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【最弱】 少年の見解

2040年。ーーー人類は始めて特殊能力者を人工的に生み出す事に成功した。


2045年。ーーー人類は始めて特殊能力を操る人種、特殊能力者達を戦争に活用した。


2048年。ーーー人類達は戦争の終結を発表。(だが水面下では国同士の特殊能力者開発が行われており、国々は水面下で戦争再開の準備を整えていた。)


2050年。ーーー日本は北海道を丸ごと改築し、雲岸道という特殊能力者だけの島を作りあげた。







◇◇◇



で、僕はその雲岸道のとある町に住む絶賛訳ありの高校生だ。

でもまあ僕程に実戦向けじゃない特殊能力者なんていないだろう。 特殊能力者は誰でも成れるってわけでは無いけれど、僕の特殊能力は特殊能力者の中でも恐らく【最弱】だろう。

いや、条件さえ満たせば凄い能力なのかもしれない。 けれど使い勝手の悪い能力だと思う。 そもそもこれを能力と言ってしまっても良いのかどうかは分からない。


「う〜ん。」


中庭の椅子に腰を掛けながら、僕は朦朧とする意識の中で襲ってくる眠気に身を任せようとする。 辺りが霞んで見えだすその頃。


「おーい。 寝るんじゃね〜ぞぉ。」


声を掛けられ、僕の意識は唐突に覚醒する。

まるで緩んだ歯車を無理矢理掛け合わさせられるように、意識が回復した。


僕は不機嫌めに目の前の男を睨んだ。 男はボサボサの茶色い髪に上の下と言った所の青年だった。 その瞳は呆れたような目で此方を見ている。


「今日は“裏”の仕事があるからな。」


僕にだけ聞こえる声で目の前の青年は静かに呟いた。


「本当に分かってんだろうなぁ・・・・。」

「分かってるさ化霖。」


目の前の青年は化霖 剛太(けりん こうた)。 仕事ネームは【最硬】【清純者】 【肉界鋼人】【鋼堅者】。

僕の数少ないーー別にボッチでは無い!(強調)ーー友人だ。


「なあ化霖さん。ーーー何で人は仕事をしなければいけないんだろうか。 ましてや僕は高校生だよ? まあ確かに僕は養ってあげなくちゃいけない大切な人もいるわけだけどさ。 でも僕だって休暇とか取っても良いよね?」

「なら休めば? お前が烈火に殺されるだけだけど・・・・・・。」


あぁ、何て理不尽。

働く事を強いられているんだ!


「・・・・・・勘弁して欲しいなぁ。」


最後に僕は、取り敢えず溜息をついた。







◇◇◇



ただいま〜。という声と共に僕は家へと帰宅した。 しかし数年前まではこの言葉を言っても何の意味も無かったというのに・・・・。 その響きに最早感動さえ覚える。


「お帰りなさいませ。 主様。」


すると僕のいる玄関まで一人のメイドがわざわざ小走りに駆けて来た。


ブロンド色の秀麗な髪がその存在感を語る。 サラサラとしたその髪はショートヘアで、それがさらにその少女には似合っていた。 人形のような純白の肌と最早造形美さえ思える整った顔立ち。

やはりこんな少女が僕なんかのメイドで良いんだろうか? 。


「ご飯にしますか? お風呂にしますか?」


「それとも、わ・た・し?」という事を目の前のメイドが言ってくれる事を望んだわけでは無い。ーーー嘘です。 本当は超言って欲しかったです。


しかし、目の前のメイドが本当に壊れた機械のように無表情でさえ無ければより良いんだけど。と僕は思う。 まあこればっかりはまだ彼女が僕に心を開いて無いという証拠だ。 ゆっくり、焦らずに開かせて行くしか道は無いだろう。

おっと失礼した。 目の前のメイドの名前はメイ。 とある事情で僕の家で同居生活をしている。 え?不埒な行動をしてるんじゃないかって? いやいや、僕にそんな事をする甲斐性も度胸もございませんよ?


「うんお風呂。と言いたい所だけど・・・・。 今日は裏の仕事があってね。 少し遅くなる。」


何気無くメイを置いて仕事に行こうとする僕。 正直言って、メイにあまり裏の仕事を見せたくなかった。


「左様でございますか。・・・・ではお供させてもらいます。」

「いや、今回は僕一人でも大丈夫だよ。」

「いえ、これもお務めなので。」


そう言って無表情に頭をペコリと下げるメイに僕は参ったな。とこめかみを指でポリポリ掻いた。 僕は務めとか言う言葉が嫌いだ。 何故ならそれはまるで仕事を強要させるような残酷な言葉だからだ。


「じゃあ行こうか。 メイ。」

「はい。 主様。」


あと、出来れば主様というような呼び名では無くてもっと気軽に呼び捨てで読んで欲しいものだ・・・・・。


そんな事を思いながらも、僕とメイは支度を整えるのであった。





◇◇◇



とあるマンションの廃墟。 薄汚れ、所々が錆び、蜘蛛の巣や埃の舞う廃墟をパーカーに身を包む僕とメイド服から一般的な純白のワンピースに着替えたメイが入っていく。

二人で今にも壊れそうな階段を一つ一つ上がり、423号室と書かれた部屋で僕達は止まった。 部屋の戸をノックする。


「あぁ。」


生活感の欠片も無いような廃墟の一室から虫の囀るような音と共に、一人の女の色白い手が顔を出す。 手の指がプラプラと此方に来るように合図を出すと、僕とメイは部屋の中に入った。

毎度毎度思うけど、顔も見ずに入らせて良いのだろうか・・・・・。


「良いのよ・・・・。 私の能力は見透し(クリアウォッチ)。 壁や障害を無視して相手を見る事が出来るのよ。 それに私は肉体意外にも相手の心情や感情も見る事が出来るしね。」


と、目の前の女。 雲井 文月(くもい ふつき)は言った。

それにしても見透し、か。 簡単に言うと透し能力みたいなものかな? でも如何なる障害を見透すんなら衣服とかも見透しちゃうのかな。 女性がそんな能力持ってるって、なんかエロいね!


「黙れ腐れ外道。」


とか思っていると腹辺りに強烈な回し蹴りをくらった。 あぁ、そういえば心も見れるんだっけ・・・・。


さて、雲井 文月。

彼女は僕達のチームのリーダーにして仕事ネームは【リーダー】【仕事を引き受け人】【覇者】【交渉人】である。


因みに此処で僕達の属するチームについても説明しておこう。


日の本の国。 日本。

此処は他国よりも少々能力者の数に秀でていた。(能力者一人一人の質は別として。)そんな日本だが、日本は現在20〜30までの年齢の人が減少している典型にある。

ならば日本の政治家は何を考えたか。・・・・答えは簡単だ。 政治家は10歳以上の全ての人間の政府協力を強制した。 これにより、日本の政府協力チームは万単位に昇る。 そんな数々のチームの内の一つ、それが僕達だ。


チーム名をSAK。

因みに、S・・・少数精鋭。

A・・・悪道。

K・・・汚い仕事。

という意味らしい。 いや、悪道は無いだろ悪道は。 何処の厨二患者だよ・・・・。


「・・・・もうみんな集まってるわよ。」


そんな声と共にカツカツと廃れた廃墟の床を僕達は歩き、部屋の隠し扉を開いて広間に出た。 これも毎度思うのだが、良くこんな仕掛けを作ったものだ。


「ったく、遅えよ。」


そう言って呆れたように笑う僕の友人、化霖。

どうやら化霖以外もこの場に参じているようで皆口を開く。


「全くだ! お陰で私は退屈に殺されそうだったでは無いか!」


退屈に人は殺されないし、君なら尚更さらだろう。とツッコミたくなる言葉を僕は目の前の女に対して飲み込んだ。

目の前の女、紅月 烈火(こうづき れっか)は不機嫌そうに僕を睨んだ。


紅月は僕達のチームで仕事ネームは【最強】【絶対強者】【王道者】【覇者】【正典女】。 何の比喩も無い僕達のチームの中での最強の女である。


「まあ辞めとけよ烈火嬢。 遅刻ってわけじゃねえんだしな。」


そう言って紅月を慰めたのは金髪グラサンの男。 見た目と違ってかなり優しい性格の高良 慶彦(こうら よしひこ)さんだ。

また、【最体】【喧嘩屋】【強心者】【防戦人】の仕事ネームを持ち、僕達のチームの中で唯一烈火と肉弾戦で張り合える人だ。


まあ、何でも有りなら烈火が余裕で勝つんだけどね・・・・・。


「フフフ。・・・それにしても二人でご出勤なんて、お姉さん妬ましいわ。」

「・・・・・・別にそんなのじゃないですよ。」


このメイの言葉。

言葉だけを聞けばテレている風に聞こえ無くもないが、機械的な声と無表情な顔がそのテレているという言葉を全力で否定するのだ。 ちくしょう。


そしてこの黒髪の妖艶な美女。名を刈谷 記(かりや しるす)。

【最凶】【殺人鬼】【現代版切り裂きジャック】 【日本版切り裂きジャック】と言われた美女である。


「さて、みんな。 仕事の話を始めるわよ。」


最後にリーダー。 雲井の声がその場を制した。 面倒臭い任務の始まりらしい。




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