もうやるしかねぇ
アニメ『アリアントクライシス外伝 ガンヒルド』に登場するクズであるゾーイックとして目覚めてから始めて直接ガンヒルドを見ることになった
彼女も俺と同じで遅れて入る生徒だった
近くにいると言葉にし難い、覇気のようなものが感覚で伝わってくる
これが才を持つ者とでも言うのだろうか?
不思議な感じはしたが何よりすごく綺麗だと思った
ガンヒルドに会えることをへの期待と軍人育成のコースへの不安が混ざった自分の緊張感は解けた
緩みきった
鼻の下が伸びるとはこのことだ
しかし当の本人、ガンヒルドは「自分以外の生徒がいた」程度でこっちを向くとすぐに正面を向き返すだけだった
その時間約一秒、見事に他人の関係だ
「お〜来てるな」
野太い声に振り向く
「「おはようございます」」
喋っていたのは身長が190センチ位ある大柄の男で彼は軍人育成コースの担当教師だ
「おうおはよう、私はゴードリ。君達の希望したコースの顧問を担当する。一応名前を確認しておく。返事もよろしく…ガンヒルド・クルバフ」
「はい」
「ゾーイック・フェミニテーション」
「はい!」
「んじゃついてきて」
大男ゴードリの後をついていきとある建物の下で足を止める
「ここが日頃使っている訓練所になる。はっきり言って訓練はなかなかに辛い。くれぐれも音を上げないでくれよ」
ゴードリはそう言い建物の中に入って行く
「おうお前ら!全員揃ってんな」
「「「はい!!」」
人数はどうやらそこまで多くはなく二十人くらいだった
彼らは実戦用の軍服らしき服を着て待っていた
「よしじゃあ新顔の紹介を始める。右からよろしく」
俺もいい感じにピリピリしている雰囲気に気合が入る
「はい!ゾーイック・フェミテーションです!自分は!現在貧弱です!ですがそれでもこの一年で変えられる限界まで変える所存です!よろしくお願いします!それと自分のことは!名前と関係ないですがケンイチと呼んでくれたら幸いです!!」
理由はゾーイックと呼ばれても反応できないことが過去にあったからだ
自己紹介が終わるとパチパチと拍手がなる
そして空気が変わる
「はじめまして、私はガンヒルド・クルバフ。共に同じ道を歩む者として仲良くしてくれると嬉しく思う。これから一年よろしく頼む」
すご〜い、敬語とか無しで喋ったよガンヒルド
しかもちゃんと聞いていられるときた
人の声の力とカリスマ性というものの一端を俺は確かに見た
この人についていきたいとそう思えた
他の生徒も拍手が逆に起こらないほど、無が数秒続いた
「…よ、うし、じゃあ早速もう訓練に移る。訓練着は貸し出しになってるからゾーイックはあっちを、ガンヒルドはこっちの部屋を使うように」
ゴードリが指を指して部屋の場所を指示する
男子部屋と女子部屋だろう
さてみんなが着ていた軍服らしき訓練着を着てみた
訓練着はなかなか利便性のあるものでポケットがすごく便利そうだった
ただし服の重さを除けば…だ
迷彩に近いカラーリングで生地が固く厚い
これは実戦に使うレベルなんじゃないか!徹底している
「よしではこれから軍人養成訓練を始める!お前ら、始めにアレを使ってする訓練を見せてやれ!」
アレとは天井にぶら下がった三本のロープだった
「「「おう!!」」」
訓練生がロープに集まり初めに3人が凄まじい速さで登っていく
ロープは5〜6メートルくらいあったが数秒で天井にタッチして滑りながら降りていく
最後に順番が周って来た人も天井にタッチして降りていく
それまでに全員で1分かからなかった
手を降りるときにロープで擦らないよう手袋をしているので力もスタミナもかなりいる筈だ
「ここで見せたロープ登りはぶっちゃけ言うとできる奴なら身体能力にモノ言わせて跳べばいい…それでもしている理由は何だ!言ってみろナクトス!!」
「はい!!いざという時にあらゆる手を尽くす為の土台になるからです!!」
「そうだ!生き残る為には手段の数は大事だ!これはその手段を形にできるようにやっているのだ!」
指された訓練生の言葉に反応してそう言った
「よし、ゾーイック、ガンヒルド!君達にも挑戦してもらう!」
「「はい!」」
しまった、どうしよう…
俺は今ロープ上りできるのか?
中島健一本人としてならかなり辛いが命懸けでならできたと思うがゾーイックの体である今はできるだろうか?
二人でロープの前に行き、先に着いたガンヒルドがロープに手を伸ばす
「…!」
顔色変えずにロープを上っていきさっき上った人達と同じくらいの速さで天井に手を触れ滑りながら降りてきた
あぁ、すごくかっこよかった
周りもすげぇなアイツ、みたいな感じになっている
俺もさっさとしないとな…よし!
「いきます!!」
ロープを掴み床から足が離れる
…え?鈍いだと?
ゾーイックは10代後半で背は測ったことはないがや高め体格は描写では普通だったはずだ
中島健一は身長150後半で体格が小さいから過去に辛うじてできてた
以前は小さい体格で虫が糸を登る要領で今に比べてほんの少し楽に登れたが背が俺より高いゾーイックなった今は筋力で登るしかない
…半分まで来た
だがそこで手袋をしていて力が入りづらいことを改めて意識する
手も疲労し握る力が鈍く、弱くなってきた…でもあと少しだ!!
「うぅぅぅぁぁあ!!」
あと腕一本分!次で届く!!
手を天井に伸ばし
「あ!?」
ずり下がった!?
とっさに両手でロープを握りしめると落下がなんとか止まる
腕痛ッ!?
…片手になっていて片腕に力が入ってなかったか。危ない危ない…
でもあと少し!ガンヒルドも見ているんだ!
次は…やる!!
「うらぁ!!」
届いた!後はさっきのミスと同じ要領で降りるだけ!
地に足が着き疲労でそのまま尻をつく
「遅く…なりました…」
ガンヒルドは7秒程で登っていたけど俺は何秒かかったのだろう
手がもうジンジンとする感覚しかない
降りるのは楽しかったけど
降りてくると自己紹介の時のような拍手がパチパチとなる
「その、なんだ…根性だけで登りきったな」
「はぁ、はぁ…はい…これから精進します」
さて…ガンヒルドの反応も見ておきたいな
横を振り向くと彼女はただこっち見てるだけ、リアクションは無だった
手厳しいな…なんでゾーイックはなんでガンヒルドと付き合えたんだよ?
その他の地獄の訓練も昼過ぎまで続くことになりズタボロで昼食の時間を迎える
訓練着から学生服に着替えて移動する
「うし、昼休みだが飯食いながら歓迎会するぞ新入り二人はもう済ませてるからお前らも名前くらいは覚えてもらえ」
別室に移動してゴードリがみんなの前に立って言う
「誰かに指図するなら自分も、と言われるから私からだ。ゴードリ・サイケンデル、39歳、趣味はトレーニングと絵を鑑賞することだ。はい次、左からだ」
一番左前には女子生徒が座っていた
茶髪ショートヘアーでなんかぶりっ子っぽいな感じがする
「はい!リーセル・ゼッツーです。17才、好きなことは激しい音楽を聞くことです!」
終わると拍手がなる
ぶりっ子どころか猫かぶりなんてなかった
なんか清々しい
「年はお前達だと17か18だから別に言わなくていいと思うぞ」
同じ学年だから確かにどっちかだもんな
「右にいこう」
ゴードリは右の生徒を指す
そしてどんどんと進んでいきみんなの名前はあらかた覚えたと思う
最後に思ったことはみんなの弁当の量がすごく多かった