第壱話
ガタガタガタ
なんだろう、これ。
馬もいないのに走ってる。
「しっかし、こんななんもない村に何の用かねぇ。それもこんなべっぴんさんが・・・。」
べっぴんさん・・・。
なんかちょっと照れる。
「自分でもどうしてここにいるかわかんなくて・・・。」
「そうか・・・。」
しばらくの沈黙。
何も景色が変わらない。
口を開いたのはおじいさんの方だった。
「そういえば名前、なんていうんだい?」
「えっと、タルナソコ イオっていいます。」
ガタガタガタ
「え、なんだって?」
「タルナソコ イオです!」
「そうか、わしは四島 譲二 ジョージとでもよんでくれ。」
「ジョージさんですね。」
「ああ、それよりも着いたぞ。降りろ。」
ようやく人気のあるところについた。
といっても遠くに子供が遊んでいるのが見えるだけだけど・・・。
ガラガラガラガラ
戸を開ける音。
「村長、居るか?」
イオも後ろに続く。
「なんだ、ジョージか。久しいな。」
「バカ言え、つい昨日会ったばかりだろ。」
消えてしまいそうな細い声と、馬のいない馬車の中で聴き慣れてしまった声。
「それで、そちらのお嬢さんは?どうもこの村の娘ではなさそうだが。」
「ああ、田中イオって言うらしいがどうもよくわかんなくてな。ほら、お前から事情言ってやれよ。」
いきなり振られた。
「えっと、実は姉の研究室に入ったところからよく分からなくて・・・。」
「記憶がない、ということか?」
「うむ、わしもよくあることでの。思い出すまではゆっくりしていくといい。」
「村長の場合は酒の飲みすぎだろ。自分の歳ってもんを考えろよ。それよりイオ、俺のところでは流石に泊まらせることは出来ないかもしれない。」
「確か、この前都会から来た夫婦が引っ越しただろう。ガスや電気は止まっているかもしれんが他の家に邪魔するくらいなら良かろう。」
「そうか、じゃ、村長それで行くぞ。イオ、案内する。」
「はい!」
こうしてこの村での生活が始まる。
イオは果たしてどうなるのか。