


そんな私を励ましつつ、エミラッシェさんはもう百個以上込めてるようにみえる。一気に十個あたりを抱えて魔力を込めている。そんな事ができる魔力量が羨ましい。


「......言おうか迷っていたけれど、昨日団長に言われたのです。」


そう切り出してエミラッシェさんは俯く。

大丈夫ですか、と尋ねても笑顔で流された。


「私はサイサンシュレイトを取り返しに行くの。みんなは子供は戦争に直接関わらせたないって言ってるけど、貴女が王になるのなら、それを見届けて欲しいって願いもある。」

「それは......、戦争に出てして欲しいってことですか?」

「ううん、責任を持ってほしいってこと。貴女が責任から逃れる為に流されて王になるって言ったことに。無責任な貴女の判断が、沢山の人を傷つけることに。」


その顔は優しく諭しているようだけれど、声には明らかな敵意が含まれていた。



「いやいや、ありがとうございます。報酬はギルドへ支払っているのでお帰り下さい。」


適当にあしらわれても、私の心は恐怖に支配されていた。

エミラッシェさんが怖くて。押し潰されてしまいそう。

大通り、敵意を感じている人が隣にいて。

早く帰りたい。助けて。



「......エデルジート団長。」

「どうした。」


私はすぐに執務室へ駆け込んで、団長に助けを求める。

私は起こった事を話して恐怖を感じたことも言う。


「......言い方はともかく、責任云々は一理ある。ただこちらが巻き込んだだけだ。始めは可哀相だったから、そんな理由でこんなことに巻き込んだ。」


エデルジート団長はそう言って頭を下げる。


「申し訳ない。君の人生を壊した事を。本当に後悔している。」

「......壊されたとは思っていません。全部不可抗力でしたから。それに、いままででは有り得なかった暮らしを与えてくれて、感謝しています。そして私を思ってくれて、そんな事をする必要なんてないのに。」


なんで庇うんだろう。[王の道]が発覚した時点で殺すことも、追い出すことも出来たのに。そんな疑問を口にする。


「始めは面倒事が起こったから押し付けようとも考えた。だけど、情に流されて抱え込んだ。」

「逆に、私がこのギルドを壊したんです。エミラッシェさんも、貴方に不信感なんて抱かずによかったんじゃないかって。」

「......俺は分からないがフィリアは知っているのか?エミラッシェが不機嫌な理由が。」


逆に知らなかったんですか。という声が出そうで、少し我慢した。


「一度、話し合った方がいいと思います。私よりもエミラッシェさんと一緒にいた方がいいですよ。」


エデルジート団長は首を傾げたが、エミラッシェさんの気分が少しでも良くなるといいな、という考えで提案した。そして退出した後、一人だと思い出す。責任をもたないと。

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