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24 生徒会への誘い

 能力測定を終えて廊下に出ると、そこにはローゼさんとアカデミーの英雄ヒルダが待っていてくれた。


 そのヒルダのまわりには、まるでスターを囲むみたいに在校生が集まってて、その目に宿る羨望がすごい。

 新入生たちも「ブリュンヒルド様だ!」って感じで次々加わって、廊下が一気に賑やかになる。


「もしかしてあの長い時間、待っていてくれたんですか?」

「久しぶりにヒルダと話していたら、時間なんてあっという間でしたよ」

「私もローゼお嬢様とお話しできて楽しかったです」


 二人のほんわかした雰囲気から、その仲の良さが伝わってくる。


 でも、となりに立ってみてわかったんだけど、ヒルダに向けられる周囲の熱い視線が、まるで自分に向けられているようで、気になってしょうがない。


 それなのにこの二人ときたら、私たち以外誰もいないみたいな自然体で、大人の女性って感じがすごい。


 二人とも注目されるのに慣れてるんだろうなって、少しうらやましく思ってたら、ローゼさんがニコッと笑うと、周囲の音がピタっと消え、まわりのことがまったく気にならなくなった。


「これも何かのおまじないなんですか?」

「ただの防音魔法ですよ。それはともかく、エストさんの秘密の力が誰にも知られる事なく、無事に能力測定が終わって良かったじゃありませんか」

「ちょ、ヒルダに私の神聖魔法の話をしたんですか?」

「私はローゼお嬢様からは、何も伺ってはおりませんが」

「ヒルダにだけ、教えちゃいますね。実はエストさんは全ての神聖魔法を習得されていて、こう強烈なピンチが訪れた時に颯爽とその究極魔法の数々を駆使して、英雄的に活躍する予定なんです。私もそこに一花添えられたら、さぞ愉快なことだと思います」


 って、ローゼさんが喋っちゃった。

 それを聞いて、ヒルダはなんでそんなに平然としていられるの!?


「なるほど、ローゼお嬢様が前からおっしゃってるバルマード様ごっこですね。それをお二人で格好良く決めるために、お嬢様が神聖魔法を全習得したというわけですね」

「えっ、二人の間では全然たいしたことない話だったりするの?」

「ローゼお嬢様と一緒に鍛錬していれば、いろんな非常識もあっという間に当たり前になるので、お嬢様が一夜で大聖女になったと聞いても、まったく不思議には感じませんよ」

「わ、私はローゼさんから一冊の本をもらって覚えただけだよ。上位の魔法どころか、中くらいの魔法だって、まだ全然使えないんだから」


 私の言葉に二人は息があったように目を合わせて、こう言った。


「それはもう、レベル上げしかありませんね!」

「⋯⋯ヒルダまで、レベル上げ大好きさんだったのね」

「最近はお嬢様のやんちゃ振りもすっかりおさまって、こういう話は縁遠いものかと思っていましたが、神聖魔法を全て習得したということですので、これからは聖女のように強くなっていかれるのですね」


 ヒルダの前ではあの無茶苦茶だったアホ姫も、やんちゃの一言で片付けられてしまうのね⋯⋯。


「まだ初日だから、ゆっくり頑張るね」

「今日はなんだか楽しい気分にさせられて、ついおしゃべりになってしまいました。二人がいるから、そんな気持ちになるのでしょうね」


 私たちがにこやかに話していると、そこへレオさんとウィル君がやって来た。

 で、なぜかソフィアとセシリアまでついてくる。


 私はローゼさんとヒルダに背中を押されるように、彼らの前へ出た。


「エストさん、ぜひとも生徒会に入っていただけませんか? 研究棟であなたに教わったことの普及法を話し合っていますが、きっと勲章ものの功績になると思います。いえ、私はあなたと一緒に活動出来ればそれだけでいいのですが」


 レオさんが熱い眼差しを向けて、ウィル君も優しく頷いてくれる。


「ええ、僕もエストさんとなら上手く生徒会として、このアカデミーをまとめてられるような気がするんです。副会長専属書記なんていかがですか?」

「ウィル君、役職を出すにはまだ早いと思うんだ」


 私が返事をする前に二人が議論しはじめると、彼らの背後からソフィアとセシリアが顔をのぞかせる。


 って!

 二人とも、あからさまに敵意むき出しでこっちを睨むのやめてよ!


 ソフィアがサッと手を挙げ「私も生徒会に入りたいですっ!」と振り返ると、ウィル君が頷いて、彼女にパッと笑顔の花が咲いた。

 セシリアも「私も入りたいです!」って続くと、今度はレオさんが頷いて彼女の顔が恥じらう乙女に変わる。


 その直後、ソフィアとセシリアがギュッと握手して、「お前だけが特別だと思うなよ」って視線をガンガン飛ばしてきた。


 仲がいいのは原作そのままなんだけど、あなた達のそれは完全に悪役同盟にしか見えないわ!


 生徒会のメンバーがやや微妙になってきた。

 ⋯⋯なんて思ってると、ウィル君が心配そうに近づいてくる。


「返事は急がなくても大丈夫ですよ。レオさんと意見が合って、声をかけようって言ったのは僕なので」

「もちろん喜んで参加させていただきます! みなさんよろしくお願いします」


 私が勢いよく答えると、ウィル君とレオさんの顔が明るくなって、つられて私も嬉しくなる。


 ソフィアとセシリアの反応は見ない!

 見たら負けだ!


 でも、そのやり取りのおかげで、ギャラリーがザワザワと集まってきて生徒会志願者が溢れて大変なことに。


 ウィル君が「志願の書類があるのでそちらでお願いします」ってやんわり仕切ると、レオさんが「書き終わったらこちらの箱へ入れてください」って手際良く導いて、すぐに落ち着きを取り戻したけど。


 それで私の役はどうなるかって話になると、レオさんが「ぜひ生徒会長補佐に!」って熱く語り、ウィル君は「エストさんは副会長専属書記です」って譲らず、結局その日は保留に。


 保留になった瞬間、ソフィアとセシリアに「エストは無職」ってニヤニヤバカにされたけど。

 そしたら彼女たちは、『盛り上げ役員』って謎の役員に。


 レオさんとウィル君がソワソワした顔で誤魔化してるのを見れば、苦し紛れなのが丸わかりだ。

 私がそんな役は嫌だーって思ってたら、二人揃って「やったー!」って大はしゃぎ。


 ⋯⋯うん、精一杯頑張ってね。

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