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魔法少女 ペコラ・パコラ・ポコラ  作者: 右藤 秕(ウトウ シイナ)
6/7

06:原初の七体

―――――――――――――――――――

◆夢

―――――――――――――――――――


原初の七体セプティム・オリジナル」リッカが呼び出した4体の魔獣が、俺達を取り囲むように立ちふさがっていた。


「フン。でたなバケモノ」

「あわわ。まずいよヨミ!」


 俺の背中に隠れたペチカが、震えながらしがみつく。マユは無言で戦闘態勢に入る。異端(アエレジス)の杖を握り直し、俺も戦いに備えた。


「なあに。心配するなペチカ。こんな小さな子供に俺が負けるわけないだろ!?」

「ふうん。余裕だね、お兄ちゃん」


 小学生にしか見えないリッカが楽しそうに笑う。魔獣がジリジリと距離を詰める。


「ククク。俺をただの魔法使いと思うなよ」

「そうだといいけどね」


 言うと、少女は軽く手を振った。同時に4匹の魔獣が一斉に地を蹴り、俺達に殺到してきた。


「焼き尽くせ!! 【千乃炎(ミリア・フレイマ)】!!!!」


 杖が唸りを上げて魔法陣を展開する。俺の周囲に幾つもの火球が生まれ輝き始める。次の瞬間、文字通り、1000の炎弾が流星群のように原初の七体セプティム・オリジナルと魔獣に向けて降り注いだ。豪雨に打たれる泥人形さながらに、魔獣の体が炎に包まれた。


「やった!!?」

「バカ、ペチカ逃げるぞ!! マユ!!」


 背中から飛び出そうとしたペチカを押し込み、【動作加速(ウルジェント)】の魔法をかける。俺達は一斉に逃げ出した。

 魔獣に対しては、いくらかダメージを与えたようだが、致命傷には程遠い。


「え? 負けるわけないんじゃ?」

「レベル1200のバケモノに俺が敵うわけないだろ!? あんなのはただのハッタリだ!!」

「……だと思いました」


 マユがしたり顔で頷いた。


 新魔法【千乃炎(ミリア・フレイマ)】は、全体攻撃魔法だ。一発一発の威力は【ニ乃炎(ドゥオ・フレイマ)】に劣るが、敵に囲まれた時などは役に立つ。もっとも、今回は一番ハデだから使っただけだ。……逃げ出す隙を作るために。


 全速で走って広間を出る。その際、リッカの様子がちらりと見えた。爆炎の中、彼女は平然と立っていた。

 やはりあれは生半可なモノではない。見た目こそ可愛らしい少女だが、想像を絶するバケモノだ。この世の摂理を完全に超越している。


「冗談じゃない。千以上のレベル差なんて、死にイベントじゃあるまいし」


 暫く走って、俺達は身を隠した。


動作加速(ウルジェント)】の持続時間は長くない。すでに効果が切れている。

透明絶気(ヴェールト・オフ)】をもう一度使いたいところだったが、MP節約のためやめておいた。


 暫く黙って息を整える。

 珍しく、マユが神妙な面持ちで口を開いた。


「ごめんなさい。ヨミは最初反対してたのに、私が賛成したから……」

「ウチもごめん。いくらエスニャさまのためとは言え、こんな危険な事に2人を巻き込んで……」


 体育座りでうなだれるマユの頭に、しおれた花のようになったペチカが止まっている。2人なりに、責任を感じているのだろう。だが、マユにもペチカにも罪はない。


「何言ってんだ。2人の意見を聞いて、エスニャを助けるって決めたのは俺だ。……別に俺がリーダーってわけでもないけど。それに……」


 ちょっと2人を直視できなくて視線をそらす。


「……エスニャはペチカの友達なんだろ? だったら、助けるに決まってる」


 ペチカの目にみるみる涙が溢れてきた。


「ヨミー!!」


 俺の顔にしがみついて、涙を擦りつける。


「ま、いざとなったら、『奥の手』もあることだしな」


 顔を上げて、マユがこちらを見た。


「ですが、あのリッカとかいうオリジナル・マホウショウジョはどうするんですか?」

「一つだけ、絶対負けない方法がある。……戦わなければいいんだ」

「……言うのは簡単ですが」

「オリジナルを避けてエスニャを助ける。女神なら、あのオリジナルに勝てるかも……。そうすれば逆転も可能だ」


 自分でも楽観的にすぎるかと思うが、エスニャを助けたいと思うのは本心だ。魔法の箒(ペガサス)を失って、簡単に脱出できなくなった今、俺達が生き延びるための選択肢はそう多くはない。


 俺達は作戦行動を再開した。出来るだけ戦いを避けながら移動する。

 それでも、ここは敵の本拠地だ。全ての敵から逃げることは難しかった。


 目の前に、3体のマホウショウジョが立ちはだかった。オリジナルではなさそうだが、油断は禁物だ。


「【ニ乃炎(ドゥオ・フレイマ)】!!」


 ハンドゼスチャを使い3連射する。2発がそれぞれ敵のコアを撃ちぬいて、残りは石壁を破壊した。杖のお陰で【ニ乃炎(ドゥオ・フレイマ)】も最初に比べてずいぶん強化されているいる。コピーのマホウショウジョなら一撃で倒せるようになった。


 俺の攻撃を回避した個体がマユに向けて呪文を放つ。


「【ペコラ・パコラ・ポコラ】」


 幾何学模様の光の乱舞がマユを襲う。しかし、逃げるどころか、マユは敵に突進していった。ギリギリで体を捻って魔法をかわしざま、痛烈な蹴りを繰り出した。


 3体目のマホウショウジョが壁にたたきつけられ、動かなくなった。

 一息つく暇もなく、後方から新たな敵が出現した。


「きりがない!!」


 俺はマジックバッグからアイテムを取り出した。


「くらえ!!」


 煙幕が周囲の視界を奪った。その間に先を急ぐ。


「あんなものまで作ったの?」


 ペチカが物珍しそうに言ったが、何の事はない。乗り捨てられた車から集めた、ただの発煙筒だ。


 その後も俺達は戦ったり逃げたりしながら、エスニャを探して走り回った。

 戦った敵はザコや魔獣ばかりだったが、それでも10体以上倒しただろうか。


 物陰に隠れて少し休む。体力(ヒットポイント)MP(マナポイント)、スタミナをそれぞれポーションで回復させる。もともと体力(スタミナ)がない俺が、これほど走り回ってまだ倒れずにいられるのは、スタミナ回復ポーションのおかげだった。

 スタミナ要素のあるゲームはちょっと面倒だなと思うこともあるが、現実にこんなポーションがあると、なんとありがたいことか。


 だが、ポーションの効果も100%完全ではない。魔法で無理やり回復させているため、体に多少の無理がかかる。癒やしきれない疲労がどこかに蓄積してしまう。


 壁にもたれかかって目を閉じていると、急速に睡魔が襲いかかってきた。



**********



 それは、2人だけの秘密だった。秘密なので俺たち以外誰も知らないし、誰にも言ったことはない。


 今、目の前には1人の少女が座っていた。サラサラの黒髪ロングで、白いワンピースを着ている。黒いつぶらな瞳が印象的な10才ぐらいの少女だ。

 どういうわけか、俺の体も彼女と同じぐらいの子供に戻っていた。


……そうかこれは子供の頃の夢だ。


 小学校時代の夏休み、その短い間だけ、俺はその少女と遊んだことがあった。

 今思えば初恋だったのかもしれない。マユによく似た少女だ。

 少女と俺は2人だけの秘密を共有していた。


 秘密の遊び。


 坂の多い街の小さな商店街の路地裏に、誰も来ない忘れられた資材置き場があった。そこが遊びの舞台だ。


 どこまでも純粋な好奇心。何も知らないがゆえの、罪のない儀式。無垢なごっこ遊び。

 少女は何も言わず、ただ俺の言葉に従った。


 それは、2人だけの秘密だった。秘密なので俺たち以外誰も知らないし、誰にも言わない。将来、俺の自伝が出版されたとしても、書くことは無い。


 遊び終わった後。どこで覚えたのか、少女はこう言った。


「せきにんとってね」


 実際に責任をとるようなことをしたわけでは無いし、彼女を傷つけたわけでもない。きっと彼女は、テレビドラマか何かでそのセリフを覚えて、意味もわからず言ったのだと思う。

 それでもそのセリフは、こうして夢に出てくるぐらい俺の心に残っていた。


 何故今ごろ、こんな夢を見るのか。


 今思うと、少女はマユによく似ていた。彼女が成長した姿がマユだと言われれば、素直に信じられるぐらいだ。


 しかし、当時の少女は俺と同い年だったので、今は俺と同じ19才になっているはずだ。マユは中学1年生の12才だ。同一人物ではありえない。

 なぜ彼女のことを忘れていたのだろう。何故今になってこんな夢を見るのだろう。マユと行動を共にするようになって、少しずつ忘れたはずの記憶が蘇ってきたのだろうか。



―――――――――――――――――――

◆エスニャ

―――――――――――――――――――



 ペチカの呼び声で俺は目を覚ました。どうやら俺は、2分ほど眠っていたらしい。ほっぺたを両手で叩いて、気合を入れなおす。


「ヨミ、それ」

「ん?」


 ペチカの指摘で見てみると、手にした杖のクリスタルが小さく点灯していた。レベルアップの合図だ。杖は、魔導書からの信号を受信するようになっている。アラームも鳴ったはずだが、乱戦の中で聞き逃したのだろう。


「おお、レベルアップした!?」


 レベル3、クラスや称号は魔法使い(ウィッカ)見習い(アプレンティーチェ)のままで変化はないが、基本ステータスが少し上昇している。


「マユもレベルアップしてるみたいだよ」

「……私も?」


 マユの首筋にある数字が1から一気に3になっていた。レベル3ということだ。


「何も変わらない気がします」

「ステータスが上昇して……。要するに腕力が強くなったり、素早くなったり、賢くなったりしてるはずだよ」

「……そうですか」

「スキルとかはないのか?」

「すきる?」


 ペチカが上半身と首を傾けて、問い返す。


「ゲームとかでよくある、攻撃力+3とか、鑑定、鍛冶、千里眼など……」

「そんなのないよ。腕力を鍛えれば攻撃力は上がるし、鍛冶屋に弟子入りすれば鍛冶が出来るようになる。千里眼とかは、魔法で作れるけどね」

「そっか。残念」


 技能(スキル)が欲しければ手に職をつける。現実と同じという訳だ。確かに、ここはゲーム世界ではなく現実なのだ。


「ただ、魔法使いやその眷属には『天眷(アプリオリ)』って呼ばれる特殊能力があるらしいよ。ホントかどうか知らないけど」


 面白そうな話ではあったが、今は情報が少なすぎる。ありもしない奇跡に頼るようになってはお終いだ。


「まあいいや、先を急ごう」


 立ち上がって辺りを見回す。


「……それにしても、ここ、どこだ?」


 めちゃくちゃに逃げまわったせいで、俺達は道に迷っていた。アイテム「魔法の地図」を引っ張りだして確認する。


「どうやら反対方向に来たみたいだな」

「ちょっとまって、あの部屋は?」

「……なんだか牢屋みたいです」


 迷い込んだ通路の一角に薄暗い区画があった。鉄格子がはまった小部屋がいくつか並んでいる。

 ペチカが飛んでいって、大きな声を出した。


「エスニャさま!!?」

「まあ、ペチカ。ごきげんよう」

「え? ああ、ごきげんよう」


 あっけにとられるペチカの前に、1人の女性が閉じ込められていた。年の頃は26、7で、白に近い金髪、身長は150~160の間ぐらい。穏和な印象で絵画のように美しいが、どこか幸が薄そうだ。

 しかも彼女の顔は、この要塞にハリツケにされているエスニャの顔そのものだった。ただし、スケールは1/1000に縮小されていたが。


「え? これがエスニャ? じゃあ外のデカイのは?」

「外のが本体で、この体はゲーム用のアバターですわ」


 ゲームはともかく、ペチカとエスニャが友達だと言った時の疑問が解消された。巨大なダーナ神族と小さな妖精がどうやってコミュニケーションをとっているのか不思議だったが、こういうことか。


「そんなことよりヨミ、鍵をあけて」

「わかった。さがって!」


 【一乃炎(ウヌス・フレイマ)】で鍵を焼き切る。


「ありがとうございます。外に出れなくて困っていたんです。この中では魔法が使えなくて……。さあ帰りましょう」

「帰るって、どうやって」

「あら、そういえば。ここはどこ?」


 自分の立場を理解しているのかどうなのか、エスニャにはまったく緊張感がなかった。


「……やけにふわふわした女神様だな」

「エスニャさま、そのままじゃ帰れないよ。本体が捕まったままだよ?」

「ええ? そうなんですの? 困ったわねぇ。ところで、そんなことよりもケーキが食べたいわ」


 全然困っているようには見えなかった。


「なあ、あんた。その体は強いのか?」

「まあどなた? ペチカのお友達?」

「いや、そうだけど。あんた、レベル1200のマホウショウジョを倒せるか?」

「そんな。このアバターはレベル34なんです。無理だと思いますわ」

「じゃあ、やっぱり本体を開放するしかない! ……ってか本体は強いんだろうな?」

「さあどうでしょう? 私より弱い人よりは強いですが、私より強い人にはよわいですよ?」


 どうも話がかみ合わない。


「ペチカ!?」

「ダイジョブ。女神の力ならマホウショウジョなんて目じゃないよ!!」


 それならなんで捕まったんだ? と思ったが、口には出さない。

 一抹の不安を感じつつ、しかし今はそれに賭けるしかなかった。

 アバターだけ連れて逃げるという手もあるが、それでは根本的な解決にはならないだろう。むしろ警戒が厳しくなって、再度侵入するのが難しくなるだけだ。

 要は、オリジナルと正面切って戦わなければいいのだ。


「ヨミ」


 辺りを警戒していたマユが促す。


「よし、急ごう!!」



―――――――――――――――――――

◆リッカ

―――――――――――――――――――


 魔法の地図を見て制御室を確認し、急いでそこへ向かう。途中、数体のマホウショウジョに出会ったが、なんとか退けて目的地の近くに辿り着いた。


 この一帯は他の場所とは少し様子が異なっている。他は城の中のように豪華な作りだったが、ここだけは少しSFみたいだ。金属ともプラスチックともつかない素材の壁に、パイプや何かの装置がゴテゴテと張り付いている。


「この先だな、制御装置がありそうなのは」


 地図によると、この先に大広間があって、さらにその奥に、この要塞の中心と思しき空間があった。


 入り口のひとつから、そっと大広間の中を伺う。内部は学校の体育館ぐらいの広さで天井は高い。周囲に直径5mほどの柱がそびえ、天井を支えていた。壁には魔法装置が設置され、隅の方にはコンテナ風の箱が積まれている。どこか、格納庫に似た雰囲気だ。


 反対側に両開きのドアが見える。おそらくあれが制御室の入り口だ。制御室側のドアは他に見当たらない。


「よし、誰もいないようだ。行くぞ」


 警戒しつつ全員が中に入った時、広間入口のドアが全て、勢い良く閉じられた。


「な!? 罠か!?」

「まずいよ、これじゃ逃げられない!!」


 マユにしがみついてペチカが言う。マユだけは落ち着いていた。エスニャはぽーっとしている。


「遅かったね。お兄ちゃん」


 大広間の奥にある、複雑な魔法装置の影からリッカが歩み出た。


「くそ!! 読まれてたか」


 待っていたのは彼女だけではなかった。カードから呼び出された魔獣が4体、物陰から現れ俺達の周囲に展開した。

 もはや逃げることも出来ない。生きて帰るためには、ここを突破して制御室に入り、目的を達するしか無い。

 そのためには、何とかして制御室のドアを開けなければならないが、そのドアの正面にはリッカが陣取っていた。


「一応、制御室に入ってからの作戦は考えて来たんだけどな。簡単にはいかないか。中に入れさえすれば……!!」


 リッカも俺たちの目的がわかってるからこそ、ここで待っていたのだろう。簡単には行かせてくれそうもない。


 マユが一歩前へでた。


「『アレ』を使う時が来たようです」


 ブレスレットをはめた左腕を構え、右手で軽く触れて呪文を唱える。


「【覚醒形態(アロウザル・モーデ)】!!」


 マユの体内のマナバッテリーに蓄えられたマナが開放され、制御(コア)ユニットにインストールされたアドオンが起動する。攻撃力、防御力、瞬発力等の強化魔法が読み込まれる。


 さらに、彼女の体がまばゆい光に包まれ、着ていた服が消え、代わりに亜空間に格納された軽装甲が展開、装着される。


 その姿は、特殊部隊と騎士の鎧を合わせたような特徴を持っていた。動きやすさと防御力を追求した結果だ。

 これこそ、今回の改造で生み出された、新しいマユだった。


「なにそれ!? なにそれ!?」


 さっそくペチカが食いついてきた。先ほどまでの恐怖を忘れて目を輝かせている。エスニャも一緒になってはしゃいでいた。


「服が消えた件について、あとでお話があります」


 振り返りもせずにマユが言う。俺の心臓が、キュッと縮み上がった。


「き、気をつけろ!」

「私はどうせ一度死んだ身です」

「え?」


 直後、マユは床を蹴った。手近な魔獣に向けて突進する。それに合わせて俺も魔法を放ち援護する。リッカは、近くの装置の上に座り込み、面白そうに様子を眺めていた。


 今のマユのセリフが少し気になったが、問いただしている暇はない。

 俺の役目は、直接戦闘は避けつつも後衛として、マユが1対1で戦えるように魔獣を牽制することだった。俺の動きを見て、エスニャも調子を合わせてくれる。


 ウサギのような長い耳をもった白い魔獣が、マユの頚椎を噛み砕こうと肉薄した。4cmの差でそれをかわすと、マユは右腕を振りかぶった。


「バスタードリル」


 マユの右手に格納されたドリル状の武器が出現し、超高速で回転し始めた。そのままそれを敵の脳髄に叩き込む。頭部が弾けるように吹き飛んで、白い魔獣は倒れ、霧のように消滅した。


 原初の七体セプティム・オリジナルはともかく、魔獣のレベルはそんなに高くはなさそうだ。俺達が連携すれば、倒せなくはない。


 続けて、魔獣が2体同時にマユに迫ったが、エスニャが魔法の鎖を出現させ1体を拘束した。その隙に、もう1体をマユが血祭りにあげる。返り血を浴びたマユは、いつも以上に楽しそうだった。

 鎖に縛られた1体はエスニャが魔法で止めを刺す。さすがはレベル34だ。


 最後の1体、羽の生えたライオンめいた魔獣が、突如矛先を俺に向けた。この中で俺が一番弱いと踏んだのだろう。

 だが、俺だって自分の身ぐらい自分で守れる。


異端(アエレジス)の杖を構え、落ち着いて狙いを定める。


「【ニ乃炎(ドゥオ・フレイマ)】!!」


 続けて、ハンドゼスチャを2回繰り返す。業火の3連射が最後の魔獣をとらえた。大きな穴を3つ穿たれて苦悶のうめき声を漏らし、魔獣は息絶えた。


「すごーい! 強いね、お兄ちゃんたち、レベル2――あれ3になってる――にしては、だけど!!」


 座っていた装置の上から、リッカが飛び降りる。


「じゃあ、そろそろ終わりにしよっか。もう夕方になるし……」


 あくびをしながら、少女は言った。


 あどけない外見にかかわらず、そのたたずまいは尋常のものではなかった。禍々しい絶対零度の瘴気を放ち、見る者の魂を凍りつかせる。

 最悪の状況だ。ついに、リッカとの戦いを避ける事は出来なかった。



 【続く】



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