表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/92

75 昇格

 アカデミーのギルドでは、冒険の前にレベルを測る魔水晶に触れる規則になっている。

 それは生徒たちに、無茶な挑戦をさせないための保険だ。


 レオさん、ウィル君、ミハイルさん、そして私の順で魔水晶に触れたんだけど、なんと全員「測定不能」。

 受付の子が目を丸くしてオロオロし始めた。


「え、ちょっと、待っててください!」


 しばらくすると、カウンター脇のポータルからきちんとした服を着た三十代くらいの男性が現れて、魔水晶をじっくり調べた後、落ち着いた声で話しかけてきた。


「私は皇都のギルド長、テシムと申します。このケースはあのブリュンヒルドさん以来で。もしよろしければ、みなさん、ポータルで本部までご同行いただけますか?」


 テシムさんが丁寧なのは、きっとレオさんやウィル君、ミハイルさんが一緒だからだよね。

 まわりの生徒たちがざわざわ騒ぎ始めたから、私たちは急いでポータルに飛び込んで移動した。




 皇都のギルド本部はすごい活気!

 冒険者たちがゴチャゴチャと行き交ってる。


 私はテシムさんに連れられて、みんなと一緒に二階のギルド長室に通された。

 立派なテーブルに座ると、ちょっと緊張した。


 テシムさんが奥に下がると、レオさんが静かに口を開く。


「魔水晶のことを忘れていたよ。あれは確かレベル49までしか対応してないんだ」


 ミハイルさんは天井を見上げ、どこか遠くを見るような目で言った。


「この部屋に通された生徒が、あのヒルダさん以来なら、このシャンデリアも見ても感慨深いですね」


 レオさんはミハイルさんにうなずき、私の方を見てニコッと笑った。


「エストさんの支援があったからこそ、ここまで強くなることができました。全員でここに来れたのも良かったですし、エストさんが一番上がりましたね」

「あ、いえいえ、みんなの頑張りのおかげです。私は前に出て戦ったわけでもないのに、どうしてこんなに上がったのか、わからなくて」


 そう戸惑いながら答えると、三人は温かく微笑んでくれて、ちょっとホッとした。


 その間に、テシムさんが一人の受付嬢を連れて戻ってきた。

 彼女がテーブルに虹色の水晶玉を置くと、自己紹介が始まった。


「アイリスと申します。この水晶なら、みなさんのレベルが分かるはずです」


 アイリスさんに促されて、まずレオさんが水晶に触れ、次にミハイルさん、ウィル君、そして私も続いた。


 すると、テシムさんもアイリスさんも目を丸くして驚いた様子。

 最初に口を開いたのはテシムさんだった。


「55、53、57、60!? こんな高レベルは初めてです。ブリュンヒルドさんでさえ、レベル50だったのに!」


 アイリスさんが慌てて戸締りを確認しに行った。


 私たちは顔を見合わせ、「どういうこと?」みたいな表情を浮かべた。

 だって、ヒルダのレベルが私たちの知ってるものと全然違うんだもの。


 最初にテシムさんに質問したのはミハイルさんだった。


「そんな、ヒル⋯⋯、ブリュンヒルドさんでレベル50って。では白姫ロゼリアは一体いくつなのですか?」


 アイリスさんが答えた。


「白姫様もレベル50です。それがレベル限界のはずなのに、みなさんはどうやってその限界を突破したんですか!?」


 その瞬間、私の中でピンときた。

 スキルの【隠蔽】を使えば、アカデミーの魔水晶をごまかせたんだ。

 レオさんやウィル君も同じことを思ったみたいで、口にするか迷ってる様子だった。


 するとミハイルさんが「もう一度測りますね」と触れると、水晶に表示されたレベルが50に変わった。

 それを見たテシムさんがクスッと笑う。


「なるほど。ミハイル公子のおかげで謎が解けました。つまり、我がギルドのSランク冒険者たちは、レベルを50に偽っているわけですね」


 その言葉に、アイリスさんがハッと振り返る。

 テシムさんは話を続けた。


「このままみなさん、Sランクに昇格となります」

「でも、私はDランクですよ? みんなのBランクとも全然違うのに」

「エストお嬢様をSランクに推さない理由がありませんよ」


 アイリスさんが慌てて引き出しをいくつか開け、テシムさんに伝えた。


「Sランク用のギルドカードの予備が一枚しかありません!」

「カードの発行より、書類を優先してください」


 そして私たちの方を向いて、こう続ける。


「もしよろしければ、このまま登録を進めますが、問題ありませんか?」


 私たちは顔を見合わせてうなずいた。

 すると、テシムさんの顔がその日一番の笑顔になった。




 私たちがSランクに昇格したことで、アカデミーでは大騒ぎになった。

 学園長室に呼ばれた私たちを待っていたのは、なんとバルマード様だった。


「Sランク昇格、おめでとう! 君たちの清々しい笑顔が見られて、私も嬉しいよ」


 その言葉が心に響いて、私たちはそろって感激で胸がいっぱいになった。

 バルマード様の隣にいたローゼさんがコーヒーを淹れてくれて、私たちはそれぞれ席に着く。

 香ばしいコーヒーの香りが部屋を満たし、カップを手に持つと、なんだか少し落ち着いた。


 学園長がバルマード様に自分の席を譲ろうとしたけど、バルマード様は「君の席に座るわけにはいかないよ」と笑って、私たちのテーブルに腰を下ろした。


 バルマード様は最初に、レオさんに話しかけた。


「レオ君がSランクともなれば、君の周りで騒いでた連中も、少しは大人しくなるんじゃないかな」

「バルマード様にそう言っていただけるだけでも、頼もしい限りです!」


 次に、バルマード様はミハイルさんを見た。


「ミハイル君がレオ君の友人でいてくれるのは、本当にありがたいよ」

「そのように言っていただけるだけで、光栄です!」


 ミハイルさんが感動で声を震わせると、バルマード様はコーヒーを一口飲んで、話を続けた。


「グランハルト卿にも会ってきたけど、聖女アンリエットには驚かされたよ」


 その二人の名前を聞いて、つい口が滑った。


「皇都にあんな素敵なところができて、本当によかったです! アンリエットさんは、あんなに輝いていますし、グランハルトさんも頑張ってるみたいで」


 すると、ローゼさんが穏やかに微笑む。


「お二人とも熱心に修行されてて、私も嬉しく思います」


 え、あの激しい修行を二人も!?

 一瞬、私たち全員の表情が引き締まった。


 そんな中、バルマード様が私に目を向けた。


「エストちゃん、まずは君の意見を聞きたいんだけど。私はヒルダにレオ君の護衛を頼もうと思ってるんだ。どうかな?」

「ヒルダが納得してるなら、だんぜん賛成です!」


 信頼できる二人がレオさんのそばにいてくれたら、こんな心強いことはない。

 レオさんは驚いたように答えた。


「そこまでしていただけるとは⋯⋯。ただただ、感謝しかありません」


 バルマード様は学園長の方を向いて、「このことは内緒でね」と言うと、学園長は「はい、もちろんです!」と何度もうなずいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ