第一話 農家の男、入隊試験を受ける
この作品を見つけてくださりありがとうございます。
初投稿ですので至らぬ所あると思いますが、
よろしくお願いします。
「こちらが試験会場になります。中に入りましたら、案内人に従って講堂へ向かってください。」
俺、カルロはひょんな事に入隊試験を受けることになってしまった。
☆★☆
「おはよう、カルロ」
「おはよう、本屋のじいさん」
「カルロじゃないか。おはよう」
「おはよ、肉屋の兄貴」
「カルロくん、調子どうだい?」
「元気百パーセントだよ。ありがとう、おばさん」
食材を買いに街に顔を出せば、街人達がいつものように暖かく出迎えてくれる。
俺は一人一人に返事をしながら街の中心部に向かっていく。
「よう、カルロ!」
「ライトか、おはよう」
彼はライト――深緑色の髪の毛を後ろで束ね、猫のような目の形に琥珀のような瞳を持っている男だ。俺とは小さい頃から仲が良く、一緒にヤンチャをしては一緒に怒られていた。
「なんだ、お前も入隊試験受けるのか!」
「入隊試験?なんの事だ?」
「はあ!?国軍の入隊試験だよ!!」
俺が首を傾げてみせるとライトは驚いた。
「お前言ってたじゃん。大きくなったら魔法軍に入りたいって。兵役の時も言ってたじゃんか。」
「あ〜そういえばそうだったな。」
確かに昔は魔法軍に憧れて、戦闘ごっこもしてた。
「そういえばって……他人事みたいに言うなよ。」
「仕方ないだろ。両親が亡くなって俺も居なくなったらユウが一人になる。そんなこと絶対にしたくないんだ。」
俺は十六歳の時に両親を事故で無くした。その時は兵役中だったから、亡くなった事を知ったのは去年の十七歳の時だ。
俺は兵役から帰ってきて酷く申し訳ない気持ちになった。
弟のユウを一人にしてしまったからだ。ユウは喘息を患っていて生まれた時から病弱だった。
近所の人がユウを預かってくれていたらしいが、人見知りのユウにとっては寂しかったことだろう。
俺はその時決めた、ユウを一人にはしないと――
「だからって夢を諦める必要はないだろ」
「いいんだよ。てか、お前こそ入隊試験なんだろ?時間大丈夫なのか?」
「あ、そうだった!」
ライトは足早に試験会場へと向かっていった。
「おい、そこのお兄さん!」
買い物の続きをしようとした時、後ろから誰かに呼ばれた。
俺はなにか落としたのかもしれないと思い、振り向いた。
「なんです――は?」
振り向いた先にいたのは俺にそっくりな男だった。
「頼む!今日一日だけでいいから、俺の代わりをしてくれ!」
男は俺が振り向くなり頭を下げた。
俺は道のど真ん中だったので慌てた。
「頭を上げてください!ここでは目立ちますから、とりあえず端に寄りましょう。」
男を連れて人通りの少ないところに行くと、男が土下座してきた。
「頼む!この通りだ!」
「分かりました!分かりましたから!」
俺は具体的な内容が分からないのに承諾してしまった。
「ありがとう!恩に着る!」
「代わりって、具体的に何をすればいいんですか?」
「俺の代わりに入隊試験を受けてくれるだけでいい」
「入隊試験!!?」
俺は頭を抱えた。そんな時でも男は「頼む」と繰り返していた。
一日だけだしと思って、俺は仕方なく承諾することにした。
「分かりました。引き受けます。」
「助かった、ありがとう!俺の名前はヴィルだ。」
「俺の名前はカルロです。」
「タメ口でいいって!」
「分かった。」
ヴィルは試験について説明をしてくれた。
ヴィルのふりはしなくていいと言われた。理由は聞いたが答えてくれなかった。
試験は三段階構成になっているそうだ。
一段階目の面接では思考判断力やマナー、コミュニケーション能力を見て、二段階目の筆記試験では知識量を見る。最後の三段階目の実技試験で能力や技量を見る。
俺はその三項目すべてで首席を取ればいいらしい。
二年の兵役しか得てなくて、勉強もしてない俺が取れるとも思えないがな。
それでも引き受けたものは仕方ない。俺は試験会場へと向かった。
こうして冒頭に戻る。
「こちらが試験会場になります。中に入りましたら、案内人に従って講堂へ向かってください。」
俺は会場に足を踏み入れた。
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