願いは自分の手で。
「お待たせ、廉!待った?」
「ううん、ついさっき来たとこ。」
駆け寄った私の全身を、上から下に一瞥した廉が一言。
「いいね!可愛い!」
「あ、ありがと。照れる。」
「はは、じゃ行こっか。手繋ぐ?」
「つな…ぐ。」
差し出された手をぎゅっと握り返す。廉の温度が手を通して私に伝わってくる。温度だけじゃない。緊張から来る震え、ドキドキする心拍数、二人の距離。全ての感覚が意識の外に追い出され、この世界から二人以外は消えてしまったかのような不思議な気分だ。
「紬?大丈夫?顔、赤い、よ?」
「あ…うん、大丈夫。恥ずかしいから見ないで…」
「かわいい」
▼▽▼▽▼
「ふぅ。廉、何お願いしたの?」
「んー。なんだろね。秘密?」
「いや、聞いたのはこっちなんだが。」
「ははは、秘密秘密。紬は?」
「う~ん、私も秘密で~。」
除夜の鐘の音が止む。神社はもちろんのこと、その周辺の町も静寂に包まれる。
「年、明けたね。明けましておめでとう。」
「明けましておめでとう。今年もよろしく。」
「よろしく。」
そこからは、何を話しただろう。何か、他愛もない話も学校や課題、進路のことも、とにかく色んな話をしたのだろう。しかし、気がつけば家に居た。こたつで寝ていたらしい。…おい、待て。夢オチとかはやめてほしいのよ。
「お母さん、私昨日どうやって帰ってきた?」
「どうって。普通に帰ってきたわよ?廉くんが送ってきてくれて。」
「…全然、覚えてない…。」
そこまで言ったところで、突然電気が消えた。つい先日の大停電を筆頭に、現在世界各地で停電が頻繁している。回数ごとに停電時間は短くなっているのだが、いつまでたっても慣れるものではない。
「また~?お正月くらい勘弁してほしいわ~。」
お母さんがぼやく。ほんの数分で電気は復旧したものの、また来るのではないか、気が気でない。
▼▽▼▽▼
「はい、明けましておめでとうございます。今年もついに学校が始まったわけだが。。停電、多かったな。もし学校で起きても慌てないようにな?」
担任の不吉なフラグとともに新年の学校が始まる。正直なところ不安だが、不安がったところで私にはどうもできないので、諦めることにする。
この時はまだ危険性をわかっていなかったのだ。
どもども、イルミネです。
明けましておめでとうございます(4月)
作中では新年明けました。
最後の文で、1月10日くらいです。