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スキル・ステータスオープンはステータスを見るだけ  作者: ぐざいになったねこ
第五章 魔王アルニエス
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第百一話 ハルセンジアさんの質問責め

「領主様、これはどういう事でしょうか?」


あの後、茨の城団全員に会議室へ召集がかけられ、ハルセンジアさんはすぐに領主様へと問い詰める。既に席についていた領主様は、「全員が集まるまで少し待たないか。」と、苛立つハルセンジアさんをおさめた。


「と言っても、後はエミラッシェだけですけどね。」


シリアスはそう言いながら呆れた。少し経つとエミラッシェさんもやって来て、何食わぬ顔で席につく。テレヴァンスがぎょっとした顔をするが、時間に遅れたという訳ではないので、領主様はエミラッシェに何も言わずにハルセンジアさんの問いに答えた。


「とりあえず、宣戦布告について聞きたいのか?」

「いいえ。何故秘密裏に領主同士で対面していたのかを、まずは聞きたいです。」


確かに知らない間に他領地の人と会っていたとなると、傍から見れば危なっかしいことこの上ない。領主様は少し目を伏せて、「申し訳ない。」と言った。


「速攻で攻撃をしたかった。フウアンテルラを巻き込まずに。」

「では、サイサンシュレイトを巻き込んだ意図は?」

「位置的にも、ハウッセンで圧をかけていけると思ったからだ。」


それは愚策ではないだろうか。今のサイサンシュレイトは人手不足だというのに、ハウッセンまで手を回せる余裕はないだろう。


「いや、デート・ガルディアの兵を動員する事で決定した。もう、デート・ガルディアの管理支部長にも許可は取ってあるらしい。」

「......そんな用意ができるなら、ずっと計画していたという事でしょうか?」

「エンディストの移動時、密通を貰った。」


なるほど、と一通りの質問をして納得したハルセンジアさんは肩の力を抜く。そこにエミラッシェさんが「まとめてみましょう。」と、言った。


「領主様はエンディストの密通を受け取り、秘密裏に集会をして急に宣戦布告をすることで、王国の隙を突こうという計画に乗ったのですね?」

「ああ、その認識でいい。」

「奇襲するのでも良かったのにわざわざ宣戦布告をした意図は、既に壊滅寸前のフウアンテルラをなるべく巻き込まずに、王国と戦いたかったという認識でいいですか?」

「ああ。」


一息つくと、エミラッシェさんは笑みを深めて領主様を睨む。


「では、何故サイサンシュレイトを巻き込んだのでしょうか。」

「北にあるハウッセンで、王国領に圧をかけれたらと思った。そしてこれからの主戦場はフウアンテルラより奥、つまり王国領の中になるという事になる。数ヶ月注目を集め続ければ出番はなくなるだろう。」

「ハウッセンに引き付けている間に、他が突破できれば、という事ですか?」


俺がそう言うと、領主様はこくりと頷く。けれど、そんなに上手くいくものだろうか。そう不安になっていると、「心配するな。」と、領主様が言う。


「デート・ガルディアは防衛戦が大の得意だ。王国兵は使いこなせなかったハウッセンも、上手く使えるさ。」

「......。」

「他、質問は。」


少しの間、沈黙が場を流れてゆく。何も言わないのを確認した領主様は、にこっと笑って解散を宣言した。あの笑顔の裏に、質問はないと判断したのか、失望されたと判断して強引に切ったのかは不明だ。けれど、今回の件で領主様と茨の城団員の信頼にひびが入ってしまったのは、俺でも分かった。



「いけると思うか?ヴィンデート。」

「......無理だと思います。理屈はその......、言えないんですけど、何となく駄目って分かるんです。」


会議が終わった後、エミラッシェさんが「少し話し合いましょうか。」と言って、ミレーマーシュさんに用意してもらった部屋で、領主様を呼ばずにお茶会を始めた。


「シリアス、時間は大丈夫か。」

「後で無理に作ります。今はこれが最重要ですから。」


ハルセンジアさんは顔をしかめたが、しょうがないと割り切ったらしく、お茶会という名の事後確認会議を取り仕切る。まず、この件に積極的に関与していたと思われるシリアスさんを質問責めするようだ。


「まずは領主の暴走に関与していた者を全員言ってもらえるか。」

「中心にいたのが僕、ツーリュス、グランデア騎士団長、エンディスト、そして護衛騎士の十二名。領主様が不在とだけ知っている者が、サイサンシュレイトを回す重要な部所のトップらと、テレヴァンス、テッツァーレですね。抜けがあったらすみません。彼らには事前に領主様が不在の事を漏らすなと言っており、漏れた形跡もありません。」


ハルセンジアさんは頷き、誰か止める事はしなかったのか、とミレーマーシュさんに運んでもらったお茶を飲みながら聞く。


「僕とツーリュスが止めようとはしました。エンディストに関しては嬉々として持ち込んだ張本人ですし、グランデア騎士団長は王国を倒す事で忠誠を誓えるチャンスだと意気込んでいましたから......。最終的には領主様が決定しました。」

「......今は何も言えんな。」


そう呟くと、ハルセンジアさんは急に話の方向を変えた。


「率直に問うが、レシアボールは関わっているのか?宣戦布告の時にレシアボール関連が言われなかったが。」

「話が持ち上がった時点では関わっていませんでした。相手が知る機会もありませんしね。けれど、こちらが......、その......。」


シリアスさんが口ごもり、少しまずい雰囲気になったと皆が感じた。エミラッシェさんが背筋を改めてすっと伸ばし、ハルセンジアさんは息を大きく吸って覚悟を決める。テレヴァンスは何を言うのかを知っているようで、顔を真っ青にしてシリアスさんをずっと見つめている。


「向こうに、連れて行きましたね......。」


ハルセンジアさんは大きくうなだれ、エミラッシェさんは領主様に向けていた笑みをシリアスさんに向けている。ミレーマーシュさんは聞きたくなかったのか、お茶をいれに行ったようで居ない。テレヴァンスは肩を縮めて申し訳なさそうにしているが、テレヴァンスは悪くないだろう。


「連れて行ったのなら、せめて宣戦布告で名前を出すぐらいな......」

「か、考え自体は分かりますよ。レシアボール様がいるけれど、名前を出したらサイサンシュレイトが一気に攻められてしまうので、一旦現状を共有しとこう、という事ですよね?中途半端な気がしますけど。」

「ああ、ヴィンデート。逆にレシアボールの名前を出したら、サイサンシュレイトに王国兵を引き受けてしまうという事だな。」


すっと血の気が引いた。何かの間違いや、他の領地の身代わりとしてレシアボール様の名前が出されると、一気にサイサンシュレイトの立場が危うくなる。


「正直、領主は冷静さを失っているとしか考えられない。早く、早く王国を倒そうとして、墓穴を掘っているようにしか見えないんだ。」

「それはさぞ大きい穴なんでしょうね。......はぁ、嫌になるわ。」


エミラッシェさんが遠回しに死にたくないと言って、一気に皆の顔が俯いてしまった。俺はふと疑問に思う。何故領主様が冷静さを失っているのかを。


「何故領主様はこのような方向に走ったのでしょうか。領主様が宣戦布告をしなくとも、最悪良かった訳でしょう?」

「......言えん。」


ハルセンジアさんはそう言ってぐっと口を閉じて首を振る。シリアスさんもちらと僕を見るが、気まずそうに目を逸らしてしまった。


「......終わりにしましょう。ハルセンジアさん、聞きたい事は全てですか?」

「......ああ、全てだ。」


聞きたい事はまだ沢山あるだろうに、ハルセンジアさんは会議の終了を持ちかけるエミラッシェさんの案に、助け舟が流れてきたように乗っかった。恐らくは俺のいない所でこっそり聞くのだろう。


「会議は終わりましたか?ヴィンデート、グランデア騎士団長が呼んでいますよ。」


そうミレーマーシュさんに言われ、俺は追い出されるように会議室を出て行った。

急に失踪してしまったようで申し訳ありません。課題をあらかた終わらせたので、連載再開です。

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