表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/21

(二) 勧進相撲


挿絵(By みてみん)



 さて太兵衛(たへえ)佐吉(さきち)、仲良しの二人が十七歳になったある日のこと。


 伊美(いみ)の村祭りが行われ、村の若者たちによる奉納相撲(ほうのうずもう)が催されました。メインイベントです。


 この相撲に勝ち残った者は、夢を早く叶えることができる。そういう言い伝え、つまりジンクスがありました。



「よーし、佐吉。どっちが先に夢を叶えるか、相撲で勝負だ」


「望むところだ。太兵衛には負けないぞ」


 太兵衛と佐吉も、喜び勇んで相撲大会に参加します。


 二人はとにかく強い強い。次々に村の若者たちに勝利して、決勝戦は太兵衛と佐吉の一騎打ちと相成りました。



「佐吉、オイラは絶対に負けないぞ。手加減なしだ」


「もちろんだとも、太兵衛。オレも全力で戦うぞ」



 二人は互いの夢を賭けて、待ったなしの大勝負に挑みます。


 はっけよーい、のこった! のこった、のこった。


 右を差せば左に切り、左に寄れば右へ打つ。二人は接戦、負けるな押し切れ、負けるな投げろ、会場は大盛り上がりです。


 技の応酬が繰り広げられ、勝負は白熱したのでございますが、そのうち土俵の砂が舞い、太兵衛の両眼に砂が入ってしまいました。



「うわっ、何も見えない」


 思わず目をつむり、視界が真っ暗になった太兵衛。


 その隙を見逃さなかった佐吉は、勝負を決めようと、一気に押し出しにかかります。


 土俵際で踏ん張った太兵衛。佐吉の押す力を利用して、ええいっ、と土俵の外へとうっちゃる。佐吉も必死にしがみつく。



 どっしーーん。宙に浮いた太兵衛と佐吉は、もつれながら両者同時に土俵の外へと落ちました。


 さあ、勝者はどちらだ。うわああと上がる歓声。


 ところが、その歓声がピタリと止み、場はしんとした静寂。その中でただひとつ、ぐわああああっ!と叫びの声が上がります。


 太兵衛の絶叫でした。佐吉のまわしに指を絡めたまま地に落ちた太兵衛の左腕と指は、その衝撃で複雑に折れてしまったのです。



 さらに、一方の佐吉は、頭から地に倒れて動かず黙ったまま。村の者たちが心配して身体をゆすったところ、打ちどころが悪かったようで、そのまま帰らぬ人となっていたのでございます。


 そして、太兵衛の破壊された左腕の治りは悪く、細かい技術はできなくなり、指物職人としての腕は絶望的になりました。


 二人の若者の夢は、一瞬にして奪われてしまったのでございます。



 しかも太兵衛は、対戦相手を投げ殺したということで、役人に連行されるという事態になり、奉行所の裁きを受けることになりました。


 太兵衛は勾留された牢の中で、ずっと泣き崩れています。左腕の激痛よりも、もっと大きな痛みです。



「オイラが……、オイラが、佐吉の大事な夢を壊してしまった。オイラが、世の人の命を救いたいという佐吉の命を、奪ってしまったんだ……! うぅ……」



 太兵衛の鳴き声は、いつまでも役所の牢に響いたのでございます。




(つづく)




※ぜひ、読者の皆さんの感想を聞かせてください!

 また面白いところがあれば、高評価いただけると嬉しいです。(作者)







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ