紬のねがい
世界終末時計と呼ばれるものが、残り15秒になった頃だった。
永久凍土が溶けだしている。
南極大陸が崩れてきている。
山火事が多発している。
熱中症患者が爆発している。
あげく、どこかの国の火山まで噴火したらしい。
いわゆる異常気象、崩壊の予兆とも囁かれている。
何かがおかしいと皆が気づいた。
だが、もう遅かった。
そして、
紬の母が倒れた。緊急搬送された。命に別状は無いらしいが、意識は戻らなかった。
皆、一様に紬に同情した。
当の紬は、と言えば、普通にしている。 普通、平静、を装って過ごしている。それは目に見てわかるほどにぎこちなく、見るたび心が痛々しくなった。
それでも、それを言及するのは野暮だろうと、皆陰からの支えに徹した。
(なぜ、紬が。紬だけが。)
思えば思うほど、どうしようもなく自分を責めてしまう。
(俺じゃ、ダメなのか?なんで紬ばっか…)
後悔にも似た波が押し寄せる。
もちろん、助けたい。支えたい。
代われるのなら代わってあげたい。
だが、そんなことはできない。
しかし、それなら何をすれば、どうすれば再び紬を笑顔に出来るのか。それがわかるほどオトナじゃない。
だけど、俺にしかできない。それだけは確実に言える。
なぜなら、それは、
「…廉くん…?…大丈夫?」
「ああ、九十九さん。どうしたの?」
「…紬のこと」
彼女は周囲を警戒しながら話した。
紬に元気がないこと。
紬を励ましたいこと。
しかし、自分達では力及ばないこと。
だから、紬の彼氏である自分に頼みたいこと。
そのためのサポートは惜しまない、と。
「やれるだけやってみるよ。」
そう応えたものの、正直無謀だった。
親が倒れた心細さ。不安、心配、彼女の辛さをわかってあげられない。
でも、
寄り添ってやるくらいはできるはずだ。
教室に戻り、紬を見つけ、声をかける。
「紬、一緒に帰ろう。」
どーも、イルミネです
とんでもなく重い話になってしまいました。




