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これからどうしていこうか

 一


 私はエルンとのコミュニケーションの方法を変えてみた。ほめて伸ばせ作戦である。


 私たちはすでに何度かダンジョンに入り込んでいた。そして私は、彼女が何らかの働きをした時、とにかく褒めた。しかしまだ結果は得られない。時間をもう少しかけるべきだろうか。それとも、こんな目下の人間に褒められるなんて屈辱だ、なんて考えられているのかもしれない。


 ダンジョンでの戦いは、彼女の能力が発揮できるように私は意識した。彼女は離れた敵に弓矢と魔術で一方的に殺戮する。私はそれに合わせて、彼女の盾となるのだ。こうすれば彼女の活躍の場面は増え、より褒める回数も多くなるのだ。


 おかげで私はよく疲れてしまうようになったが、しょうがないだろう。


 疲れることもあって、今日はダンジョンはお休みだ。今日、私は本業に移った。



 街のはずれのところに、魔の森と言われるものがある。深くまで踏み込めば、邪気にまみれた魔界となっているのだ。私のテリトリーが魔の森なのだ。


 魔の森にはゴースト系の魔物がよくあらわれる。とても強力で、厄介な存在だ。しかも、倒したところで得られるものも少ない。放っておいても、街に入ってくることもない存在だ。よって、誰も近寄らない。


 私は魔の森に入った。怖いお化けが挨拶してくるが、拳で挨拶を返せば納得して成仏してくれるのだ。危険らしい危険に遭遇したことはまだない。


 私が歩いていると、浄化の結界にぶち当たった。この中は、私が繁殖させた家畜たちが居た。


 牛鶏蚕ジャガイモ畑、これら一から私が作り上げたのだ。このテリトリーの中心には、私の魔法武器、浄化する杖が地面に刺さっている。『浄杖』となづけたものだ。この杖のおかげで、限られた範囲の森の魔物は家畜に成り下がっていった。植物も人間に食べられるものとなっている。


「トマト、水のあげ過ぎがだめなんかな? また病気になっちゃってる」


 私は出荷できそうなものをまとめて、街に戻った。牛乳卵に砂糖は特にお金になるのだ。


 そして今日は、絹を買ってもらった。奴隷が買えるかもしれない大金が手に入った。


 二


 私はこれからどうしたらいいかわからなくなっていた。もう農家を辞めて、本格的にダンジョンで稼ぐ冒険者になればいいのだろうか。せっかく彼女も頑張ってくれるようになったのだから、それにこたえなくてはいけないような気がした。しかし、ダンジョンの稼ぎだけでは、彼女の賃金も払えないのだ。


 もう少し深く行くには人手不足なのである。人材を増やすことを考えていた。


 私は公認の奴隷市場に足を運んだ。


 戦奴を一人買った。ただ、予算ギリギリで、できるだけいい人材をいれようとした結果だ。


 つり目の、眼光の鋭い少女だった。男の人材がほしかったが、どうもいかなかった。


 問題がある。つり目少女は、なかなかに私の言うことを聞かない存在だったのだ。しかも私に挑戦的である。エルフの女性程とはいかないまでも、仕事はそれなりに頑張ってはいた。だが、彼女は私とは相いれないようだった。


 私が完全につり目少女を嫌う頃には買ってからそれなりに時間が経っていた。買ってしまっては戻れない。私はこのメンバーを通すしかないのであった。



 三


「啓介。お前、やつれている」


 私の親友が私に声を掛けてくれた。


「うぇ? この俺がか? 俺はまだ頑張れるさ」


 嘘だった。がんばれる自信はなかった。私は頑張らなければならなかった。


「いや。お前の目、マジで死んでるよ。時間はあるか? 久々に二人でダンジョンに潜ろう。たった一時間だけでいいからさ」


「は? ダンジョン? いいけど」


 こうして私は親友とダンジョンに来た。


「ゆし。数を競い合おうぜ、10年前みたいに、15年? 俺らは見てくれが変わんねえからわかんね、まあいいや。はじめ!」


 私たちがダンジョンに入り込んだ瞬間、キョウが言った。キョウとは親友の名だ。キョウは、そういったと同時に奴は駆け出した。


「な!? 卑怯な!」


 私はつい追いかけてしまった。走り回れば、つい童心にかえってしまう。


「ふしっ!」


 私たちが通り過ぎた後にしたいが転がっていく。どんな魔物であろうと関係がない。すべて一太刀で死んでいく。高速で私たちは走り回った。プロの冒険者も戦う中、横取りしていく。魔物から剥ぐこともせず、数を競う。


「っしゃあ! 俺59匹!」

「俺ろくよん!」


 階層も、どんどん深くなった。


「おっらああ! 380匹!」

「くっそ! 324!」


 まだまだ続き、ふと区切りのいいところでキョウが言った。


「ふうっ! このくらい?」

「それくらいで」


 気が付けば私たちは、相当深いところにまで来ていたのだった。


「うむ」


 キョウは私の顔を見て、満足げに声を出した。


「んだよ。俺の顔に何かあんのか?」


「目が戻ってる。もう死んでねえよ。んじゃ帰るわ」


「あいよ。やっぱ俺はもすこし入り浸るわ。きいつけろよ」


 私はもう少し愛刀を振り回すことにした。

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