第十六話 会議の後
「冬眠する魔獣が増えてきているな。」
「ですよね。全然いません。」
冬のおかげで仕事がなくなったのだが。
寒いし仕事が来ない。
冬は嫌いだ。
「だいぶ早く終わったのですね。」
「はい、気味の悪いほどスムーズに。」
本館でミレーマーシュさんが出迎え、お昼の準備をする。
僕達は残ったミレーマーシュさんとエミラッシェに報告をしなければ。
「大体こちらの筋書通りですね。けれどこんなにあっさり行くとは......。」
昼食中に報告をする。
報告を受けたエミラッシェは目を開き、驚いている。
けれどすぐに真面目な顔でフィリアちゃんとヴィンデート君を見る。
「確かテル教育校に行かせると言っていましたが。どうなるか分かりませんね。」
「十二歳の春に向かう学校ですよね。この状況では厳しいんじゃないですか?」
そう言ってヴィンデート君はスープを飲む。
僕もスープを飲み干し、席を立った。
「とりあえず団長の言葉を待ちましょう。話はそれからです。」
「今帰った。」
「お帰りなさい、団長。」
エデルジート団長がお茶会室に通され、いつも通り最奥の席に座った。
ヴィンデート君とハルセンジアさんは東の森に行き、フィリアちゃんは管理支部でエミラッシェと仕事を探している。ここにいるのは僕と団長とミレーマーシュさんだけだ。
......エミラッシェに報告するのは夜でいいでしょう。
そう考え、ミレーマーシュさんを見ながらエデルジート団長へ報告を促す。
エデルジート団長は机の上で手を組んで今までの説明をした。
「なるほど、シリアスの言う通りですね。」
「とんとん拍子に事が運ばれていきまして。......エデルジート団長。そしてその後どのような話を?」
どのような話をしたのか、と僕は質問する。
「まあ順番に説明する。まず初めに協力できる範囲だな。」
「条件付きですか?」
それは面倒だ。そう思っていると、予想外の返事が帰ってきた。
「その行動が正当であり、アンデルビート国王を追い詰めることが出来るのならば、惜しみもなく協力する。だそうだ。しかし関係のない人を巻き込みたくはないと言っており、協力出来るのはファントレル騎士団長、ミラシュレイン、アルニエス、オスター、ラクタウト、サーテレラ、ラッテルタの七人だ。この人達は反アンデルビート国派であり、共通の目的を持っている。」
少しばかり知らない人もはいっている。
そこにオスターさんが入っていることも驚きだが、エデルジート団長は話を続ける。
「あとは、俺さえいればサイサンシュレイト領を奪還することもできる。だそうだ。サーテレラとラッテルタはサイサンシュレイト領に嫁ぐはずだった女性で、その親族は怒り狂って十分な戦力が整っていると。」
「......けれど、こちらも準備を怠ることは出来ません。あの二人を巻き込まないよう、慎重に。」
僕がそう言った後、ミレーマーシュさんが不思議そうに質問してきた。
「テル教育校はどうするのでしょう?私達が奪還したのならこの領地が警戒されて、あの二人は入学できませんよ。」
「調べた限りサーテレラとラッテルタの親族はサイサンシュレイト領の隣の領地、テファレウテーリバル領にいる。そこが疑われるだろうが、もともとアンデルビート国王派だからな。疑われたところから崩してこちらの仲間にしようとも思っている。......だが、フィリアの入学は許可しない。」
「......こちらで抱え込まないといけないということですよね?」
元々は待遇は良くするが他のギルドに押し付けるという話だったはずだ。だがしかし、騎士団が関わっているとは想定外だった為、そして協力関係を結んでそれを無下に出来ない為、フィリアちゃんはこちらで抱え込まないといけなくなった。
「元々の建前はこちらのギルドから他のギルドへ繋がりを増やす為。ただ、繋がりを増やしてアンデルビート国王に情報が流れた時も考えて、ヴィンデートも入学させない方がいいとは思う。」
「それはそうですが......。戦いが終わるまで閉じ込められているのは可哀相ですよね。」
そうだな、と重い話を流して違う話題に変える。
「そういえば、他のギルドに不審に思われない程度に仕事を融通させると言っていた。」
「雪が降ってきたので魔獣狩りが出来なくなってきたので、かなり助かります。」
ほとんどの魔獣は冬眠してしまうので仕事をこなしていくしかない。たとえ二、三個でも馬鹿にならないのだ。
「そうして、サイサンシュレイト領の奪還はいつ頃できます?仕事をこなすならばその時期にまとめてこなすでしょう?」
ミレーマーシュさんが転換した話を聞いたうえで話題を戻す。
エデルジート団長はしばらく頭を抱えるが、納得のいく答えが出たようだ。
「雪解け前に出立する。メンバーは俺とハルセンジアは確定。フィリアとヴィンデート以外は任意で同行だ。」
「僕は残ります。誰かが二人の面倒を見なければいけませんから。」
ある程度の予定は立った。ここからどう詰めていくかが重要だ。
僕に出来る事を考えよう。絶対に成功させなければ。