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神様でした、うちの猫。ツンは強めでいくようです。  作者: ののん
第一の扉 あの子の隣が私の居場所

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第五話 あの子の過去

創造主は、長いあごひげを指で整えながら、小さく息をついた。


「あの子はな、まぁ今の見た目は普通の猫だが、創造主のワシが創った、末っ子神の猫神なのじゃよ。神としては、まだ赤ん坊のようなものだ。」


猫神様。


この感じ、なんとなく神様に関連した子なんだろうなぁとは思ったけど、神様そのものなのか。ちょっとあの子が遠い存在に感じてしまう。


「今でこそこの世界は落ち着いているが、あの子が生まれた時くらいにな、邪神といって、闇に落ちた神が生まれてしまい、世界が暗澹とした時期があったのじゃよ。」


胸がぎゅっと掴まれた気がした。そんな暗い闇の時代にあの子は生まれてしまったのか。生まれたばかりのあの子を想像すると、耐えられない。


「人々や神殿の者たちに闇の影響が出始めていた。

下級神の中にも、ちらほら心を侵される者も出てきてな。


そうするとあの子は生まれたばかりで、神力という神としての力も弱い。

影響を受けるどころか、闇に落ちる可能性や害される可能性もあったのじゃ。」


あの子がそんな危険の中にいたなんて。聞いていて、息が苦しくなる。


「可愛い末っ子を守るためには、お嬢さんがいた世界に送り、追われないよう神力も封じるしかなかった。手放すのは苦渋の決断だったのじゃよ。」


創造主が疲れた様子で目頭を揉む。話すだけでも辛い内容なんだろうな。


「あの子も、よくわからない状況で、異世界に放り出されて心細かったであろう。みんな身を引き裂かれる思いをしたが、早く無事に帰ってこられるよう、世界を安定させることに奔走したわい。」


だから、今こうして帰ることができてるのね。みんながそれぞれ頑張って、あの子が安心して帰れる場所が出来て。また再び家族として集まることができるなんて、あの子は幸せ者だなぁ。


「赤ん坊の時に、庇護が必要な時に、そばにいられなかったのはあの子に可哀想なことをした。ただその代わりに、お嬢さんのような人に出会えて守ってもらっている姿を、こちらからも時々見守っていて、一安心もしたもんじゃ。」


あの子が、私の元にきたのは、こんな大変な事情だったんだね。


そういえば、猫さんにしてはすごくお利口さんだったし、気遣いもできて優しかったけど、たまにどこかを見つめているような姿もあったな。元の世界に戻りたいな、って思っていたのかもしれない。


あの子の可愛い姿を思い出すと、やっぱり会いたい思いが溢れでてくる。


「あの子は、あの子は無事にこちらの世界に着いたのでしょうか。元気にしてるでしょうか。病気がちで、お薬も飲まないといけなかったんです。すみません、持ってこれてなくて…。」


あの子のお薬なんて持ってくる余裕はもちろんなかったけど、今更気付いて愕然とする。あんなに、生きるために必要なものなのに。


「はは、心配無用じゃ。神力のない状態で異世界にいたせいで、弱くなって病気になりやすかったんじゃろ。お嬢さんには迷惑かけたの。今はもう、病気は大丈夫じゃ。なんといってもあの子も神だからの。少し休めば体も落ち着くし、神力は元の量には戻るだろう。まぁ、まだ子供だから、そこまでの神力はないがな。」


そうなんだ……。


そうなんだ!?


病気がなくなるの?

もうあの子は、辛い思いや苦しい思いをしなくて済むの?


よかった、よかったよ。

それだけでも、来た甲斐があったよ。


あの子の寝顔を見ながら、私が代われればいいのにと何度こっそり泣いたことか。思い出して俯いてしまったけど。


もう平気。これからは視界がぼやける必要はないんだ。


「大丈夫?」


セレフィーヌ様が声をかけて、肩を抱いてくださる。


「はい、あの子が穏やかに健やかに過ごせるように、いつも願ってましたから。元気になるなんて、すごく嬉しくて、それだけで幸せです。」


「そうね、時々私もあなた達を見ていましたわ。あの子のために祈ってくれて、涙を流してくれて、ありがとう。」


「でじゃの、あの子の猫神としての名前を、まだ伝えておらんかったわ。違和感があるかもしれんが、知る必要はあるでな。聞くか?」


「はい、聞かせてください!」


もちろん聞くよ!あの子の本当の名前。


そっちで呼ぶことになるのかな?向こうの世界の名前が無くなるのは寂しいけど、それも仕方ないよね。


「あの子はな、猫神エルトアと名付けたのじゃ。」


エルトア。


エル……トア?


……そうなんだ…。


エルトア様。頭が真っ白になって呆然としかけた私を、お庭の鳥さんたちが可愛く鳴いて、現実に引き戻してくれる。


周りを見ると、ふふふ、とみんなが驚いたでしょ?と笑いかけてくれる。

私達も驚いたのよ、と。


するりと心に入ってくる猫神様の名前は、あの子にぴったりで、私の胸もじんわり温めてくれる。創造主の言葉からも、愛されて付けられた名前だというのが伝わってくる。


「それで、時にお嬢さんや。こちらにきて体の具合はどうじゃの?」


おっ、急に私自身に話題が振られた!

もうちょっと余韻が欲しかったですぅ。


「セレフィーヌ様の癒しの光で、だいぶ楽になりました。」


「そうか、それは良かった。やはりこういうことはセレフィーヌがよいからの。ワシが采配したのじゃ。」


ふふ、こういうところは可愛いおじいちゃんなんだよねぇ。ひとまず、分かってますよ、さすがです、という顔をしておく。


「次は、少しお嬢さんの話を聞いてもよいかな?記憶の話じゃ。エルトアのことは覚えていたし、そんなに構えんでもよいじゃろう。」


きた!


あの子のことは覚えていたからホッとしてたけど、あっという間に顔が強ばってしまったみたい。落ち着くように言われてしまった。


「今後の身の振り方にも関わるし、どんなことを覚えているか教えてもらえんじゃろうか。なくしたことは、何をなくしたかも分からないじゃろうから、こちらから聞くから心配せんでもよいぞ。」


そう言われて創造主からの質問を受け、足りないところはセレフィーヌ様とリグナス様が訊ねてくれて、私の記憶を確かめていった。


* * *


「ふぅ。」


白いもこもこソファに寄りかかって目を閉じる創造主。完全に疲れている。


やがて、ゆっくりと目を揉み出した。


目を揉むの癖だな。擦りだしたら、注意してあげよう。


「そうか、そこまで忘れたか。いや……、正確には〝なくした〟んだったな。」


創造主の声には、疲労と動揺が滲んでいる。


「はい、そのようですね。」


答えるリグナス様も、メガネの奥に沈痛な面持ちが隠れている。


なくしたもの、つまり魂に存在がない物事に対して、私には悲しいなどという感情は何も湧かなかった。


けれど、私が平気そうにしている代わりに、神様達がかなり心を痛めてくれているようだ。我慢して、そういう風に見せているのだと思われているのかもしれない。


そして告げられたのは、まずこの広い世界の知識を得ること、その上で、今後あの子と共に行動するか決めなさい、ということだった。


それまでは会えないそうだ。情に流されて、後悔するような選択は取らせたくないと言われてしまった。既にあの子にも同じように伝えてあるらしく、決定は覆りそうにない。


本当はあの子に会いたい。


何のためにこっちの世界にきたのか分からないよ。


いつもあの子が側にいたから、一人は寂しい。でも、私がわがまま言って迷惑かけるわけにはいかないよね。


あの子が元気なのはもう分かってる。私にとってはそれが一番。それなら、早くこの世界を知って、あの子に会いに行くのが私のやることだから、頑張らなきゃ。


あの子はできる子。少しの間なら、離れても乗り越えられる子だ。


私はその強さを知ってる。


待っててね。

お読みいただき、ありがとうございました。


更新は不定期になりますが、気長に見守っていただけたら嬉しいです。


感想やレビューもそっと優しく残していただけたら、とても励みになります。

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これからも、よろしくお願いします。

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