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神様でした、うちの猫。ツンは強めでいくようです。  作者: ののん
第一の扉 あの子の隣が私の居場所

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第八話 猫神殿の修行と思い出作り

朝は静かにやってくるのに、猫神殿の朝は、静かにさせてくれないみたい。


目が覚めると、枕元には“今日の修行メニュー”と書かれた小さな巻物が置かれているのに気付いた。可愛い肉球のハンコがぽすんと押されている。

修行なの?!知識を得るために来たけど……まぁ同じようなものなのかな。


これはもう、修行とやらからは逃げられない流れなんだろう。

そう思った瞬間だ。


「お嬢さーん!!今日から修行、はじめますにゃーー!!」


扉がバンッと開き、ティムくんのしっぽがぴこっと元気に跳ねた。


いや、待って。

私、起きて三秒?いや、十秒?なんだけど。

昨日の疲れも残ってるし、寝起きの脳にこのテンションはきついよ。


「はいっ!まずは基礎の基礎から行くにゃよー!」


「えぇ〜〜。」


……猫神殿、わりと容赦ない。



* * *


外に見える朝日を眺めながら、ティムくんに連れていかれたのは、祈祷の間。他の猫さんも集まっていて、こちらを見て猫式挨拶をしてくれてる。


「お嬢さん、神殿の朝は、お祈りから始まると決まってるにゃ。その名も“ごろごろ祈祷”にゃ!」


「ん?ごろごろ?」


確かに清々しい朝から祈るのは、心も洗われるだろうし良いだろうけど、ごろごろで祈祷ってどういうこと?猫さんだけの隠語かな。


「見様見真似でいいから、やってみるといいにゃ。何事も実践にゃ。

あ、祈るのはエルトア様ににゃよ。」


「エルトア様に祈るんだ。やりたい!やります!」


あの子に祈れる!


初めてだし嬉しい。

会いたいって祈ってもいいのかな。一生懸命祈ろう。


やり方を知りたくてチラ見すると、神官さんや料理人の猫さん達、みんな思い思いのスタイルで手を合わせている。

うん、自由だった。


私も前の世界でも祈っていたのかな。座りながら手を胸の前で合わせることに違和感がない。


(神様、エルトア様、早く会いたいです。

体は大丈夫ですか、元気にしてますか。

ごはんはお腹いっぱい食べていますか。

お水飲めてますか。

暖かくしてますか。

さみしくさせてごめんね。)


ふとここで周りを見ると、猫さんの隊形が崩れていた。


お座りしていたはずなのに、横になったり、伸びたり、へそ天したり。

すぴーすぴーという寝息も聞こえてくる。平和だ。


祈った願いが平和なら、確実に叶えられてるね。


なるほどね、だから”ごろごろ祈祷”なのね。かわいいからいいよね。



* * *



猫さん達が一眠り、、、じゃなかった一祈りした後、みんなで食堂に移動して、朝ごはんを食べるようなので、ついていく。


ごはんを受け取ってティムくんと席につく。ティムくんは、


「お嬢さん、今全員いるので挨拶しておくといいにゃ。」


と言ってくれた。うん、気持ちよく過ごすために必要だよね。


「うんうん、挨拶したいな。遅くなっちゃって申し訳ないよ。」


「問題ないにゃ。

うー、こほんっ。

みなにゃん、ご存知の通り、異世界のお嬢さんが、猫神殿に修行に来てます。いろいろ教えてたり、仲良くしてあげてほしいにゃ。」


ティムくんが紹介してくれて、私も恥ずかしながら席をごそごそと立つ。


「昨日、こちらの世界に来ました。創造主様から、この世界のことを学ぶようにと言われています。いろいろ教えてもらえると嬉しいです。よろしくお願いします。」


最後お辞儀をして、まずまず優等生の無難な挨拶ができた。


「……」


あれ、反応ないな。


びくびくしながらチラッと顔をあげると、猫さん達の射るような眼差しが、、、眩しいっ。


困っていると、体が少し大きくて、立派な装飾のあるマントを羽織っている長毛猫さんが立ち上がった。


「私が猫神殿の長をし 任されている、大神官を務めているセラフィスにゃ。ようこそ猫神殿へにゃ。

そして何より、我らが一同、長年エルトア様を案じていたのですにゃ。エルトア様をずっと守っていただいていたお嬢さんには、感謝をしきれないですにゃ。

本当にありがとうございましたにゃ。」


目を拭うようにして、深々と頭を下げるセラフィス様。それに倣うように他の猫さんたちもお礼を口にして、頭を下げる。


エルトア様慕われてるんだなぁ、とそっちの方が嬉しくなってしまうよ。


「エルトア様を守っていたというより、寄り添って暮らしていただけです。私も守ってもらいましたし。

それに、こんなに多くの猫さん達に心配されているエルトア様は、幸せ者ですね。

猫神殿がエルトア様を大事にしていて、とても嬉しいです。」


それを聞いた大神官セラフィス様は、ぶっふぉー、と涙を滝のように流しながら、私に飛びついてきた。

さすが神界の猫、ひとっ飛びでしたわ。


「そうなんですにゃ。エルトア様はみんなのエルトア様なんですにゃ。エルトア様がこの世界にいないと、猫神殿何もできなくてみんな困ってもいたんですにゃ。」


あー、神様いないのに、神殿だけあっても、そりゃ困るよね。戻ってくるかもわからないのに、そういう意味でも神官さん達の心痛はすごかったろうな。


あれ?でも


「昨日、大神官様、猫団子のあと、仕事が溜まって忙しいと言って去っていきましたよね。」


「ぎくっ……にゃ。」


「ふふふ。」


ニヤリとすれば、しゅんとする大神官様。

ちょっと意地悪すぎたかな。


「エルトア様が体調戻れば、お仕事も忙しくなると思いますし、それまで私にこの世界のこと、猫神殿のこと教えてくださいね?」


「もちろんですにゃ。恩人であるお嬢さんには、ばっちり猫神殿に染まってもらいますにゃ!みんなも頼むにゃ!」


「んあー」


「にゃー」


「……すぴーすぴー」


みんなも嬉しそうにしてくれてる。まずは仲良くなれるといいな。


「ありがとうございます。」


* * *


それからは、修行に明け暮れる毎日となった。

基本的に朝一番はお祈りで、その後が修行の時間。お昼ごはん後は、神殿のみんなとのたっぷりのお昼寝タイムも設けられていた。

何を教えてもらったっけ。えーと、思い出すと…


✢✢✢


ある日の神官リオくんの講義


「今日は“信仰について”だにゃ。大事なことだからよく聞くにゃ!」


「はい、先生!」


メモとかないので、必死に食らいつく私。


「信仰の回収のしくみについてしるにゃ。信仰を集めて神力に変換するときには、効率よくするべきにゃ。

とにかく、信仰集めにはエルトア様の可愛さが重要だと覚えるにゃ。」


真顔で言うリオ先生。


「聞いてるかにゃ?ここ試験に出るにゃよ。」


しっぽで文字や画像を映すスクリーンを、ばふばふと叩く先生。


「はい、先生!」


✢✢✢


ある日の神官ナイルくんの講義


「えー、昨日は信仰回収について習ったと聞きましたにゃ。それでは今日は信仰心の内訳を、具体的に学びましょうにゃ。いいですね?にゃ」


真面目そうなナイル先生。小さな丸メガネがかわいい。


「はい、先生!」


「よい返事ですにゃ。では、こちらのスクリーンに映し出されたのが、猫神様への信仰心を表すチャートですにゃ。」


ばばん、と表が映し出される。幸いにして、こちらの世界の言葉は通じるし、文字も読める。


さすが創造主。


「ここが、“可愛さ信仰”、ここが“尊さ信仰”、……、ここが“ツンデレ耐性”、、、あれ以前こんなのなかったにゃ。

大変!増えてるにゃ。」


ナイル先生があわあわして、動揺してしまう。


「と、とにかくいろいろありますにゃ。これを強めていただけると……」


いろいろありますよね、分かってます、という風に、私は大人しく黙って頷いた。


✢✢✢


ある日の料理人ボッカのおばちゃんの講義


「このボッカの話も聞いてくれるんにゃって?ありがたいにゃね。

今日は信仰と供物の最新トレンドを、お嬢ちゃんに教えるにゃね!」


「はい、よろしくお願いします、ボッカのおばちゃん!」


「最近はね、どこの神殿でも、奉納されたごはんやおやつの味をレビューする“神様グルメブログ”の需要が増えてるらしいのにゃ。

エルトア様は猫だけれど、神様だからなんでも食べられるけどにゃ。

自分が信仰する神の好みのものを供えたいという気持ちは、料理人としても素晴らしいと思うにゃ。」


「そうですね、先生!」


✢✢✢


ある日の庭師ガルドさんの講義


「……神殿の中庭や周りのお庭の整え方を聞きたいと言われてきたんじゃが、本当に知りたいのかにゃ。」


「はい、知りたいです、先生!」


「そうか。庭に興味をもってくれるとはな。植物は愛情をもって育てれば、必ず結果はついてくる。常に心の中でもよい、話しかけることでーーー、ここまでよいか。」


「……(はっ、寝てた……)

はい、先生!大丈夫です!」


「最後は、神殿の猫たちが寝転ぶ花壇などの土の柔らかさを確認して終わりにするにゃ。ついてくるにゃ。」


「ついていきます、先生!」


ガルドさんと向かったのは中庭。すでに何匹かの猫さんが、中庭で遊んだりごろごろしたり、寝たりしていた。

その中に混ざって、ふかふかの土に飛び込むガルド先生。


「ここで体で確かめるのにゃ。実践あるのみにゃ。」


「いきます!」


少し冷んやりした土へ、私も真似して飛び込む。


「うむ、我ながらいい仕事にゃ……。ふかふか…。」


はい、2人ともぐっすり寝ちゃいました。

分かってたけどね。


✢✢✢


ほぼ毎日ある神官ティムくんの講義


「勉強ばかりは大変にゃから、こちらの世界での記憶や思い出作りをするといいにゃ。なくした記憶は増やせばいいにゃ。」


思い出づくりという名の講義は、日によって、みんなと中庭で遊んだり、神殿の外の森を散策したり、池を覗いて楽しんだりして、最後は決まってお昼寝して、行われていった。


そんなティム先生が、ある日ウキウキしたお顔で講義を始めた。


「今日は猫神様のお世話の練習にゃ。

じゃじゃーん!」


取り出されたのは、動物さん用のブラシ。


「下界から人間が猫に使うブラシというものを取り寄せたにゃ。気持ちが良いらしいにゃ。

お嬢さんも、使う練習するにゃ。」


元の世界で使ってたものと同じだから、使えそう。

安心安心。


「こっちで練習するにゃ。」


「はい、先生!」


ついていった先は、またまた中庭。


何故か、猫さん達が1列に並んでいる。まるで順番待ちの列みたい。よく見ると待ちくたびれてる子もちらほら。


ティムくんは、


「はい、みなさん並んで待っててくださいにゃー。僕がまず、練習台になりますにゃ。」


とみんなに声掛けて、私には


「お嬢さんはここへ。」


と、白いベンチをぽふぽふしてくる。


私が座るとティムくんがお膝に乗り、渡されたブラシでブラッシング……の練習をする。


満足気なティムくん。


「なかなかいいにゃね。素晴らしいにゃ。」


褒められて、誇らしげに頷く私。


その後、予想された通りにブラシされる側がどんどん交代していき、みんなの好評を得たため、この講義は毎日行われることになった。

講義中に出た大量の毛玉のおかげで、猫布団の作成も捗っているらしい。


✢✢✢


他には神殿や葉っぱのお掃除の仕方とかも習ったけど、ほぼ遊びだな…。異世界から来たし、気を遣ってくれてるのかもしれない。


ただ、今日は違う予感がする。

猫神殿の知識番、ノルディル様の講義なのだ。

お読みいただき、ありがとうございました。


第一章【第一の扉 あの子の隣が私の居場所】は、全16話で完結となります。

最終話まで、1日1話ずつ、夕方に投稿していく予定です。

どうぞ最後まで、お付き合いいただけたら嬉しいです。


感想やレビューをそっと残していただけると、とても励みになります。

お忙しい方は、評価を押していただけるだけでも力になります。


これからも、よろしくお願いします。

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