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Lost Dolls  作者: ふれい*冬山 憂
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始まりの祠

長い長い安らぎの中ぼんやりと意識になっていく。

親や大切な物、暮らしてきた町、住んでいた家や親友、数々の思い出が走馬灯のように頭で去来している。


全ての出来事がつい最近のように感じられ、夢の如く薄れて意識がゆっくりと浮上する。


「ここは...いったい...」


少しでも人の気配があってくれればと思いながら重すぎる体を起こし周りを見回す。


異常なほどの体の震えと気だるさ、そのせいか思考も普段より鈍く、新しい記憶として目の前に広がる景色が頭に入ってこない。


深呼吸をして徐々に状況がわかってきたが何故ここにいるのか、ここはどこなのかという理解が追いつかない。


そこそこ広い洞窟の中で光源らしきものはないらしい。微かな水の流れる音と少し湿っている遺跡のような場所。そしてその中心にいる自分。


体調も最悪、状況も最悪、そんな状態にもかかわらず、体の震えが落ち着きを取り戻し理解などを置いて体が進んでいく。


体が勝手に動くとはこのことなんだと実感していると洞窟の出口らしき場所まで来ていることに気がついた。

階段を登り、顔を上げると夜空が少しずつ見え始めてきた。


後ろを振り返って、何故ここにいたのか、ここはどこなのか、そしていつなのか、そんな事を考え前を向いた時、洞窟から外へ出る瞬間だった。


土やカビのような匂いから草原の匂いに変わり、外の世界へと足を踏み入れもう一度深呼吸をした。

やはりさっきの遺跡同様、目の前に広がる草原も知っている景色ではなく元の世界の面影が無い。

かなりの大きさであろう草原が広がり、ちらほらと民家などが壊れて遺跡のようになっているのが永遠と広がり続けている。


「元の世界だとしたらきっと大昔、それか第四次世界大戦後だろうな。」


そんな考えが出るほどには思考も落ち着いてきたらしい。


時間は夕方、それももう少しで日が落ちるだろうか、そんな黄昏時で、洞窟とは違い少しの暖かさが感じられた。

空気は綺麗とは言えず、少し土煙や埃のようなものが混じった風が優しく吹いている。


少し歩き、壊れた廃墟の一角の民家に触れ辺りを見渡す。

目の前の民家とさっきの遺跡の崩壊具合がかなり近く、そしてやはり何か大きなものに壊されたような乱暴な傷跡が多く重なっている。

災害のような雰囲気はなく、あくまでも人為的、もしくは爆発に巻き込まれたに近い壊され具合。

こういった廃墟に来たことがあるわけでも詳しいわけでもない、だからその壊れ具合で、劣化具合でどれくらい時間が経過しているか分かる、なんて特技はない、けど、新しい。

さっきの遺跡の壁などと比べるとこの石材に苔や植物のようなものは見えず、木材に関しては殆ど劣化を感じられない。


ここは危険だと体が信号を出している気がして急ぎ足で歩き始めた。

この埃風がこの場所を壊す時に生じたものならば壊されたのはほんの少し前ではないか?。

離れろ、ただ歩き続けろ、そう体に言い聞かせるようにひたすらに何処かに向かう。

向かう当ては無い、どこに行くのかもわからない、ただ確実に、また何かに向かっている。


ーー4つの光だけが彼を見送って。

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