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【第一章完結】神様でした、うちの猫。ツンは強めでいくようです。  作者: ののん
第一の扉 あの子の隣が私の居場所

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第十一話 あの日々は僕の宝物

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お父上が呼んでいると、大神殿の使いの白い鳩が僕の元にやってきた。


お嬢さんに関しての話をしたいからおいでと。


僕が知ってるのは、今日はお姉さんが大神殿に呼ばれているということだけ。


鳩を使わずとも、意思疎通はできるのだけど、こういう手間をかける所がお父上らしい。

きっとお父上は、急な呼び出しで、僕が驚かないように、急かさないように、鳩を遣わしてくれたんだ。


ソワソワしながら、鳩にご褒美のおやつをあげると、僕の頭の上にちょこんと乗って落ち着いてしまった。ふぅ、癒される。


行かなきゃ、でも足が重い。


お姉さんは何を話したんだろう。

この世界のこと、怖くなっちゃったかな。


猫神殿のみんなと仲良くなって、僕のことなんて忘れちゃったりして……うわぁーーん。


ぶるぶると頭を振って嫌な考えを追い出してると、鳩が迷惑そうにバサッと飛び降りた。

そしてキッと僕を見て


「ぽっぽー。」


と普通の鳩みたいな鳴き声を出した。


これ、『うわー、何やってるんだ、こいつ。呆れますわぁ。それに私乗ってたのに、振り落とすなんて酷くないですか。』とかが詰め込まれてるな。


応援とかでは絶対ない。



* * *



そして、遣いの鳩を頭に乗せて、僕は大神殿にやってきた。鳩がお父上の場所に導いてくれるので、従ってとてとて歩いていく。


あれ、大神殿のオアシスに、何かの一団がいる。

嫌な予感しかしない。


近づくと、姉上と兄上達だった。やはり。


噂をきいて、現れるだろう僕を待ってたに違いない。もう確信しかない。


うー、ちょっと気が重いし、会いたくないな。

オアシスを通らないでいけるかな?


鳩に聞くか……。


あっ、鳩が、またぽっぽーと言いながら、バサバサバサッとオアシスへ飛んでいき、噴水のそばで毛繕いを始めた。そっちはだめなのに!


「あ、エルトアちゃん来た!」


ミルティナ姉上にバレた。

はぁ、仕方ない。


鳩を恨みがましく思いながら、姉上達の方へ進んでいく。


「姉上兄上お揃いで。どうしましたか?」


「やだぁ、エルトアちゃんのために声掛けて集まったのよー。お父様からお話あるだろうし。」


さも当然、というふうにミルティナ姉上は胸を張る。


「みんなエルトアちゃんのことが心配なのよ。不安だろうし、家族なんだから手が空いてる者たちだけでもそばで見守ろう、ってみんなで話し合ったのよ。」


うふふ、と言いながらセレフィーヌ姉上は言う。


有難いんだけどな、過保護だよね。そして、うちの家族に限ると、ただの野次馬の可能性も否定はできないところが残念。


でも、緊張してるのは確かだし、不安なのもそう。まだ子ども神扱いなのに、すでに神として生きていく中の岐路に立っているとさえ思っている。


「私たちは、ここでのんびり待ってるから、お父様としっかり話してらっしゃい。心を強く持って、自分の気持ちに正直にね。」


「はい、ありがとうございます。行ってきます。」


他の異世界では、神々同士の争いもそれなりにあるという。うちではこんな感じでみんなの仲は良い。


僕は恵まれてるな。


避難した先でもお姉さんに巡り会えたし。


ぐすん、だめだ、泣いちゃだめだ。

まだ話を聞いてない!


姉上達に教えてもらった、大神殿の温室に行くと、お父上がいらっしゃった。


「ただいま参りました、エルトアです。」


ピンクの花を愛でながら、お父上は笑顔で迎えてくれた。


「よく来たの、エルトアよ。今日の話は予想はついておるか。」


「はい、異世界でお世話になったお姉さんのことですね。」


うんうんと頷きながら、創造主は花を眺めつつゆっくりと歩き出す。


「お主はどう思っておる。

お嬢さんと一緒にいたい気持ちは変わらんか。」


変わるわけないよ。

愚問ですよ、お父上。


「もちろん、変わりません。何があっても、お姉さんと一緒に歩んでいきます。」


「そうかそうか。ま、良かろう。今から会って、お互い話をして、お嬢さんの気持ちもお主自身で確かめるとよい。」


えっ、今から会えるの?


「今は、大神殿のテラスで、セレフィーヌ特製ハーブティーを飲んで心を安らげて待ってもらっておるぞ。だから、会おうと思えばすぐじゃ。だがその前に……。」


急にお父上が、僕を見て真剣な厳しい顔つきに変わった。


「うっ……。」


お父上は、こう見えてかなり上位の創造主だ。普段は気さくでお茶目なところもあるけれど、本気を出した時の力はすごいらしい、と聞いてはいたけれど。


今恐らく、少し神力を解放しただけだろうけど、ただそれでも今の僕程度では威圧に押し負けそうになる。

2、3歩後退して踏みとどまるのがやっとだ。


「お嬢さんは、いろんな記憶をなくしておる。それを心に留めて、覚悟して話をせよ。彼女は名前の記憶まで無くしておる。」



* * *



お父上と別れて、大神殿のテラスに向かう。


このテラスは広くて、椅子とテーブルが何セットか置いてある。大神殿自慢の庭も見えて、小鳥も戯れられて、たまに大神殿の森から遊びに来た小動物も顔を出す。


お姉さんが癒されるには最高の場所だ。


けれども、向かう僕の足は重い。


お父上は、言っていた。


お姉さんは記憶を多く無くしていると。

それは僕のせいで起きたことだから、覚悟してたけど、実際に聞くとかなり辛い話だ。


名前まで無くしたと言っていた。

誰のだろう。

お姉さん?僕?僕なの?


普通に考えて僕だけど、そうは思いたくない。


僕の名前忘れたの?

あんなに優しく呼んでくれてたのに?

もう呼んでくれないの?

他にはどんなこと無くしたの?

覚えてることはなにがあるの?


お父上は、お姉さんが僕のことを覚えてるとも何も言ってくれなかった。


自分で確かめろと。

それが覚悟と責任だと。


もし、僕のこと覚えてなかったら??

あの日々がまるで幻のように感じてしまう。そんなのはイヤだ。


これからも、一緒に過ごして、今まで病気で出来なかった分、楽しい思い出を作っていくんだ。

お姉さん……。


僕は神だ。ある程度のことは何でもできる。

でも人の気持ちはどうしようもない。


そんな僕ができることは。


もし僕のことを忘れていても、一から関係を作り直すよう努力しよう。相性は良いのだから、また仲良くなれるはず。


今までのお姉さんとの記憶は、僕の宝物として大事にしよう。そして、これからのお姉さんとの未来を一緒に作っていければ、それで充分だと。


過去に生きるより未来に生きる、だよね。


たぶん、お姉さんだったらこういう風に考えると思うんだ。うじうじするより、こうしようってアドバイスをくれる人。


この世界に来てくれたお姉さんに心から感謝を。


僕はお姉さんを信じる。


よし、行こう。


お姉さんに会いに。

お読みいただき、ありがとうございました。


次回は【第十二話 僕の名前を呼ぶ声】です。

小さな決意を胸に、一歩踏み出した猫神様。

その先に待つ声は…?


第一章【第一の扉 あの子の隣が私の居場所】は、全16話で完結となります。

最終話まで、1日1話ずつ、夕方に投稿していく予定です。

どうぞ最後まで、お付き合いいただけたら嬉しいです。


感想やレビューをそっと残していただけると、とても励みになります。

お忙しい方は、評価を押していただけるだけでも力になります。


これからも、よろしくお願いします。

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