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23 能力測定

 アカデミーの講堂は美しい神殿のようで、厳かな雰囲気が漂っていた。


 入学式を終えた新入生たちが学園長のいる壇上の前に整列していて、私はその後ろの方に並んでいる。


 能力を映し出す魔水晶に触れるのは、自分に合う科目を選ぶ目安なんだそうで。

 どんな才能があっても、何をえらぶかは自由らしい。


 と、前の方がやたら騒がしくなってきた。


「レベル1で神聖魔法を習得しているだって!」


 教師の一人が大声を上げ、学園長の顔がほころぶのが見えた。


 騒がれてるのは淡い緑髪の女子生徒だ。

 私はすぐにそれが誰かわかった。


 『レトレアの乙女』のヒロイン、ソフィアだ。


 別の教師が興奮して続ける。


「これはもしや『聖女』候補では! 教皇様がお喜びになられるぞ」


 ちょっと待って、この流れって勝手に人の将来を決めつけてない!?

 そんなに騒いだら、ソフィアが神聖魔法を選ばなくちゃいけなくなっちゃうじゃない。

 突然のことに、ソフィアは事態を飲み込めないようで可愛い顔が怯えてる。


 ローゼさんのいうとおり魔法を隠しておいたのは正解だったけど、でもそんなに大声で言いふらすのは反則でしょ!


 このまま悪徳教会に無料奉仕だなんて絶対に嫌だよね。

 ソフィアがかわいそうだし、「えらぶのは自由」だって言いに行こう。


 そう思った瞬間、生徒会の列にいるレオさんが席を立った。


「いくら神聖魔法を覚えているからって、聖女候補と言うのは早計でしょう」


 学園長がうなずくと今度はウィル君が続ける。


「僕も最初から初級の神聖魔法は覚えていました。もしかして僕の場合は、理事長であるお父様に気を使ったわけではないですよね?」


 二人はソフィアの元に向かうと、彼女を庇うみたいに教師たちの前に立ちはだかった。

 白馬の王子様が二人も駆け付けたみたいで良い雰囲気になってる。


 このシチュエーションならヒロインのソフィアも夢心地かも。

 やっぱり恥じらう乙女の顔になってるし。

 羨ま⋯⋯、良かったねソフィア!


 学園長も場をなだめようと降りてくる。

 結局ソフィアの件は生徒会預かりになって、本人は満足そうだった。


 そしたらレオさんとウィル君が私の方に振り返って、二人同時にウインクしてきた!

 いきなりそんなの、不意打ちだって!


 あーでも、生徒会って頼りになりますよ。みたいなアピールかも知れない。

 ちょっとまわりを見てみると、ドレスの子も制服の子も頬を真っ赤にしてる。


 あれ!? 今、ソフィアに睨まれた?

 彼女の鋭い視線がグサッと刺さった気がしたけど、ま、まさかね。


 その後はほとんどの生徒は何事もなかったみたいに、魔水晶に触れては後ろに下がっていく。

 次に騒がれたのは少し背の高い女子生徒だった。


「レベル15だって! 中級冒険者や熟練の騎士の実力じゃないか。君はすでに冒険者ギルドに所属しているのかい?」


 彼女は首を振って、実家の農業を手伝うためにモンスターと戦っていたって説明した。

 学園長がその心がけを褒めると、一部の教師や身なりの良い生徒たちが彼女を勧誘しはじめた。


 レベル15でそこまでなの!?

 って、将来を決めるのは自由だっていってる上でいきなり誘い始めるって。


 レオさんとウィル君がすぐに彼らを解散させるけど、自由なのは欲まみれの教師や貴族の生徒ばっかりじゃない。


 私は無駄に35もあるレベルを、すぐに1へと書き換えた。

 レベルなんて誰かと比較したこともないし、自分で上げたものでもないから、その数字の意味にまったくピンとこないでいると、ついに私の番がまわってきた。


 ドンと置かれた50センチほどの魔水晶に手を当てる。

 あれほど騒いでた教師たちは私には無関心で、学園長だけが声をかけてくれた。


「レベル1でスキルなしは伸び代しかないということだから、これからの努力に期待してるよ、エスト君」


 教師たちは「早く後ろに譲れ」って感じの、ハズレを見るような視線を向けてきた。

 そんなガッカリ反応にムキになった私は、触れてた手に力を込める。

 その途端、急に魔水晶が真っ赤に染まって、まぶしい光を放ち始めた!


 慌てて魔水晶に振り返った教師たちが同時に叫ぶ。


「この反応、もしや英雄級!?」


 やばい! 私、何かやっちゃった!?


 学園長が魔水晶に触れるとすぐ元の色に戻って、興奮する教師たちに肩を叩いた。

 いつの間にかそばに来てたウィル君が、何気ない様子で魔水晶を見つめる。


「これは間違いなく誤動作ですね」


 レオさんも隣に来て、念を押してくれる。


「先生方が気になるようでしたら、もう一度別の魔水晶で試してみますか?」


 アカデミーのヒエラルキーの上位にいそうなウィル君とレオさんの言葉に、教師たちを含めた周囲のざわつきが一瞬で静まった。


 学園長が私の耳元でこっそり囁いてきた。


「さすがはブリュンヒルド君が推す、期待の新人だねっ」


 私が「あはは」と頭をかいてごまかしていると、生徒会の列からソフィアの激しい嫉妬の眼光が飛んできて、ビクッと身体が反応した。


 ソフィアって、そんなキャラなの!?

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教師ダメダメ、でもゲームの主役、もっとダメそう。
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