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19 アカデミーの裏表

 ローゼさんと校舎を歩いていると、生徒たちとすれ違う。


 だけど女子のほとんどがドレス姿で着飾っている。

 男子もいかにも貴族って感じの服装で、ちょっと近寄りがたい雰囲気だ。


 それに特に女子の方から、私とローゼさんに浴びせられる視線が何だか不快だ。

 嫌悪感というかチクチクした敵意を感じてしまう。


 するとローゼさんが足を止めて、私の疑問に答えてくれた。


「服装や視線が気になりますよね。アカデミーは昔、貴族の子女だけが入れる学舎だったんです。お父様が理事長になってからは市民にも門を開いたため、頭の固い貴族たちは制服を着ないことで『自分は貴族』だと示しているのです」


 つまり、制服を着てる私たちをバカにしてるってこと?

 それだけじゃない。

 ローゼさんを筋違いに憎んでるみたいで、一緒にいる私まで平民の取り巻きだと思われているらしい。


 平民とか貴族とか、そんなの関係なく同じ生徒なのにどうして仲良くできないんだろう。

 この世界に転生したばかりの私の感覚がおかしいの?


「私のせいで変な視線を集めてしまい、なんだか申し訳ありません。ウィルとは違い、私はお父様の後継者ではありませんし、いずれはマクスミルザー家を出る立場です。帝国には三人の皇子に、我が家以外の三公爵家の公子もいらっしゃいます。その気がなくとも誰かを狙っていると誤解されているようで。⋯⋯と、私の話はこれくらいで今日はエストさんに素敵な思い出を持って帰って欲しいんです」


 ローゼさんはこんなに良い人なのに。

 ⋯⋯そういえば、『レトレアの乙女』では、悪役令嬢のポジションだったっけ。


 こっちを睨んでくる貴族令嬢たちに、ローゼさんの素晴らしさを説教してやりたい衝動に駆られる。

 正座させて足が痺れて悶え苦しむまで語り尽くしてやりたい。


 ローゼさんのことを含めて、アカデミーの雰囲気ってゲームのイメージと全然違う。

 ここは本当にあのゲームとは別の世界なんじゃないかって思う。


 だって、ゲームじゃあんなに煌びやかだった世界がこんなにも俗っぽくて、教会に至っては金に汚い守銭奴だなんて。

 上辺だけそっくりな異世界に転生したんだと考える方がしっくりくる。


「アカデミーにも良いところはたくさんありますよ。特にこの辺りは貴族の吹き溜まりみたいな場所なので、エストさんの胸がワクワクするような場所へ案内できればいいなって思うんです」


 ローゼさんの優しい笑顔に、もちろんついていく。




 最初に案内されたのは、魔法修練場。

 魔法の訓練に励む生徒たちが集まり、貴族はまばらだけど制服の生徒は意外と多い。


 バルマード様から、「ここの生徒が集まらなくて、学園長が頭を抱えてる」って聞いてたから、まじめに頑張ってる人たちの姿に安心した。

 すると生徒たちの間で、こんな話が飛び交ってるのが耳に入る。


「あの黒髪の戦乙女、ブリュンヒルド様が学園長室に来てるらしい」

「魔法剣士のブリュンヒルド様なら、こっちにも顔を出してくれるに違いない!」


 え、ヒルダ目当てで頑張ってるだけなの?


「ヒルダはやはり人気者ですね。アカデミーを首席で卒業して、お父様の右腕として一時期辣腕を振るっていましたから」


 ローゼさんがクスッと笑いながら教えてくれる。




 次に連れて行かれたのは、木剣や盾で訓練してる生徒たちで溢れる場所。

 弓を射る生徒もいて活気にあふれている。


 奥に見える大きな円形状の建物が気になっていると、ローゼさんが「あれは闘技場で、イベントなどで使われます」と教えてくれた。


 一生懸命に訓練する彼らを上から見下ろす貴族の生徒がちらほらいる。

 何のためにいるんだろうって思ってると、ローゼさんが説明してくれた。


「あの貴族たちは、自分の家に引き抜きたい生徒を値踏みしてるんです。どの貴族も私兵を持ちたがるもので、アカデミーは金の卵を見つけるのに最適なんですよ」

「なんだか貴族って、微妙な人たちが多いですね」

「実は励んでる人の中には、貴族もけっこういるんですよ。家を継げるのは長男だけですから、他の兄弟たちは国に仕えたり、お父様に感化されて真面目に訓練なさってる方も多いんです」


 頑張る生徒たちを見つめるローゼさんのその横顔は、優しさで溢れてて見てるだけで清々しい。




 研究室とかは後でいいからって、ローゼさんがとっておきの場所に連れてってくれた。


 なんとそこはアカデミー内にある、冒険者ギルド支部だった!

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