表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

第4話 闇の中でこんにちは 四

コボルトさんがいうには古い記録を見つけたところから話がはじまっているらしい。コボルトのコミュニティにも文字でのコミュニケーションは取られているようだ。いわゆる魔族の共通語(コモン)みたいなものなのかはわからない。呪文をかけないと意思疎通ができないのだから読んでもわからない記録なのだと思う。


その記録によると以前のコボルトはヒトの元を頻繁(ひんぱん)に訪れていたらしい。ヒトの手伝いをしてみたり、いたずらをしてみたりと至ってきまぐれな関係だったようだ。時代を()るにつれてヒトから声をかけられることもなくなり、おどろおどろしい何かの(あつか)いになってくるにいたり交流はほとんどなくなってしまったようだ。ここにいるコボルトたちは好奇心(こうきしん)旺盛(おうせい)なグループのようで、古き良き時代をふたたび楽しみたい。しかし、ヒトについての情報をアップデートする必要があるので、いまどきの人間社会というのを事前に知りたかった……ということだった。


「なるほどなるほど。そうすると、ヒトからみたコボルトという存在をお話した方がいいですね?」

「はい、コボルトのことをヒトは知っているのですか?」と、このグループのまとめ役っぽいコボルトが答えてくる。彼女はわたしを迎えにきてくれたコボルトだ。そう「彼女(かのじょ)」だった。


コボルトには本当にわずかながらも性差(せいさ)があった。小柄(こがら)なこともあってコボルトたちの声は高めで、ちょうど声変(こえが)わり前の子供と一緒くらい。そのためかほとんど男女差を感じられない。しかし、ヒトの二次性徴(にじせいちょう)のようなものがあるようで身体的特徴しんたいてきとくちょうの差は見てとれた。おそらく彼女ひとりだったなら判らなかったけれどグループの中にいる彼女を見てみるとその差を感じることができた。


ひんやりとした地べたに座ってコボルトたちと車座(くるまざ)になって話をはじめるわたし。正直、この状況は異常だと思う。なんだこれ?と思いながらも敵意(てきい)を感じないコボルトたちとの会話を楽しいと思い始めていた。


「そうですね。ひょっとしたらみなさんのことをコボルトだってかもしれません」

「え?」


わたしはいまどきの人たちが思い描くコボルトの姿形について話はじめます。


「コボルトの一番大きな特徴(とくちょう)は犬のような頭というのが定番になりつつあります」


初出(しょしゅつ)ではないものの、ダンジョンズ&ドラゴンズというロールプレイングゲームが流行ったおかげもあって、コボルトと言えば犬のような頭で描かれることが多くなった。身体は(うろこ)に覆われていたり、モフモフの毛皮だったりといろいろだけれども頭は犬が定番だろう。獣人(じゅうじん)っぽいイメージが強くなるにつれて体長も人間サイズに描かれることが多くなってきた。なんなら狼男(おおかみおとこ)みたいなイメージの場合もあるようだ。


「おとぎ話の中では小人という描写のが多かったようです。そのころのコボルトと言ったらいまのみなさんの姿そのままですね」


そうなのだ。コボルトはドイツやデンマークなどが伝承の中心で食べ物と引き換えに家事を手伝ってくれる精霊として言い伝えられていた。また贈り物がなくなるといたずらをして人間の元を去ってしまったようだ。似たような精霊のお話は多い。ブラウニーやノッカー、ノームやドワーフ、ゴブリン。伝承の中のコボルトは決して悪鬼(あっき)の類ではなく対価を提供すれば人間に利益をもたらしてくれる精霊として知られていたようだった。


「犬の頭だって」

「俺たちそんなことになってるの?」

「ケモノ扱いかよ」


コボルトたちが(こぼ)すのも無理はない。


「うん、わたしもびっくりしましたよ。コボルトは人を(おそ)う魔物じゃなくて本当によかった」

「ま、魔物?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ