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スキル・ステータスオープンはステータスを見るだけ  作者: ぐざいになったねこ
第二章 ギルド勤務一年目
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第十一話 [王の道]争奪戦 前準備

「茨の城団に動きを察知された可能性があります。」


そう報告された俺は、さすがにやり過ぎだったかと反省する。

ただ、目的までははっきりしていないだろうと、ミラシュレインを見る。


「流石にそれはないかと......。」

「[王の道]は、私の父上の敵を討つ為の大義名分だ。政治に興味はないが......、アンデルビートだけは、絶対に許すわけにはいかぬ。」


[王の道]さえあれば、反アンデルビート国王派を味方につけ、反乱を起こすことができる。案外近い未来に、俺は覚悟を決めた。

「ただいま戻りました!」


仕事をこなした。シリアスさんのサポートありきだったけれど、ここに戻って来ると安心する。

本館ではねーちゃんが出迎えてくれた。

ただ、顔色が良くない。


「お帰り、ヴィンデート。よく頑張ったね。」

「うん。ねーちゃん、顔色悪いよ。エミラッシェさんの特訓が辛い?」


そう言うとうーん、と唸るが。


「大変だけど......。まずエデルジート団長に報告してきてらっしゃい。」

「......分かった。」



言われた通りに執務室へ向かい、シリアスさんと一緒に今回の依頼の報告をする。


「剣を貰ったのか。よかったな。」

「はい。......ねーちゃんは大丈夫ですか?エミラッシェさんに少し優しくするようにと言ってくれません?」

「......エミラッシェは関係ない。ただ、[王の道]について、かなり厄介な事が起こった。」


なんだろうと思っていたら、明日全員に向けて話す、と言われて退出を命じられた。ふと、ねーちゃんに危険が迫っているのが分かり、シリアスさんに助けを求める。


「エデルジート団長とエミラッシェが守っています。安心してください。」

「......分かりました。」


ひとまず、自分の部屋に戻って布団に入る。

眠れなかったが。



「とりあえず、情報を共有しよう。」


朝食を取り終わった後、お茶会部屋に茨の城団の団員が召集された。

中には知らない人が二人いる。


「ヴィンデートとフィリアは知らないだろう。こちらの青髪で背が高い男はハルセンジア。普段は管理支部で生活している。」


管理支部で生活?そう呟くと、ハルセンジアさんは笑って肯定する。


「そちらの方が暮らしやすいんだ。」

「そしてこちらの飴色の髪のおばさんがミレーマーシュ。寮の管理や食事を作っている。」


はじめまして、と言って彼女はお茶を飲む。


「では、ハルセンジア。説明を。」

「はっ。騎士団が[王の道]について、こちらに探りを入れています。」


騎士団か。確か力関係はあちらの方が上なはず。

少しめまいがした。


「こちらが探りを入れてきた騎士団の者をまとめたものです。誰と何を話したかというところまで記載しております。」


そう言われて、全員分に紙が配られる。

読む時間を与えられ、しばらく無言で文字を追った。

ふと、見覚えのある名前が目に入る。


「アルニエス......ミラシュレイン......。」

「ヴィンデート君?」


しまった、と口を押さえる。

なにか不審に思ったのか、エデルジート団長がグレイの目を細めて。


「何か知っているのか?なるべく話してほしい。」

「......俺のスキルです。」


そう切り出して、俺は相手の名前、年齢、能力値、確認スキルを見れるスキルを獲得している事を話す。物珍しいスキルだ、と好奇の目で見られるが、エデルジート団長だけ浮かない顔をしていた。


「目の前に自慢のスキルの上位互換がいると......、なんか虚しくなるな。」

「すみません。」

「いや、いいんだ。それよりアルニエスとミラシュレインが何かあるのか?」

「はい、俺達を襲った二人組がいたでしょう?」


エデルジート団長は、まあ逃したが、と言いいながら記憶を辿っている。


「あの二人組がアルニエスとミラシュレインです。」

「なんだと!?」


エデルジート団長はガタリと椅子から立ち上がり、前のめりになる。俺とねーちゃん以外の人達も、驚きと失望に声も出せずに座っているだけだ。

当たり前だろう。今まで信頼していたであろう騎士団が、一気に信じられなくなったからだ。


「......失礼。決まりだな。騎士団は[王の道]を欲している。」

「目的はなんでしょうか。アンデルビート国王の憂いを払うことでしょうか。それとも、アンデルビート国王と対立するために捕らえるのでしょうか。」


エミラッシェはそう言って首を傾げる。

それに対してエデルジート団長は難しい顔になって考察する。


「捕らえるのが目的と思う。殺す気なら捕らえた時点で終わらせていただろう。」

「言葉を選んだのに台なしにしないでくださいませ。」


エミラッシェさんはエデルジート団長をむっと睨んだあと、言葉を続ける。その言葉は、この部屋の空気をがらりと変えた。


「ならば、私達は反アンデルビート国王派になるべきでは?」

「エミラッシェ......、それは。」

「上手く行けば、騎士団長からベルグラート領主を味方につけれると思いますが。」


なにがなんでも危険すぎる。

そう反論すると、エミラッシェさんは今がもっと危険だという。


「相手にとって[王の道]を隠しているのはこちらです。そして反アンデルビート国王派かどうかもわからない私達は処分される可能性が高いです。あちらはギルドよりも権力があるのですから、ギルドを解散させるのも容易だと思います。」

「......あちらにとって、[王の道]について隠しているだけなのならば、こちらは反アンデルビート国王派になるのではないか?」


その意見に、エミラッシェはため息をはいて首を振る。


「相手にとっては、こちらが[王の道]について知ってると思っていないかも知れません。ただ、ギルドに入れただけ。相手にとってはこちらがそう思ってるだけなのかも......。」

「いや、ただこの子を襲った二人組は[王の道]について......。」

「そのことだけで[王の道]の情報がこちらに渡っていると考えている、と?大人ならばともかく、子供にぽつりと呟いた一言だけで全ての思惑が悟られるとは、相手にとって堪ったものではないですね。」

「ただ、実際その一言で相手の思惑が分かったのだろう?」


エデルジート団長はみるみる顔色を悪くして反論する。

その言葉自体、自信がないようにも思えてきた。

そんな団長を軽蔑した目で見下し、団長失格レベルですね、と言い放った。


「その一言に関して、ヴィンデートのスキルが発覚したことで裏がとれています。この子達を襲った二人組が騎士団にいることが最たる例です。」


そう言って、エミラッシェさんはエデルジート団長を逃がさないと言わんばかりの目で睨んだ。


「覚悟を決めてください、団長として。今を守って反アンデルビート国王派になるか。未来を守ってアンデルビート国王派になるか。それとも......ここから逃げるか。少なくとも私は、貴方の意見を尊重します。」

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