1 その日、世界は
ちょい厨二臭いっすねー
その日、世界は光に包まれた。2×××年の2月28日朝9時、人は人の理を超えた。
轟々雷句は、普通の男子中学生だった。受験を間近に控え、必死で勉強していた、普通の。極々普通の、男子中学生。そんな彼にも、『その日』はやってきた。
人で溢れる交差点を一歩踏み出そうとしたその時、
-------まずは視界が歪んだ。そして立っていられないような頭痛に襲われ、目を開けるとそこには、先ほどまでの喧騒が嘘のような、真っ白い空間があった。
「どこだ…ここ?」
あたりを見回しても、なんの気配も感じなければ、なんの色もなくて…ただ轟々雷句ただ一人が、立っていた。
『ああ、いきなり呼び出したような形になってしまってごめんね。世界への干渉は、このタイミングでしかできなかった。他の神も同じなんじゃないかな?』
もっとも、僕ができないことを他の神ができるわけがないけどね---。
そう言って『それ』は笑った。声だけで。
「何者…なんだ?僕をどうやってこんなところに…」
雷句は戸惑いながらも、精一杯の疑問を声に出し、形にした。
『自己紹介がまだだったね。僕はエクスドール。エクスドール・フォン・エンド。
向こうでは【黒雷の神】なんて、いささか大袈裟に呼ばれていたよ。この空間に君を呼び出したのは、君なら僕の力を継げそうだと思ったから。君だけじゃなくて多分全ての人類が、こんな経験をしてると思うよ?』
雷句には、やはり理解ができなかった。神?力?何を言っているのだろうか。少なくとも目の前の少年が、次元が違う存在だということは分かった。----そう、エクスドールはいつの間にか、少年のような容姿で雷句の前に座っていた。空中に。
『なに、難しく考えないほうがいい。今から世界は変わる。良くも悪くも…ね。詳しくは説明できないけれど、これは『遊び』だ。神を超えたなにかの…そう、強いて言うなら世界かな。そいつからの、決して逆らうことのできない、ね』
エクスドールの胸から黒い雷を圧縮したかのような球体がでてきて、雷句の皮膚に触れた途端に溶け込んでいく。
「う…ぐっ、ガァっ…」
痛い。熱い。やがてその痛みがおさまると、彼の体はわずかに、パチパチと電気を纏っていた。
「なんだ…これ…」
『かっこいいでしょ?僕の能力【黒雷】を、君にトレースした。今から生きる世界では最強クラスの能力かもしれない。けど、それは磨けば光る、いわば原石みたいなものなんだよ。それがあれば、これから君が出会う数多の受難から、大事な人を守ることもできると思うよ』
「これから生きる世界…。あなたは何を知っているんだ?僕は何をすれば良い!?」
『そうだね、それぐらいなら教えてあげてもいいと思う。
まず、僕は【神】だ。正真正銘のね。といっても神は万物に宿っている。そんなに珍しいものでもないよ』
神…。宗教だとかはあまり信じないタイプの人間だが、目の前の人物が神と言われると、確かにそうなのだろうとさえ思えてくる。不思議だ。
『そして、二つ目。今、全世界の人類は、君の様に人ならざる力を手に入れようとしている。
代償は混沌とした社会と、平和や秩序の破壊だ』
「全人類というと、母さんも、妹も、友達も、皆?」
『王も、市民も、赤子も老人も、皆だ。この能力というのは、人によって全然違う。強さだってピンキリだ。僕が渡した黒雷は、その中でも最強の力…だね。』
この人物(?)は何を知っているのだろうか。問い詰めたかったけれど、彼の放つ威圧感とでも呼ぶべき物に、上手く言葉にできなかった。
『ここまでは理解できたかな?』
「う、うん。なん…とか。」
『うんうん、飲み込みが早いのは助かるよ。ところで、雷句君に聞きたいんだけれど』
「な、なに…?」
『人類『全員』が特別な力を持つわけだけど、それだけで終わりだと思うかい?』
「全員が…力を……。』
雷句はよくあるファンタジーを思い浮かべる。
『まあ、分からないよね。これから世界は、異世界へと変わるんだ。あいつらの手によって…』
「異世界…?何が変わるんだ…?」
『それは自分の目で確かめると良い。驚くだろうさ』
「そんな、これからのことなんて貴方に…」
『分かるんだよ。この歴史は何度も繰り返している。結果が変わったことはなかったけれど、ね…。』
なぜか一瞬寂しそうな顔をしてから、エクスドールは続ける。
『とにかく、君は今までの歴史では…不意を突かれ、死んでしまう。『今までの歴史なら』。』
雷句は驚きっぱなしだった。。自分がドジをして死ぬなんていうのは十分にありえる事だが、異世界?何を言っているのか分からない…。
「じ、じゃあ、今回の歴史では?僕はどうなるんだ?」
君は、今回------。エクスドールが勿体ぶって、そして言った。
『学園生活を送ってもらう』
受験生だからってクリスマスプレゼント無しってマジか