↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/41

17 婚約破棄

誤字報告ありがとうございました。



ケイティがアールと付き合う振りをしてから、数日たったある日それは起こった。


「コゼット、君との婚約を破棄する!」


アールの声が食堂に響く。

みんなが驚いて振り返る。そこには、アールがコゼットに向かって怒鳴っていた。

その隣にはケイティが立っている。アールは続けた。


「君は、ケイティを影で苛めていたな。ケイティが度々お前に呼び出されていたのは、ばれているんだぞ。嫉妬に狂って平民のケイティが逆らえないのをいいことに……!」


「アール、あなたには、婚約解消の申し出ををしていたでしょう?ルイス家にも何度も申し出ていたのだけど、全然了承してくれないのにどういうつもり?急にこんな大勢の人の目前で婚約破棄を叫ぶだなんて」


びっくりした様子のコゼットがアールに答えた。

ラファエルも驚いて、コゼットに小声で聞いている。


「キャンベル嬢、アールは人前ではたいした事はしない筈ではなかったのか」


「そう思っていたけど、……まさか、ここまで馬鹿だとは思わなかったわ」


アールの言い分は止まらない。自分勝手な解釈で反論してくる。


「ああ、それはお前が俺に構ってほしくて婚約解消の話をしたんだろう?そうやって解消を持ち出して俺の気を引こうとしていることはわかっているんだ。俺に未練たらたらのくせして」


「何を言っているのよ!あなたなんかに未練なんかあるわけないじゃない。馬鹿馬鹿しい」


コゼットがばっさりと切り捨てた。


「馬鹿と言ったな!俺を馬鹿にするのは許さないぞ。今こそ俺がお前を処罰する!

ケイティ、お前はコゼットに苛められたんだろう?」


ケイティは頭をぶんぶん振って、


「違います!コゼット様から苛められたりなんかしていません」


はっきりと言ったが、


「コゼットが怖いんだな、そんな嘘を言って。大丈夫だ、俺が守ってやる」


アールがケイティの腰を抱き、引き寄せる。


「ふん!コゼット、お前はいつも俺に小言ばかり言って、馬鹿にして可愛いくないんだよ。ケイティは俺の事を褒めてくれるし、その上従順だ。だからコゼット、お前じゃなく可愛いケイティと共にいる方が俺の人生にはいいんだよ。お前が泣いて縋ってもこの気持ちは変わらないからな。よってコゼット、お前との婚約を破棄する」


「わかったわよ。婚約破棄でも何でもするから!ケイティ、もういいからこっちに来て」


「そうだ、ケイティもういいんだ。こっちに来い!」


ラファエルもそう言って、手を差し出している。

ようやくケイティがコゼットの所に歩き出そうとしたが、


「コゼット、どこまでケイティを従わせるんだ。ケイティ、行かなくていいんだぞ」


と、ケイティの腰を抱いている手に力を込めた。

ケイティは身をよじるが、身動きが出来ない。


「ケイティ!今、そいつから放してやるからな」


ラファエルがケイティを助けようと一歩踏み出そうとした時、ケイティの体がアールから無理やり引き剥がされた。驚いたケイティが見上げるとカインに抱きかかえられていた。


「カイン……」


カインは何も言わずにケイティを抱いたままアールを睨み付ける。


「何だ、お前は!ケイティを返せ!」


「汚い手でケイティに触るんじゃない」


カインはとても低い声で言った。その威圧的な声にアールはびくっとしたが


「隣国の奴は関係ないだろう?いつもケイティとローレライ嬢を侍らせていい気になりやがって。そんな二股野郎のことをケイティも嫌がっていだんだ。なあ、ケイティ」


と、ケイティを取り返そうと近づくが、カインはケイティを抱きしめたまま体ごと反対側に回して背中で庇う。そこに


「何の騒ぎだ。アール、こんな食堂の真ん中で何をしている!」


ヘンリーが食堂に入ってきた。

王太子の声が響くと先ほどまでこの騒ぎでざわざわしていた食堂の皆が一瞬で静かになった。

続いてエレオノーラとマーガレットが入ってきた。


「お、王太子殿下!今は執務室でローレライ嬢と会合しているはずでは……?」


アールがヘンリーの登場に明らかに狼狽している。


ヘンリーはカインとエレオノーラとマーガレットと4人、別室で隣国への交換留学について話をしていた。

丁度王太子達がいない隙をつき、アールはケイティにいいところを見せようと食堂で婚約破棄を叫んだのである。


その4人がいる別室に、慌てた顔をしたナタリーがエレオノーラを呼びに来たのだ。アールがコゼットに婚約破棄を言い渡していると。その原因がケイティだと。


カインが部屋を飛び出し、全速力で食堂に来た。

そしてアールに腰を抱かれたケイティを見ると何も考えられなくなり、いきなりケイティを引き離し抱き締めたのである。


それから遅れてヘンリーとエレオノーラ、マーガレットが急ぎ足でやって来た。


ヘンリーの声が更に食堂に響く。


「アール、学園の生徒達の前で何をやっている!こんな騒ぎを起こして、重い処罰を受ける覚悟はできているんだな」


アールはおろおろしてしまっている。


「今から呼び出しがあるまで自宅に謹慎だ。今すぐ帰れ。キャンベル嬢、ケイティ嬢、話を聞くから別室に来るように」


「え?何で、俺だけ?悪いのはコゼットだ!」


「口を謹め!学園警備兵!アールを自宅まで護送しろ!それから、ルイス騎士団長にも伝令を頼む。アールの軟禁と、後から王宮への呼び出しがあるからと」


「はっ!」


アールは学園警備兵に引きずられるように連れて行かれた。

お前達、上司の息子に何やってるんだとか、コゼット助けてくれとか喚きながら。


そんな中、


「ケイティ、大丈夫か?あいつに何をされたんだ?」


カインがケイティの顔をのぞきこみ、聞いている。


「ご、ごめんなさい。カイン、あ、あの離して」


「それは出来ない。ずっと君がアールと一緒にいて、とても苦しい思いをしていたんだ。さっきもアールに腰を抱かれていて、あいつをその場で殴り殺しそうになった」


とても物騒なことを言うカインは、再びケイティをぎゅっと抱き締めた。


「うっ、苦しい…カイン、ほ…ほら、全部終わったから。も…もう離して」


その力はけっこう強くて、息も絶え絶えにケイティが訴える。


そこにヘンリーがカインの肩をバシッと叩き、言った。


「カイン、こんな大勢の目前で、いつまでケイティ嬢を抱き締めているんだ。それに、そんな口説き文句ともとれる口上で、ケイティ嬢が恥ずかしがっているじゃないか。女心のわからん奴め」


王太子殿下だけには絶対に言われたくない!

エレオノーラを初め、食堂の皆が満場一致で思っていたに違いない。


ようやくカインがケイティを離した。そして呼ばれてもいないのに、一緒に別室に入って行こうとしたらヘンリーから閉め出された。エレオノーラはヘンリーからマーガレットと一緒にいるように頼まれてそのまま食堂で待っていた。


これで解決してくれたらいいけど。


この婚約破棄の事件が後々尾を引くことになるなんて、思いたくはなかった。



そして、この婚約破棄の話は瞬く間に学園中等に広まった。


「騎士団長の長男のアール・ルイス様がコゼット・キャン

ベル嬢との婚約を破棄をしたんだってな」


「アールは真実の愛を見つけたと言っているが、その相手は特待生のケイティだ。なんて事だ。特待生がこんな騒ぎを起こしてどうするんだ」


「歴代騎士団長のルイス家は食堂の衆目の前で婚約破棄なんてとんでもない事をしたなと、アールをぼこぼこに処罰したそうだ。何でもキャンベル家から婚約解消の話が来ていたのに、アールが歪曲した事を言い訳して引き延ばしていたらしい。もう、キャンベル嬢のご両親が怒り心頭で、アールの疵瑕で婚約を解消してしまったらしいぞ」


「それで、アールはあんなに顔がぼこぼこなのか。謹慎が解けてから親が罰として、退学迄、学園に行かせて、迷惑を掛けた人達に謝罪させているみたいだけど、よくあんな顔で学園に来れるよな。それにしても馬鹿な野郎だな。あのキャンベル嬢を振るなんて」


「そうだよ。俺、フリーだから、キャンベル嬢に婚約の打診しようと思っているんだ。だって、王太子妃教育を受けた淑女なんだろ?美人だし、苛めだって、捏造だったんだ。早目に行っとかないと、誰かにとられちまう」



その話を少し離れたところで聞いていた令嬢が、コゼットに言った。


「まあ、また、あの噂をしておりますわ。本当に男どもは野暮で、無神経ですわね」


「ええ。コゼット様、本当に今回の事は心痛な出来事でしたわね。お察ししますわ」


ここは、学園のサロンだ。放課後、令嬢達がたむろしている。今はコゼットと、ナタリー、レジーナとその他の令嬢も話を聞きたくて集まっている。


「ありがとう。本当は婚約を解消したかったのは私の方なの」


コゼットが紅茶を優雅に飲みながら、にこりと笑って言った。その完璧な所作は全て王太子妃教育の賜物だ。


「わかりますわ。アール・ルイス様って入学してから変わりましたもの」


「そうですよね。ケイティ様とそうなる前から、色んな女の子とベタベタして、コゼット様がいらっしゃるのに、どういうつもりなのかしらって思っていたんですの」


「それに、成績も落ちてしまって、コゼット様が心配されて、勉強を教えてあげようとすると、とても怒ってしまって、どうすることもできないんでしたわよね」


「皆さま、よくご存知ですのね。そうなんですの。だから、ここだけの話、もう、アール様とはやっていけないと思い、婚約破棄の話は本当に願ったり叶ったりで」


みんな興味津々だ。


「まあ、それでは、ケイティ様は初めから、コゼット様の計画でアール様と付き合う振りをしていたのですね」


「そうなのよ。私が無理矢理頼んだことなの。本当は穏便に婚約解消をしたかったのだけれども、アールの方が中々首を縦に振らなくて。ご自分のせいで婚約解消になるのは嫌だったみたいね。それで私の事を苛めをするような悪女に仕立て上げて、あんな婚約破棄を皆様の前でしたんだわ」


何はともあれ、コゼットとアールの婚約は解消された。

後はケイティの悪評の払拭だ。それで、コゼットは令嬢を集めて、今回の説明をしたのである。


「わかりましたわ。私達が、ケイティ様の悪い噂を全部、払拭して見せますわ。男どものいい様にはなりませんわよ」


令嬢達は任せてと席を立った。


「お願いね」


これで、ケイティの悪い噂も直になくなるだろう。


そう、思っていたのだが……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。