現か夢か
「皆さんこんばんは!テレビ通販、マリオネットの時間でございます。」
深夜3時。
とある通販番組が画面に映し出されていた。
画面にはピンクスーツを身にまとったキツネ顔のセールスマンと、長い髪をくるくると巻き、セーラー服を可愛く着こなしている女の子が笑顔で正面を向いている。
スタジオは一般的なセール番組の形態であり、机の上には商品である飲料が並べられていた。
「本日紹介するのは、ドリーミングという、名前の通り夢のような飲料水でございます。この商品は、寝る前に、一度口に含むとあら不思議!自分の思い描いた理想の世界の夢を見られるのです!気になるあの子と付き合いたい、とか、もしも受験に受かってたら、など、あなたの願いがそっくりそのまま、夢の中で実際に体験することが可能です!ここで、体験者の声をお聞きしましょう。神奈川県川崎市にお住まいの新谷みはるさん。みはるさん、商品の使い心地はどうでしたか?」
隣にいた女子高生が大げさな笑顔を作りながら口を開く。
「もう、ドリーミング、最高です!というのも私、生まれて17年、いやなことばっかりだったんですよ。先生と付き合ってたんですけど、ばれて大変なことになっちゃったし、そのせいで友達にもいじめられるし。だから、もう、地味でもダサくてもともだちがいなくてもいい、もはや夢でもいい!平和に生きたい!って思って、この薬を飲んだんですね、するとあら不思議!理想の平凡で地味で落ち着いたスクールライフを夢の中で体験することができたんです!もう、感謝感激です!」
女の隣で目を瞑りながら相槌をうっていたセールスマンは、再び爽やかな笑顔をつくる。
「さぁ、皆様もどうですか?ドリーミング、試してみませんか?
今ならお試しセットがなんと、3900円!
…え?ワンセット買いたい?
ありがとうございます!!!
使用容量をお確かめの上、ご使用ください。」
セールスマンは、笑って言う。
「それでは、良い夢を。」
演劇部の台本用に書いたのですが、日の目を浴びることなく携帯のメモ帳に置き忘れていたので投稿しました。




