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二人で下校

それ以上ゴードリ先生からの用はないみたいで職員室から出るとガンヒルドは髪をるくると指に巻きつけていた


「待たせてごめんよ」

「…!」

彼女の顔が素早くゾーイックの方を向く


「大丈夫だ…さぁ行こう」


ガンヒルドはなんてことないと言う感じで廊下を進み始める


「おう」


先に歩くガンヒルドの後をついていく

あれ?これは一緒に下校する感じなの?え?


廊下から外へ出るまでに数十秒の沈黙が流れる中、彼女は口を開く


「…ケンイチの家はどのへんなんだ?」


「そ、そんなに遠くはないね。あの辺だよ、あの辺」


ゾーイック(自分)の住んでいる家のある方向を指す


「ここからじゃ見えないんだけどまぁあの辺ね。…えっと君は?」


「私はあそこの学生寮を借りている」


「そうか〜一人暮らしなんだ……」


話が途切れる、アニメで好きだった自分としても緊張はするもののガンヒルドともっと話していたいのだけど続け難い



「僕はか、母さんと一緒だからなぁ。すごいや」


「そんな大それたことじゃないさ、いつか誰もがする。それに寮に住む学生は少なからずいる」


ゾーイックとして生きる前も一人暮らしなんてしてなかったし……まぁ新人冒険者として一ヶ月程そうしていたから大変さはとてもわかる……わかる


でも学生として一人暮らしするのはどんな感じなんだろう

お隣さんも学生だし楽しいかもしれない


「親が家事とかで代わりにしてくれたことが初めてわかるからね…あれ?なんだありゃ?」



視線の先数十メートルのところで人の集まりがあった


『ん、「人進連」じゃないのか?真ん中の男と左端の女は前に見たことがある』


ガンヒルドが触れるくらい近づき小声で答える

そこであまり平気で口に出してはいけない感じの集まりということがわかる


「それって何、じんしんれんだっけ?」


「人と社会の進歩を目指しているらしい。それくらいしか私にはわからないな、ともかく昔から技術やインフラの向上に貢献している団体として有名だ」


それだけ聞くと慈善団体や秘密結社に類する組織みたいで見た目もあの集まった人は街のそこらを歩いていても気にしないくらい普通だ


冒険者志望だった時には一人で必死こいていたから目指すもの以外見えてなくて知らなかった

けどなんだか引き寄せられる感じがするけど僕だけなのかな?


特にガンヒルドが言っていた女性に


こちらに気づいたのかどうかその人と目線があった


「わかるか?……あの女がいるところはなぜか不思議な感覚になる。普通の人にはないものがあるかもしれない」


「偶然じゃないの?まぁ有名な組織、こういうのは裏があるのが鉄板」


「ふふっ、そうだな」



やがて『人進連』らしき人たちから遠ざかるところで学生寮と自宅の別れる道につく

西洋の市街地にありそうな古い見た目ではあるものの塗装がきれいに仕上がっている外観の建物だった


「寮ついたからこの辺で私は失礼する、また明日。今日のことがあるから気をつけて」


「うん。なんか…今日はありがとう。じゃあね!」


手を振り僕は住んでいる家に再び歩き出す

ガンヒルドもちょっと手を振り返してくれたからうれしいな

結構きつい一日になったけど今日はよく眠れそうだ






ゾーイック(健一)と別れ学生寮の中にガンヒルドは入る


郵便受けの中を見て何もないことを確認しすぐに目につく階段を登ると二階の通路を進む

そしてドアの前に着く


そこであることに気づく


(手紙か?)


ドアについている郵便受けになぜか小さな封筒が挟まっていたのだった

一階にちゃんと郵便受けがあるのにもかかわらずだ


(殊勝…なのか、これは…)


なんでこんなことを、と思いながら宛先が書いてあるだろう封筒を裏返すとこう書いてあった


人類進歩革新連盟、と。人進連のことである


「!?」


彼女は困惑と不安の中、急いで自分の部屋に入り封筒から紙を取り出すと恐る恐る中を開く


そして手紙を読み進めてそれが来た目的を理解する


(スカウトだな)


端的にそう言い表せるものだった


(すぐ返事を書かないのは気が引けるものの…今早急に一人で考えるはよしたほうがいいか)


そして彼女にとってもう一つ、二つ不安要素がある


(なぜこの寮にいることがわかる?それ以前になぜ私を知っているのだ?)


高い成績を残しているが学生でしかない人間をどうやって見つけなぜ見出したのかを考えると不安が生まれる


ガンヒルドはひとまずこのことで返答をすることは放置するのだった

(送り主の名前……ウェルリーン・グスタフス……女か?)

現在の人進連の社会的信用が高いことがそう考えた理由の一つ上がる


組織自体は技術の向上や近代化を緩やかに、しかしよりよく進めていくことに貢献してるので一般に関わりづらいが信用はされている

それが世間から見た印象だ


彼女もまたそう考えてる中の一人だった



突然ドアから呼び鈴の音が鳴る

手紙のこともあり恐る恐る玄関まで進みドアスコープから外をゆっくり覗く……


『せ、せんぱーい、留守ですか〜?』


来たのは内気そうな少女だった


訪ねてきたのがその少女だったことでガンヒルドは迷いなく何事もないそぶりでドアを開ける


「あ、こんにちは先輩……」


「どうした、また何かわからないことでもあった…あ…そうだったな」


何かを思い出したようでドアを開けて訪ねてきた少女、アイラを迎え入れる


「は、はいお邪魔します。えぇと…大丈夫ですか?」


「ちょっといろいろあったんだ、あぁ大丈夫さ」


心配する様子からどうやら先程のことで迷いのようなものが見えていたかもしれないとガンヒルドは考え、心配させない為に少し誤魔化しをした


「先に爺の夕食を作るから待っててほしい。20分くらいでできると思う」


「じー?……あっ、わ、私も手伝います!」




ガンヒルドとアイラはキッチンへ行く


「さてと、今日はスパゲッティにするか」


「麺料理ですか」


ガンヒルドは近くの棚を開けて鍋や乾燥させてあるパスタの麺を取り出すと鍋に水を入れ火をつける


ついでにアイラが換気扇のヒモを引き換気扇を回す


「先輩、『じー』とはなんのことです?」


「ん?…そうだな。爺はアイラが行きたいと言っていた修理工にいる私の叔父のことだ」


「え、そうなんですか!」


「爺が若い頃にリュッセル重工で働いていたらしいからアレの点検や部品があったら修理ができるとのことだ」


心なしかアイラの目が興味で輝いているようだった


「だが最近は新型の修理が増えてその修理に必要な情報が少なく難しいから忙しいのどうのと言ってたな」


「でも修理なんてどこでもやっているわけではないみたいですし……お湯沸きましたね」


「あぁ、塩を加えて麺を入れるか」



ガンヒルドは鍋に入れたスパゲッティの麺をある程度茹でるとその後にキッチンの上の棚を開ける

中にはびっしりと缶詰が詰まっていた


「なっ…なんですかこれ!?」


十個や二十個ではないその数にアイラが驚く


「イワシの塩漬けを油の中で保存してある缶詰だ。爺も私も好きだから多めに買ってしまうんだ」


沢山ある中から一つ取り出し鍋の近くに置き麺を茹でることを再開する


「これをどうするのですか?」


「もうちょっとしたらフライパンで麺にあえるのさ」


ガンヒルドは隣のコンロにフライパンを置き温めだす



先に数分ほど経過した麺が完全に柔らかくなる前に湯から上げてその前に用意していた油をひいているフライパンにのせた


「ここで使うんだ」


先にフライパンに鍋の湯を少し入れる


そして缶詰を開けて中の油をかけて中の魚を投入する

するとフライパンから香ばしい香りが登ってきた


「ちょっと強めの匂い…でも、とってもいい匂いです!」


「本当はもっと香料とかを入れたいが切らしていてた……失敗ではないぞ」


最後に魚の身を崩し全体にまんべんなく形が残る程度に散りばめ火を止めた



「あとは作り置きした煮物があったな……さて、できたはいいが麺が伸びる、すまないが急ぐ」


ガンヒルドは冷蔵庫から取出した煮物の入ったタッパーと、それと別の棚から取り出したタッパーにスパゲッティをつっこみ胡椒を振ってフタをしてそれを一緒の袋に入れる


「ごめん、少々楽をしたくて早足になってしまった!」

「大丈夫ですよ、私も手伝うこともできなかったですし……」


その袋をバッグに入れると二人は足早に学生寮から飛び出し修理工に向かうのだった



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