第十三話 王になる決意
「なるほどな、ステータスを見ることで相手の動きを読めるのか。」
魔獣相手に善戦したことを褒められ、昼食にする。
さて、俺はどれだけ強くなれるのか。少しわくわくした感じでもある。
「エデルジート団長、ファントレル騎士団長とミラシュレインとアルニエスが共通で空いている日は明後日だと。どうですか?」
たった二人の執務室。ペンを走らせる音を掻き消し、僕は報告をする。
騎士団長との面会に向けて相手の予定を探ると、明後日が最適だと分かった。
「問題ない。......それより面会に行かせるメンバーを決めなければ。」
「エデルジート団長と僕は確定ですね。エミラッシェとハルセンジアさんは?」
「エミラッシェは暴走しそうだ。ハルセンジアは......、微妙だな。」
ハルセンジアさんは、エデルジート団長以外に高圧的な面がある。
ただ、妙に頭の回転が良いので迷うところだ。
......いつもその頭の良さで書類を手伝ってくれたなら、どれだけ楽なことでしょうか。
管理支部の僕の部屋に居候している割には、素材収集ばかりしている。
個人的に良い感情は湧かない。
「ハルセンジアさんは今のところ置いておくとして、ヴィンデート君とフィリアちゃんはどうしましょう。」
「ヴィンデートはフィリアが行くならついて行くだろうな。そしてフィリアは......、連れて行こうと思う。」
僕はエデルジート団長をじっと睨む。彼も反発されるのは分かっていたのか、すぐに理由を話し始める。
「連れて行った方がこちらに引きずりこめる。少なくとも、面会が始まるまでは手を出して来ないだろう。」
周りの目がある為、面会室に入るまでは手出し出来ず、エデルジート団長のスキルのおかげで罠の心配はない。
その判断は正解だろう。表面的に見れば。
「フィリアちゃんに意向を聞いてきます。」
「どう答えようと、結果は変わらないぞ。最悪彼女が傷つくことになる。」
だけど、これから起こる事を話しておかなければ。そして、覚悟を決めなければ彼女が危ないのだ。
「フィリアちゃん、いいですか?」
フィリアちゃんの部屋のドアをノックし、入室許可を求める。
「いいですよ、なんでしょうか?」
「これから起こる事について、フィリアちゃんの意向を尋ねておきたいのです。」
そう切り出すと、顔を強張らせた。何の事についてかはもうわかっているだろう。
「フィリアちゃんは、王になることを望みますか?」
「......ずっと考えてきました。このことが正しいかを。」
そして、真っ直ぐ未来を見つめた目。
「中央も、沢山の人々が苦しんでいると聞きました。ですがそのことは関係ありません。私は、両親の敵を討つ為に王になるという事にして、踏ん切りをつけました。」
フィリアちゃんらしい保身。周りの人が望むから、今の王を追い落とすついでに両親の敵を討つらしい。エデルジート団長からこの子の生い立ちを聞くことで、なんだかエミラッシェが言っていることも正しいように思えてきた。
......目的も、それを達成する為の大義名分も一緒じゃあないですか、団長。
このギルドにいる者だけがが知っている秘密。あの子達は知らないだろうけど、エデルジート団長は、両親の敵を討つ為にこのギルドを作った。
「そうですか。フィリアちゃんなりに納得してくれて良かったです。」
「と、言うことで王を望むそうです。」
「そうか、前向きで安心した。これで心置きなく面会ができる。」
......さて、ハルセンジアさんはちゃんとヴィンデート君を鍛えてるのでしょうか?
「そろそろ昼食だな。では団員を集めてこれからの......」
「あ、ハルセンジアさんとヴィンデート君は森で済ますそうです。」
そうか、と言いながら、エデルジート団長はミレーマーシュに昼食は二人分抜いて来るよう言いに行く。
午後は夕食までいつも通りに過ごし、夕食に今日決まった出来事を話した。
結局、団長と僕とフィリアちゃんとヴィンデート君、そしてハルセンジアさんが行くこととなった。