2 学園…?
冬期講習なんて…
「学園…?」
『そう、学園。来年、異能者を鍛る、異世界ならではの学園が創立される。何のために、というのは秘密だ。表向きは世界平和ってところかな?まあとにかく、そこで君に学園生活を送ってほしいんだ。』
「でも、なんで僕がその学園に…?普通に鍛えるだけでもいいんじゃ…」
『あー…一応言っとくと、君にあげた異能は【災厄】の二つ名で呼ばれることになる。君以外にも何人かそのレベルはいるけど、迫害か、実験されることなんて目に見えてるだろう?学園ならそれを保護してくれるからね』
(貧乏くじ引いた…)
こんなことを思ってしまった彼を、誰が責めようか。
『まあそんなわけだから、頑張ってよ。これからの人生を決めるのは君だし、僕にとやかく言われたくもないだろう?だから、死なれないために僕が言いたいのはただ一つ。学園に入ってくれ。それだけだ。じゃーねー』
嵐のように話し終えた後、彼は消えた。同時に周りの白い世界も黒く染まって…。
「…はっ!ゆ、夢…?」
目を覚まして辺りを見回すと…。
「じゃ、なかったのかなあ…ハハ…」
普通だったはずの街は、支離滅裂もいいところ、というような風貌に変わっていた。
雷句と同じように起き上がった人たちは、例えば髪の毛が燃えていたり、例えば大きくなっていたり、逆もまた然り。…宙に浮いている人もザラだ。
(こりゃあ、穏やかな学園生活ってわけにはいかなさそうだ…。)
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気分は重かったが、それに反して足は軽かった。体の中で変化でも起きているんだろうか。
とりあえず、家に帰ることにした。せめて、親はまともでありますように…。そんなことを祈りながら。
15分後にその希望は、儚く砕け散ったが。
「あ、雷句!おかえり、大変だったんじゃない?」
「か、母さん…よかった、いつもd「この力、【熱手】だっけ?便利だねこれ!料理も洗濯も楽になりそうだよ!」
…彼の母は、両手からなんか物凄い熱を出していた。
「マジかあ…」
「ん?なんで落ち込んでんだい?」
「おー、雷句、帰ったか。見ろ、父さんの力【神々の義手】とかいう厨二ネームなんだけどな、すんごい地味なんだよ…浮いてる二つの黒い手があるだけだぞ?『便利だね』以外に感想が出てこねえよ…」
…ナンデソコデオチコンデンノ?
思いっきり異常な環境に馴染んでる自分の実の親たちに何か言ってやりたかった。だが、もしかしたら大人はみんな落ち着いてるのかもしれないな…。
「キャー!なにこれ!?」
「うわっ!危ねぇ、誰だ今やったの!」
「もうやだあああ!」
…外から聞こえてくる喧騒からして、そんなことあるわけないよね。大人のみなさんに、こんな変人どもと一緒だと思ってしまったことを謝罪したい。
「って、そうじゃなくて!2人とも、怪我とかない!?」
雷句は、あの自称神様から言われたことが気になっていた。神様は、雷句の『大事な人』が危険だと言っていた。当然両親もその中に入っているだろう。
「なに言ってるんだい?確かに変な能力は手に入れたけど、全く危険なんか無いよ?」
「そうだぞ。逆になんでそんなこと聞いたんだ?」
「あーいや、ちょっとね…」
馬鹿正直に「神様から聞きました」なんて答えたら、「なに言ってんだこいつ…」的な視線で見られること請け合いだ。これは胸の内にしまっておこう。
(ニュースとかどうなってんのかな…)
雷句がテレビの電源を入れると、大混乱の様子がどのチャンネルでも放送されていた。キャスターが石だったりするけど、気にしたら負けだ。喋ってくれればいいんだ。
「いしのなかにいる」
「何言ってるんですか石黒さん!早く中継繋いでください!」
このキャスター、謹慎処分かもなあ…。
激動は、こうして始まった。