傷つける権利、そんなものは誰にもない。
フィクションですが、私が伝えたいことであるのには、かわりありません。
『周りに合わせる』
これって、どういうこと? 自分を守ること? みんなの和を乱さないこと? きっと、人によって色んな答えがあるよね。
でも、考え方によればそれは、『本当の自分』を閉じ込めてしまうことかもしれない。
それって、本当に楽しいことなのかな。
疲れてませんか? 無理、してませんか?
自分の意見を前面に出していけたほうが、絶対に後悔しないのに。
私は、『周りに合わせる』ことがすごく苦手で、中学一年生の時にいじめにあいました。
『みんなと違うから』です。
要領が悪くて、トロくて、泣き虫で。気付けば、一番の仲良しだった子も離れてしまい、いつ不登校になってもおかしくない状況で、それでも学校に行き続けたのは、一種の意地。
私は弱い。だから、私をいじめた子達に言い返すことなんて出来ない。
でも、ここで私が不登校になったところで、あの子達は反省するの? 絶対しないよ。
『あいつ、来なくなったな』くらいでしょ。
もしかしたら、それすらも思わないかもしれない。
そんな私に出来たことは、ただ毎日学校に行き続けることでした。心のなかであの子達を恨みながら、ときには汚い言葉で罵りながら。誰にも相談できないまま、重い気持ちを抱えて。なんで私なの? なんで私だけって思いながら。
でも、自殺だけは一度もしようとしたことがない。
だって、こんな酷いことを平気で出来るような、人の気持ちがわからない、頭の悪い人達のせいで死ぬなんて……そんな馬鹿らしいことないよ。
心がぼろぼろになるなかで、よくこんなプライドが残っていたなって、今になって思う。
なんとか一年生が終わって、二年生に進級する前の日――春休み最後の日、私は三つ、自分と約束事をしました。
一、簡単に泣いたりしないこと。
一、人に優しく、自分に厳しくなること。
誰にも言いませんでした。両親にも、兄弟にも。誰にも内緒の、私だけの約束でした。
……そして、三つ目。
一、目立たないこと。
最初に言ったことと違う、って思った?
……ごめんね。やっぱり私、そんなに強くなかった。最初に言ったことは、本当に思ってた。でも、誰にも言えなかった。
『またいじめられたら、どうしよう』
『みんな、私のこと嫌いなんじゃないか』
そう思い始めたら、怖くて言えなかった。態度にも出せなかった。やっぱり、私は臆病なままだったんだ。偉そうなこと言えるような人にはなれないみたい。こんな私が言っても説得力ないかもしれないけれど、でも、これだけは。
今日も、いじめのせいで未来ある命が消されていく。
いじめは、人を殺します。
心を殺して、体を殺すこともある。
二度人を殺すなんて、そんな残酷なことがあって良いはずがない。
でも、いじめる人は、きっとそこまで考えてないんだろうね。大袈裟だって笑うのかな。だから、人をいじめたりできるんだろうね、きっと。
あのね、どれだけその子が変わっていたとしても、あなたにはその子をいじめる権利はないよ。その子を殺す権利はないよ。
『注意』や『指摘』と、『いじめ』は違うの。
『喧嘩』と『いじめ』は違うの。
勘違いしちゃダメなんだ。
今、辛い思いをしてるあなたも、はやまったらダメだよ。
死んだら絶対にやりなおせない。誰かが悲しむんだから。
誰も悲しまないなんて、嘘。いっぱいいっぱいで、周りがよく見えてないだけ。
よく見てみて。
家族は? 友達は? ネットの知り合いは? 誰でもいい、本当に誰もいないのかどうか。
よく考えて。
それからでも遅くない。
今死んでしまったら、『いじめはなかった』とか、なかったことにされるかもしれないんだよ? というか、される。なかったことにされて、本当にいいの? 悔しくない?
死ぬ前に、こう考えられないかな。
今、一生分の不幸を使い果たしてる。
じゃあ、そのあとに残るのは楽しいことばっかりのはずなんだ。
したいこと、あるでしょ?
しようよ。
誰にもあなたを傷つける権利なんてない。
死にたいくらい苦しんでいるのなら、学校に行かないほうがまし。
学校だけが全てじゃないんだから。休むことが必要な時だってあるんだから。
私は気づくのが少し遅かったけど……臆病だけど、それでもここにいる。
本物の友達もできた。
そのお陰で気付けたんだ。いじめを見て離れるような友達なんて、いじめがなくてもいつかは離れちゃう人だったんだって。
まだまだ私は臆病だけど、そう思えるようになった分、きっと少し強くなれた。
でも結局、最後は強くなるしかないんだよ。
あのね、いじめた人は変わらないよ。
自分が気にしないようにするしかない。
絶対に、訴えかけなきゃ『今まで悪かった』なんて急に謝ってくることなんてないよ。ありえない。
毅然とした立ち振舞いを心がけようね。
だって、あなたは何も悪くないんだから。
あと、『誰も私のことなんてわかってくれないんだ……』なんて思わないこと。
暗い気持ちになるのはわかるけど、独り善がりが一番ダメだよ。それじゃあ、ただの悲劇のヒロインじゃない。あなたはそんな悲しい役じゃないでしょ? あなたには、もっと楽しくて明るい未来が待っている。素敵な役が割り当てられている。今、脚に絡まった茨を振りほどきさえすればね。探してごらん、絶対に誰かいる。聞いてくれる人が。いないんじゃない。まだ見つけられないだけなんだよ。
少し休むのも大切だよ。だって、強くなるまでに壊れてしまったら意味ないからね。ゆっくり休んで、考えるの。これから自分がどうするか。
ただ、いじめを理由に立ち止まり続けるのは絶対にダメ。
休むのと甘えすぎるのは、別の話だからね。
少し休んだら、もう一度歩み始めよう。
勿論、次の日から劇的に変わって、
『やっと元気になったんだね! よかった!』
なんて、ドラマみたいなことにはならないよ。
きっと始めは、あなたのことを好奇の目で見る人も多い。
でも、そのうちそんなのもなくなる。あなたが少しずつ変わっていけば、強くなっていけば、気付いてくれる人がいつか必ず、現れる。
応援してるよ。きっと大丈夫だから、ね?
信じて、ちょっとだけ、ほんの少しだけでいいから、最後だと思って頑張ってみようよ。
大丈夫、大丈夫。
お読みいただき、ありがとうございました。
この話が、少しでも何かを伝えることができますように。