集結
土曜の黄昏、休日の校舎。
俺たち三人は、昨日出会った時のように下駄箱の前に集結した。
「準備はいい…よな?」
彼女たちは俺に頷く。
「俺は先に教室に行って待つ。二人はそれぞれ教室に向かって、廊下でタイミングぴったりかち合う…という算段。ようするに、あの時と逆のことをする」
俺は指さししながらそう説明し、ふと手を下して息を吐いた。
「…こんなことで上手くいくか判らないけど『今考えられる最も有効な手段』がこれだって、そう俺たちは決めた」
昨夜、俺たち三人はひとまず電話で話し合った後、今朝からまた俺の家で現状と対策について話し合うことにした。
そこで出た一つの策が、まぁこれだ。
起きた時と逆のことをすることで、元に戻るかも…的な発想。ベタな話。
『今考えられる最も有効な手段』といっても他に策がないことが事実、でもある。
そこで、やってみるなら同じ状況で…ということで、あの時の時刻16:42頃に合わせて制服姿で終結したのだった。
「いろいろ不安要素満載だけど、とりあえずやってみるか」
「大丈夫、やることは正解。あとは、私たちの問題」
しずくさんはきっぱりと言って、ヒナと向かい合う。
その声は、不思議なほど自信に満ちていた。
「私は隣棟から渡り廊下を通って教室へ向かうから、あなたよりも先に走り出す。私との時間差はさっき実験と計算をした通りだから、それを守ればいいだけ」
「う…うん」
ヒナはコクンと頷く。
「じゃ俺、行くわ」
そう告げて進んでから、ふと立ち止まって二人に振り返った。
俺の彼女が二人いる-----
この風景を見るのはこれで最後になるかもしれないと思うと、妙にアンニュイな気分になってくる。
思えば、俺たちの距離は、この事件をきっかけに急速に縮まった。
今まで知らなかった『朝比奈しずく』を知って、彼女にとっても俺を知ってもらえただろう。
そのうえで、俺は、より彼女を好きになった。
だから-----
「二つに分かれたものを元に戻すのは、とても困難なことで…。たとえ一つになったとしても、元と同じとは限らない」
二人の彼女は、俺の言葉を真剣に聞いていた。それが少し照れくさくて、俺は少し俯いてしまう。
「前の『朝比奈しずく』とは、どうやったって同じにはならないと思う。…でもさ、正直俺はその…前とは違う、新しい『朝比奈しずく』に逢いたいと思うんだ。だから…」
照れくさいけど、でもしっかりと伝えたくて…
二人の手を握って、それそれの目をまっすぐに見て告げた。
「安心しろよ。二人とも安心して、そのままの自分で俺のところに走ってこい」
握った手をすっと放し、二人の肩をポンと叩いて「じゃ、な!」と俺は走り出した。
彼女を待つべき場所へと----




