第十五話 面会
面会依頼に書いてあった内容は、軽く遠回しな脅しが入っていた。
ミラシュレインとアルニエスがテロに関わっている事をどこで知ったのか。
ファントレル騎士団長にとって、かなり不気味に思えた。
「では、単刀直入に聞こう。どのような考えでこちらと手を組むと提案したのか。」
机を囲うようにエデルジート団長、ハルセンジアさん、シリアスさん、ねーちゃん、俺、ミラシュレイン、アルニエス、そしてファントレル騎士団長がそれぞれ真剣な顔で睨み合っている。会議室は酷く重たい雰囲気だが、エデルジート団長には切り札があるらしく、どこでそれを持っていくかをぎりぎりまで考えているに違いない。
「それは、[王の道]を所有しているフィリアを守りたいと考えたからです。」
「それがどうしてアンデルビート国王を倒す事に繋がるのか?」
そこにハルセンジアさんが、ファントレル騎士団長に真面目な顔で言葉を繋ぐ。
「お互いの利を考えた結果です。[王の道]を欲してる貴方達を対処するには、今の国王を打ち倒すのが手段でしょう。貴方達の目的は知りませんが、少なくとも今を越せるかと。」
「それは、未来がどうなってもいいと聞こえる。」
それに、と言葉を切り、彼は肩の力を抜いた。
「アンデルビート国王を倒すのは何かを成し得る手段ではない。俺の父上の敵を討つ為にするのだ。」
「......!」
エデルジート団長が何かを察したような、驚いたような反応をする。
ねーちゃんは安心したように胸を撫で下ろし、顔を上げる。
「未来がどうなっても良いとは思いません。ただ多くの人が望み、その人達が幸せになれるなら、私は王を望みます。」
「......多くの人が望んでも、それを執行して幸せになるとは限らない。もしフィリアが王になっても、教育を受けていない[王の道]を持ってるだけの一般市民がこの地を治められるとは到底思えん。」
至極真っ当な意見。だれも反論出来なかった。
ただ......。
「何故そんなことがわかっているのに、ねーちゃんを奪おうとしたんですか?理由を教えて下さい。」
「......アンデルビート国王を討った後の後釜が必要だ。そのためにずっと[王の道]を探してきた。そして[王の道]を操り、アンデルビート派の奴らを処刑出来たらとも考えている。」
操る。なんのことかは理解出来た。
「......私は。」
「思い詰めることはありませんよ。もし王になったら全力でサポートします。」
シリアスさんがそう笑顔で励ます。
その後、エデルジート団長はにこりと微笑んで。
「そうです。茨の城団が全力で支援します。サイサンシュレイト領で次期領主として、教育を受けたので。」
「なんだと?」
昨日の夜に俺達にも打ち明けた切り札。
エデルジート団長はここから怒涛の反撃を開始する。
「私はアンデルビート国王に滅ぼされたサイサンシュレイト領の次期領主のエデライブジートでした。よって私も一通りの領地経営の教育を受けました。残念ながら国レベルの土地を治めることは知りませんが、それでも無いよりはマシだと思います。」
「サイサンシュレイト......。目的は同じか?」
「ええ。倒した後の後釜もしっかり支えることが出来ます。サイサンシュレイト領さえ奪還できれば勝てる戦だとは思いませんか?」
ファントレル騎士団長は長考の末、手を組むことにした。
「アンデルビート国王の役人に奪われたサイサンシュレイト領を奪還した後、アンデルビート国王を倒す。よし、手を組もう。」
「ありがとうございます。騎士団長。」
そうして想定通りに面会が終わり、俺達は茨の城へ帰った。
エデルジート団長を残して。
エデルジート団長はしばらくファントレル騎士団長と情報のすり合わせを行うらしい。
ひとまず勝ち。これからの事を考えなければ。