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22 思いがけない再会

「セシリアさんとは関係のない方ですので、道を開けてくださいませんか」


 ローゼさんとセシリアの間に見えないビリビリが走ってる気がする。

 うっ、セシリアがこっちを睨んできた!


「もしやあなた、ウィル公子を狙って彼女に取り入る泥棒ネコの一匹じゃありませんこと?」


 ど、泥棒ネコって!


 セシリアが嫌味たっぷりに笑う。


「それは口が過ぎるのではありませんか? 私の友人にそのような暴言、許しませんよ!」


 ローゼさんがキリッと返す。

 おお⋯⋯ローゼさんが戦闘モードだ!


 でも私だって、ローゼさんばかりに相手させてる場合じゃない。

 言われっぱなしは我慢ならないって。


 セシリアの取り巻きの一人が私の方を指差す。


「セシリア様。あの方、奇行で有名なスレク男爵令嬢じゃありません?」


 き、奇行で有名なんかい!

 ますます腹が立ってきた。


「見覚えがあると思えばそうスレク男爵令嬢でしたね。ちょっと品のない見た目だけは及第点のお嬢さん。ウフッ、取り巻きの質が落ちましたわね」


 セシリアが鼻で笑いながら嫌味を重ねてきた。

 たとえアホ姫の前科でも、ローゼさんまで巻き込んで嫌味たらしく笑うなんて許せない!


 私が噛みつこうとした瞬間、ローゼさんがさっと手を伸ばして制止すると、セシリアたちに鋭く放った。


「そうですわ。私やウィルとも小さい頃からの幼馴染で、家族ぐるみでお付き合いのある大切な友人のエストさんですが、それが何か? これがウィルの耳にでも入れば、あなた方に向けられていた陽だまりのような笑顔も、軽蔑の眼差しへと一変することでしょう」


 その言葉にセシリアも取り巻きたちも一瞬で凍り付いた。

 まるで群れるハイエナに立ち向かう獅子みたいで、カッコよすぎるよ!


 そんなやりとりの最中、女子生徒たちの黄色い声が近づいてきて、まわりの生徒たちもざわつき始めた。

 そして現れたのは制服姿の黒髪の男子生徒。

 黒髪に長身のイケメンって言ったら、アカデミーで思い当たるのは一人しかいない!


「これはローゼさんにセシリアさん。これから新入生たちへの挨拶があるのですが、みなさんも講堂へ向かわれるのですか?」


 出たーっ!

 攻略対象人気ナンバーワンの座をウィル君と二分する、レオクス皇子様だ!


 怯みまくってるセシリア一党にくらべて、ローゼさんは堂々としてる。


「ごきげんようレオクス生徒会長。こちらは友人のエストさん、スレク男爵令嬢を案内しているところです」

「おお、あの剣聖スレク様のお嬢さんですね。でしたら私にもぜひ、ごあいさつをさせていただきたい」


 レオクス皇子がこっちに近づいてくる。

 直視するのも眩しい彼に、私は緊張して息を整えた。

 ちゃんとお返事できるかな⋯⋯。


 するとレオクス皇子が耳元で囁いてきた。


「お久しぶりです。レオですよ、エストさんっ」


 えっ! レオさん?

 レオさんがレオクス皇子だったの!?


 彼はこっそり、普段は水魔法で変装してるって教えてくれた。

 たしかにこれまで会ってた時は、青髪で顔も違っていたから、言われなければ気付かなかった。


「お久しぶりです、レオさん!」


 嬉しさのあまり、つい大声で「レオさん」って気安く呼んじゃった!

 ローゼさん以外の全員が、私を見てポカンとしてる。

 あのセシリアでさえ、鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔になってた。


「はい、レオと呼んでください。私もエストさんと呼ばせていただきますね!」


 彼が優しく話しかけてくる。

 第一皇子なのに全然偉ぶってなくて、ローゼさんもそのことを知ってたみたいに頷いてくれる。


「エストさん、アカデミーでもぜひよろしくお願いします」

「こちらこそ、ぜひよろしくお願いしますっ!」


 まるで公爵邸での出来事を再現したみたいな雰囲気に、私は穏やかな気持ちにさせられた。

 バルマード様と約束してからは、お屋敷には毎日のように通わせてもらってるから、レオさんとも親しくさせてもらってる。


 セシリアたちはバツが悪そうな顔で、レオさんに軽く会釈してそそくさと立ち去って行った。

 私がレオさんの知り合いだとわかったとたん、まわりの生徒たちの視線が急に優しくなった気がする。


 ローゼさんにもレオさんにも、後でちゃんと感謝の気持ちを伝えなくちゃ!

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