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ハズレ令嬢に転生したけど、悪役令嬢と親友になって活躍したら聖女に持ち上げられました  作者: アヤコさん
第2章 聖女の兆し

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33 みんなの工夫

 この世界では、教会の神聖魔法が医学の発展を妨げてるんだ。

 そんな便利な魔法があったら、それに頼るか神頼みしかなくなるのは当然だよ。


 私の表情が少し曇ったように見えたのか、ミハイルさんが盛り上げようと楽しげに話し始めた。


「エストさんが考案したあのフライドポテトですが、あれがもうキンキンに冷やしたビールに最高に合って、私を含めた多くの者が愉快な晩酌を楽しんでますよ。じゃがいもがまさかあんなに美味いとは、と南方への買い付けに向かわせているんです」


 ミハイルさんは栽培も簡単なじゃがいもを帝国や隣国に広められたらどんなに素敵だろうって、私に熱く語ってくれた。

 その言葉に勇気をもらって、気がつけば笑顔にさせられてた。


 するとウィル君が何かを思い出したように口を開く。


「料理長に作ってもらったデミグラスソースのコロッケがもう絶品でした。お父様も姉さんも喜んでいましたよ。やっぱり広く普及させるにはレシピがとても大事なんですね! じゃがいもは、需要のない今なら安価で手に入るので、いつか名物料理になりそうです」


 レオさんがうなずいた。


「将来の需要を見越して、ミハイル君には種芋の買い付けを頼み、私とウィル君は研究室でレシピを試作中です。ウィル君が才能を発揮して、ホクホク感が食欲をそそるポテトグラタンや、カリカリ感がたまらないハッシュドポテトなどを考案してくれました」


 何の予備知識もなしにそんな美味しいものを作れるなんて、すごいよウィル君!

 あー、そんな話聞くと食べたくて仕方なくなっちゃうわ。


「ただ一般に広めるための、フライドポテトのような分かりやすいレシピがまだ思い付かなくてですね。何の案も出せてない私が不甲斐なくてただ歯痒いです。⋯⋯おっと、つい心の声が漏れてしまいましたね」


 レオさんはそう明るく振る舞うけど、その表情が僅かに曇る。


 私に何かできることはないかと思った。

 真剣に考えをまとめて席を立つと、レオさんを景色の良い窓際へと連れて行って、こっそり耳打ちをした。


「なるほど、そんな方法があったのですね」


 レオさんの顔がパーッと花を咲かせるように明るくなる。

 その笑顔につられて、私も気持ちを温かくさせられる。


 伝えたレシピはいたって簡単なじゃがバター。

 鍋に水を入れて25〜30分、火が通るまで茹でて完成。

 バターがない時は、塩をパラパラするだけでホクホクで食べたくなってくる。


「本当に私が考案したことにして良いのですか?」


 レオさんが申し訳なさそうに言うけど、ただ茹でるだけでレオさんの笑顔が見れるなら、お安いご用ですと私はうなずく。


「早速、調理してみて良いですか?」

「はいっ、私もつい食べたくなっちゃいました」


 レオさんが最高の笑みをくれると、そのまぶしさに魅了されそうになる。

 ここはそういうシーンじゃないとグッと堪えてると、ウィル君とミハイルさんも私たちの内緒話が気になって集まってきた。


 その後、調理室でレオさんがじゃがバターだけでなく、ポテトグラタンやジャーマンポテトまで手際良く完成させると、四人でテーブルを囲む。


 初めて料理する男性の背中を見たけど、レオさんの料理の腕はシェフ並みと言っていいくらい!

 私たちは畑のご馳走を存分に味わって、笑顔と満足感に溢れた幸せな時間に包まれた。




   ◇◇◇




 私はその後も、よくマクスミルザー公爵家に通っていて、ウィル君やレオさんとの関係も少しずつ深まってきた。


 最初はローゼさんにおんぶに抱っこ状態だったけど、勇気を出してアカデミーでのダンジョン攻略も始めたんだ。

 理由はあの孤児院のアランやミレット、そしてたくさんの子供たちがケガや病気になった時に、少しでも助けになれるようにと思ったから。


 ある日、レオさんやウィル君、それにミハイルさんが揃って「エストさんのダンジョン攻略を手伝います」って申し出てくれた。

 でも私は正直に「一人でできるところまでは頑張ってみたい」って話した。


 レベル差がありすぎると、強い人にはほとんど経験値が入らないらしくて。

 私と三人では、きっとまだ大きな差があると思うんだよね。

 一緒に行くからには、みんなで勝利を分かち合いたいもの。


 その後で協力してもらうことになったんだけど、そんな私を芯が強いと三人は感心してくれたみたいで⋯⋯。

 過大評価すぎて、ちょっと恐縮してしまう。

 

 公爵邸の庭園を気持ちよく眺めていると、レオさんがじっとこっちを見つめてくる。

 季節はまだ春なのに、鮮やかに花々を照らす陽気はまるで初夏みたいだ。


「どうかされましたか、レオさん?」

「ええ、ひまわりのような笑顔を咲かせたエストさんに、つい見とれてしまいました」

「もうっ、そんなお世辞言わないでください。本気にしちゃうかもしれないじゃないですか」


 ふう、危うくその気にさせられそうだったわ。

 そういえばそろそろ訓練のお時間よね、補助の魔法をかけなくっちゃ。


 私は着実に神聖魔法を成長させていた。


 レオさんがバルマード様との訓練に向かう前に、継続的にケガや体力を回復する『リジェネレーション』の魔法をかけると、「稽古の効率が飛躍的に上がり、助かります」と微笑んでくれる。


 そのたびに感謝されるから、ちょっと照れてしまうけど。

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