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【第一章完結】神様でした、うちの猫。ツンは強めでいくようです。  作者: ののん
第一の扉 あの子の隣が私の居場所

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第十話 私の居場所は変わらない

私の不安をよそに、神殿での修行は続いていく。


この世界の知識は、ノルディル様から毎日のように教えてもらうようになった。


そして、他のみんなからは、下界の知識も得た。


何があっても暮らせるようにと、ボッカのおばちゃんにお願いして、この世界の料理も学ばせてもらった。


この世界のお掃除の仕方も覚えたし、猫布団製作を手伝いながら、お裁縫も出来るようにした。


庭のお手入れは、ガルド先生のお墨付きをもらえたから、この世界で庭師としてもやっていけるかもしれない。


そして、エルトア様は、かなり体調が回復してきていると、大神官セラフィス様から伝え聞いた。


なんとなく、修行の終わりが近づいてきてる気がする。


あの子に会いたいけど、会うのが怖い。


どういう反応をされるのか、分からない不安で押し潰されそうになる。


でも、どうせ考えてもどうしようもないよねってことで、忘れるように、日々の修行と思い出作りをめいっぱい楽しむようにして、過ごしていた。


* * *


そして今私は、猫神殿の私用の部屋の窓を開けて、頬杖をつきながら中庭を眺めている。

ぽかぽかして気持ちいいんだよね、ここ。


中庭では、暖かい日差しの中、色とりどりの花が咲き乱れ、猫達も遊んだりごろごろしたり気ままに過ごしている。ぼーっと見ていると、気も紛れるのだ。


小鳥がチチチチと鳴いてるのも聞こえて、どこにいるか探すのも楽しい。


そう、この時間がずっと続けばいいのに、という現実逃避中。


今日この後、大神殿に行き、創造主に会わないといけないのだ。


朝ティムくんと連れ立って来た大神官セラフィス様にこう言われてしまった。


「お嬢さんも、そろそろ世界の知識も猫神殿のしきたりも覚えた頃だろうし、大神殿においでと、創造主様が仰ってるそうだにゃ。今日お話してくるといいにゃ。」


確かに、まだまだ勉強することはいくらでもあれど、ある程度は学んだと思う。生活しながら知識を増やす実践方式で良さそうな具合にまではきてるはず。


そう、そろそろ私のこれからについても、話し合う時に来ているのだ。


私の希望はあるけれど、不安もあって、何が正解か迷ってしまう。あの子の状況も分からない。


創造主からも何かお話があるだろうしなぁ。


「はぁ〜。」


考えても堂々巡り。


前の世界の私、相手に遠慮してあんまり意見言えなかった性格だったんだろうな。今こんなに悩んでるってことはね、たぶん。


いろいろ無くした今、客観的にみると、きっと私損してただろうなぁ。


……あれ?今の私が、昔の私損してたって思うなら?


やりたいこと、思ったことは、言ってしまっていいってことでは。迷惑とかかけない範囲なら。

相手を思いやった上で、自分の思いを伝えることは、悪いことではないはず。


自分の気持ちを我慢して抑えるのは、一見美徳なようで、相手にも誠実ではないことにも繋がる気もする。


そっか。ふふ、心は決まった。


後悔しないためにも、自分の思いや気持ちはちゃんと言おう。


窓の外では、いつの間にか、猫さんがみんなお休みになっていた。


* * *


どきどき。

私の中の、心臓の主張がすごい。


今、ティムくんに連れられて、大神殿の中の、大きな扉の前に立たされている。


そう、促されるままティムくんといたら、大神殿にもう来ちゃったの!歩くとかの移動とかも無しだし、猫神殿から大神殿まであっという間なんだもん。

大神殿の中を少し歩いただけ。


心の準備とかは、させてはくれないのね。


あ、今なのかな?

この扉の前の、この一瞬が準備タイムなの?!


がんばる!!

私はちゃんと言うぞ、おー!

と、心の中で拳を握っていたら


「お、お嬢さん?お顔がちょっと怖いですにゃ……大丈夫ですにゃ?」


と、ティムくんに心配されてしまった。


「創造主様は、偉い方ですけど、とても気さくな神様ですので、緊張しなくても平気ですにゃ。」


「あ、うん。ありがと。心配させちゃったね。

大丈夫だよ。

確かに前に会った創造主様は、親しみやすかったよ。」


私の言葉を聞いて、ティムくんがとても嬉しそうにする。


「そうなんですにゃ。みーんなに慕われる神様なんですにゃ。」


ふふ、いい世界だね。

神官に慕われる創造主の世界なんて、素敵に決まってるよ。


「じゃ、開けますにゃよー。」


あ、もう?という私の心の呟きは聞こえるはずもなかった。


ティムくんが、扉に軽く手を触れると、すーっと音もなく重厚な扉が開いていき、中から白い眩い光が漏れ出してくる。

それはどんどん増していく。


「う、眩しい!」


思わず、目をつぶって、更に手で目を塞ぐ。


一瞬だったのか、ティムくんの声が聞こえる。


「お嬢さん、もう平気ですにゃ。目を開けていいですにゃ。」


そう声を掛けられて目を開けると、白い光の粒がキラキラと舞う、広間の真ん中に立っていた。目を凝らして、周りを見渡してみる。


壁も床も天井も吸い込まそうに白いけど、冷たい印象はなく、置いてある色彩豊かな絨毯や椅子が、優しく迎えてくれる、そんな広間だ。


「お嬢さん、久しぶりじゃの。元気にしておったようじゃな。」


はっ、この声は!創造主!

どこかな。


あ、少し高い位置にいるよ。

懐かしい。


ちょっと前に会った神様を懐かしがるっておかしいけど、それ以前の人を私は覚えてない。だから、私の1番古い記憶の人は、創造主なのだ。


人じゃなくて神様だけど。


「はい。お久しぶりです、創造主様。猫神殿では良くしてもらって、楽しく過ごしております。」


安心しちゃって、何故か涙も出そうになる。

見た目も声も性格も穏やかなんだよね、創造主。


「ふほほ、聞いておるぞ。お嬢さんのお陰で、猫布団が増産されて、遂にワシも手に入れることができたのじゃ。いや、あれはよいものだ。ありがたいのぅ。」


「創造主様、順番待ちされてたのですか!」


えー!そんなことある?


創造主が優先とか、創造主なら何でも作れるとかありそうだけど。


「猫神殿の猫達の毛を使って、猫達が作った布団が欲しくての。やはりな、一生懸命に手間をかけて作った、気持ちがこもってるものが一番じゃよ。」


うんうん、そうですよね。すごく大事。なんでも力で創り出しちゃえ、とかではない神様で感動する。


そういえばティムくん隣にいるわ、と思ってチラ見すると、こちらは感極まって、無音で目から水を流している。

そりゃ嬉しいよね。


でも、ぷるぷる震えてるし、これじゃお礼も言えそうにないな。


「猫神殿のみんなも頑張ってたので、そのお言葉を頂けて、ここにいるティムくんもすごく感激してますし、みんなも喜ぶと思います。ありがとうございます。」


私が言うのも変だけど、代わりにとりあえず伝えたよ、ティムくん!


ティムくんは、ぎぎぎぎと音が出そうな動きで、顔を私に向け、私が頷くと、泣き笑いの顔になって、創造主に頭を垂れた。


「ふほほ、神官との信頼関係も申し分ないようじゃな。」


というと、創造主は軽く手を振った。

すると私たちの後ろに、白いふわふわのソファが出てくる。


「少し話をしようと思うのでな、遠慮なく座るといい。」


と示され、慎重に座る。


なんといっても、油断するとぽふんぽふんっと跳ねてしまいそうな、ふわふわ感なのだ。

雲なのかな?雲を触ったことないけど、雲を少ししっかりさせたらこんな感じかも。


よし、いつか聞こう。


「では、お嬢さんにとって大事な話をしようかの。」


ついに、私の岐路となるであろう話がでてきた。何を言われても動揺しないようにしないと。


自然に両手に力が入る。


「猫神殿には、この世界の知識を得るために行ってもらったのじゃが、前の世界では存在しなかった知識もあったじゃろう。話を聞くだけで、怖い思いも嫌な思いもしたかもしれん。猫神殿で猫達と暮らすだけなら平和だが、残念ながらどの世界も、綺麗事だけではやっていけないのじゃ。」


邪神とかのことを言ってるのね。

私は、分かってますという風に、頷く。


「料理や掃除、庭仕事も熱心に習っていたと聞く。それは、一人で下界で暮らすために身につけたのじゃろ。」


バレてた。


そうなのだ。あの子のそばにいれずに、一人で暮らすことになった時に備えて、何か手に職をつけようとしたのだ。


「はい、その通りです。一時的に、この世界で一人で暮らしていけるのか不安になり、たくさんのことを教えてもらいました。今は、蓄えた技術は、どんな時でも身を助けるはずだから、教わって良かったと思っています。」


あごひげを撫でながら、真剣に聞いてくれる創造主。


「ほう、そうかそうか。じゃとすると、アレかの。

今後の道は、それを活かして平穏に生きていくということかの。」


創造主の目がキラリと光る。

意地悪そうな色が見え隠れする。


けれど、そんな誘導には屈しない。

私は自分に正直に言うって決めてる。


どんな返事が来ようと、気持ちを伝えてみるんだ。


「それに関しては、一瞬迷いは確かにありました。ただ、私の希望は……これから先、一緒にいたいのはあの子です。あの子と共に、苦楽を乗り越えていきたいです。

あの子の成長を、これから見ていきたいのです。私の居場所は変わりません。」


思いを一息で言い切った。


私の気持ちを凝縮させた言葉は、創造主にはどう感じられるのだろうか。

揺らぐことなく、真っ直ぐ前を見つめる。


すると、創造主は、ふぅ、と息を吐いた後、穏やかな笑みを浮かべた。


「まぁ、分かっておったよ。お嬢さんの気持ちはな、きっと変わらんじゃろうなと。

それだけエルトアの事を思ってくれていて、有難いことじゃ。これからも、あやつのことを頼むぞ。」


「……。」


許可出た?出たの?嬉しい!


あれ?あの子に聞かなくてもいいの?


「あ、ありがとうございます。ただ、あの子がどう思うのかと、心配なのですが。」


ふふっと笑いながら創造主は魔法の言葉を紡ぐ。


「あやつの気持ちは、分かっておるでの。なんせこう見えて、ワシ親じゃし。まぁ、今からエルトア呼ぶから、会って話してみなさい。」


えええ!どうしよう。


今から?あの子来るの?

会えるの?会いたい!


いや、どっちだろ。いや、会う!


手を握りしめて、震えを抑えつつ伝えた。


「会わせてください。」


と。

お読みいただき、ありがとうございました。


次回は【第十一話 あの日々は僕の宝物】です。

これまで語っていたのは、ゆの。

次に物語を届けてくれるのは──誰でしょうか?


第一章【第一の扉 あの子の隣が私の居場所】は、全16話で完結となります。

最終話まで、1日1話ずつ、夕方に投稿していく予定です。

どうぞ最後まで、お付き合いいただけたら嬉しいです。


感想やレビューをそっと残していただけると、とても励みになります。

お忙しい方は、評価を押していただけるだけでも力になります。


これからも、よろしくお願いします。


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