表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢から覚めたら  作者: もどきぬん
3/11

みはるの革命





みはるはゆっくりと目を覚ました。

学校の教室で、意識を失う直前と同じ体勢で寝ていたようだ。



「夢…」



(すごい、現実みたいだった…楽しかった…)


クラスメイトと、カラオケに行って、楽しむ夢…。


みはるの興奮は冷めやらなかった。

本当にリアルな夢で、夢と現実があまり区別がつかないため、もしかしたら、今もまだ夢なのかと思い、みはるは鏡をみた。


そこには、メガネで、おさげの、いつも通りのみはるがいた。


「ここは、夢じゃないようね」


みはるはがっかりしたような、そしてどこか安心したような顔でため息をつく。


そしてふと、自分の腕についた時計を見て、血の気が引くのを感じた。



「嘘!7時半?!」



とうに下校時刻を過ぎており、それどころか閉門まであと30分間という時間になっていたのだ。窓の外に目をやると空はすでに真っ暗で、月の明かりだけがあたりを照らしている。



教室は電気がつけられていたが、もちろん人っ子ひとりいなかった。






みはるは急いで席を立ち、机の上に開きっぱなしにしていた妄想ノートと、水筒をしまう。



そして電気を消し、教室を後にした。


廊下は真っ暗で、非常灯のほのかな赤さと、非常口の緑の明かりが辛うじてついてるだけだった。


一階につくと、未だ明かりのついている職員室が見えた。

見つからないように職員室を覗くと、自分のクラスの体育を担当している小磯先生がファイルを開いて仕事をしている姿が見えた。



(先生だ…)



みはるは、自分の胸が高鳴るのを感じる。



小磯先生は、みはるが一年生だった時の担任だ。

地味で存在感のないみはるに、いつも声をかけ、気にかけてくれていた。


昼休みに一人でいれば話し相手になってくれ、また、みはるが進路について悩んでいた時も、相談に乗ってくれた先生だったのだ。


みはるは、1年前のある出来事を思い出す。


あの日。確か秋頃。あの時私は英語の先生に頼まれたクラスの人数分の教科書を運んでいた。


「重…」


教科書はみはるの肩の上あたりの位置まで積み重ねられており、女子一人で運べるほどのものではなかった。


周りの人は見て見ぬ振りで、クラスメイトでさえみはるを手伝うものはいなかった。


しかし



「貸して」



その一言と共に、みはるの目の前にあった教科書の束が手元を離れる。



「え?」



みはるの目線のさきには、小磯先生がいた。



「女の子一人じゃこれはきついでしょー、これ、英語準備室まで運べばいいんだよね?」



みはるは、驚いた。



「えっ、でもそれ、生徒がやる仕事です…」



「いいのいいの、俺に運ばせてよ。」




「先生…」



この時みはるには、先生が、まるでドラマか、少女漫画のヒーローのように見えた。


これ以降、みはるは先生を見るとなんだか、胸が苦しくようになった。


ついこないだまでこの気持ちの正体がわからなかったのだが、

最近これは恋なのだ、と、気づいてしまった。


(この私が、恋…)



これはみはるの中ではちょっとした革命みたいなものだった。


彼を見ると、1日の疲れなんて吹っ飛んでしまうほどだった。


でも、相手は先生。

生徒との恋なんて、そんなものはだめだ。道徳的に間違えている。



だから、みはるはこうして先生を見つめるだけで満足なのだ。




「あれ、新谷じゃないか」



ふいに背後から声がかけられた。

急に現実に引き戻される。



振り返ると、小磯先生がいた。



隠れて職員室の前を通り過ぎたつもりだったが、小磯先生に見つかってしまったらしい。



「もうとっくに下校時刻すぎてるぞ。どうしたんだ?忘れ物か?」



みはるは慌てて、小さな声で勉強してたんです、と言う。

ずっと教室で寝ていただけなのだが。




「そうか。集中して勉強することはいいことだが、下校時刻には帰ろうな。」



小さくすいません、と謝るみはるを見て小磯先生は笑う。



「とはいえ、この時間まで勉強していたのは感心だ。お疲れ様。先生は、お前みたいな真面目なやつが生徒で嬉しいよ」


みはるは照れた。

先生は、言葉の端々で嬉しくなるようなことを言ってくれる。


そしてそのまま、先生は学校の門までついてきてくれた。仕事の途中のはずなのに。


みはるは先生の気遣いが嬉しかった。


先生は門につくまでいろいろみはるに質問した。


今学校は楽しいか、とか家族とはうまくやってるのか、とかどれもみはるを心配するようなものだった。



内気なみはるはそれに対してうまく言葉を返せなくて、もどかしさを覚える。



もっとうまく、返事ができればな。



「じゃあ、気をつけてね。」




小磯先生は、みはるの姿が見えなくなるまで、ずっと後ろを見守ってくれていた。



せんせいは、優しい。



みはると先生が生徒と先生、という関係だから小磯先生は気にかけていただけに過ぎないのかもしれないが、恋は盲目。みはるには先生の優しさが特別なものだと、感じでしまっていた。




(小磯先生…優しいし、かっこいいなぁ…。先生と、付き合えたら…)


みはるは帰り道、先生と付き合えるビジョンを妄想した。




家に帰り、自室に戻ると、みはるはすぐにバックの中から妄想ノートを取り出し、先生とのデートをかいた。



この妄想が、現実になればいいのに。



「あ」



みはるは、思い出した。

妄想は、夢の中で、現実になるじゃないか。



みはるは自室の勉強机の下にある段ボールをひきずりだす。



そこには、今日開封したばかりのドリーミングあった。



「そうだ、今のわたしにはドリーミングがあるんだ。これを飲んで、先生とつきあえた

ら…」



みはるは段ボールの中から、一本のドリーミングをとりだした。



そしてそれを、ゆっくりと飲み干す。



みはるを頭痛が襲う。


だが、後に幸せな夢を見られると思うと、この頭痛が気にならなくなるほどみはるは嬉しくてしょうがなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ