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14 奇跡の魔法と第一歩

 バルマード様は驚きを隠しきれてないみたい。


「あはは、無詠唱とは恐れ入るね⋯⋯。いやはや、バイパスしたとはいえ驚くほどの威力だったよ。おかげで肩の古傷が完全に消えてしまった。エクスキュアをもらうのは人生で二度目だけど、間違いなく本物だね」


 バルマード様の説明によると、『エクスキュア』って状態回復系の最強魔法らしくて、どんな症状でも完璧に治してしまうんだって。

 すごいんだって思っていたら、バルマード様が私の目をじっと見て、優しいけど真剣な声で言った。


「エストちゃん。まだずっと先の話になるだろうけど、自力で使えるようになっても、あまり人前で『エクス』が付く魔法を安易に使っちゃダメだよ。きっと教会にはそれほど高位の神聖魔法を使える者はいないだろうから、エストちゃんを『聖女』に担ぎ上げて、金ずるにしようと考えるだろうからね」


 その警告に、ゾッと背筋が寒くなった。

 そういえば、ローゼさんが前に「神聖魔法は教会が独占してる」って話してたっけ。


 聖女にまつりあげられるってそういう意味だったのーっ!


 ウィル君がちょっと慌てた感じで続ける。


「聖女は先代の魔王討伐にも参加してたって話だから、エストさんをそんな危険な目にはあわせたくないよ」


 ま、魔王討伐に強制参加なんて、ただの罰ゲームじゃない!


 ⋯⋯思い出したけど、乙女ゲーム『レトレアの乙女』って、バトルパートが乙女ゲーの枠を超えて、オンラインRPG並みに凝ってるって話題だったわよね。

 私はそっちはやってなかったから、もうびっくりしかない。


 そんな超強力魔法の本をくれるローゼさんにも驚きしかないよ。

 もっと簡単な初級の本でも良かったんだけど。


「最上位魔法が使えるんですから、もちろん一番簡単な魔法だって使えますよ。魔法リストのずっと下の方に、ヒールとキュアって魔法があるはずです。その程度なら、使っても問題ないと思いますが、まずは魔力を上げるためのレベル上げですね!」


 ローゼさんが私の欲しい言葉をサラッとくれる。

 やっぱり心を読んでませんか、ローゼさん!?


 すると目の前にふわっと、メッセージが浮かんだ。


[ 「エストさんが『知りたい!』って思うと、私にそのお知らせが届いちゃうんです。『ねえ聞いて!』みたいな感じでもお知らせになっちゃうことがあります。だってお友達ですもの。ちなみに、このメッセージはエストさんにしか見えてないので安心してください」 ]


 知りたいことが分かった途端、メッセージはスッと自然に消えた。

 ローゼさん、ハイスペックすぎ⋯⋯。


 魔法の先生でもあるんだし、そういう魔法があるって考えると納得だよね。


 また新しいメッセージが目の前に浮かぶ。


[ 「エストさんの心の声ができるだけ届かないようにしておきますね。ただ、強い思いだけは届いてしまいます。でないと、おまじないも使えなくなってしまうので。妄想でしたら、いくらでも自由に楽しんでくださいね」 ]


 メッセージはスッと消えたけど、アホ姫時代の私は妄想が暴走しまくってたから、お知らせを受け取るローゼさんも大変だったろうなぁ。


 あ、それでね。

 アホ姫時代は先回りされて、スリッパで叩き落とされてたわけか。


 私がバカな過去を思い出してボーッとしてると、バルマード様の声で我に返った。


「当分は魔法を先天的に覚えてることは内緒にね。奇跡のような魔法が使えるようになる頃には、エストちゃんも簡単に手が出せないくらいには成長してるだろうし、いざとなれば私が守ってみせるよ。さぁ、食事を再開しよう」


 その言葉に、私はすっかり安心させられる。

 バルマード様の合図で使用人たちも戻ってきて、賑やかな食事が再開された。


 豪華な朝食でお腹いっぱいになった私は、運動がてら公爵家の庭園を散歩したいって伝えた。

 するとバルマード様が快諾してくれて、ほっとした気持ちのまま席を立った。

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