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12 ヒルダの機転と初披露

 ヒルダは一度男爵邸へと戻り、アニーが持ってきた新作のメイド服を着てくれていたから、公爵家のメイドたちの羨望の的になっていた。


 なんて気が効くの!

 私のデザインした服を公爵家で披露してくれるなんて。


 美人でスタイル抜群のヒルダが着ると、まるでファッションショーのモデルみたいでカッコいい。

 バルマード様の目にもその姿が留まる。


「また一段と綺麗だね、ブリュンヒルド。いや、今はヒルダと呼ぶべきだった。その服とても似合っているよ。スレク男爵家に君がいてくれるから、師匠とのやり取りが楽で助かるよ」


 ブリュンヒルド? あっ、愛称がヒルダなのね。


「私こそ充実した日々を過ごしております。この衣装はお嬢様がデザインして、アニーに仕立てさせたものです」

「その服、エストちゃんのデザインなの? 素晴らしいセンス持ってるじゃない。動きやすそうだし、見た目も華やかで、ウチにも欲しい子がいるじゃないかな」

「ありがとうございます、バルマード様」


 バルマード様がヒルダを前に出させて、「新しい服が欲しいかい?」って聞くと、メイドのみなさんが「欲しいです!」って驚くほどの勢いで賛成してくれた。


 私のデザインした服がこんなに喜ばれるなんて、思わず感激してしまう。

 前世で温めていたアイデアを活かしたものだけど、みんなに褒められると、こんな嬉しくてたまらないものなのね。


 その笑顔の輪の中にはウィル君もローゼさんもいたから、私の今日のお泊まりは特別なものになった。



 --数日後、仕立屋のアニーは膨大な数の使用人が働くマクスミルザー公爵家から、大量の制作依頼を受け、非常に忙しい日々を送ることになるのだった。






 翌日。

 豪華な客室で目覚めた私は、天蓋付きのベッドの上で窓から差し込んでくる朝日にふわーっと背伸びをした。


 昨夜はローゼさんがガールズトークでなかなか眠らせてくれなかったけど、興味津々でのめり込んだのはむしろ私の方で、久しぶりに女子らしい会話ができたのは、どこか懐かしくも嬉しかった。


 アホ姫時代のローゼさんの印象にここに来るまでは正直ビビってたけど、実際会って話したらとても話しやすくて趣味も好みも合うし、ほんと大好きになった。


 私が起きる頃合いを見計らったように、部屋にヒルダが尋ねてきた。

 彼女は早朝から男爵家に戻り、別のドレスを持ってきてくれていたのだ。


 私は「ありがとう」と感謝して着替えを手伝ってもらい、朝食までの間、公爵邸を散策するために部屋をあとにした。


 迷うほど広いけど、使用人の方たちが道行く先で案内をしてくれて、立派な屋敷を見て回ることができた。


 その道すがらウィル君に出会った私は、朝食に誘われて一緒に食堂に向かう。


「昨日も可愛かったですが、今日のドレスもとてもよく似合っていますね」

 

 ウィル君に褒められ、ドレスを着替えて良かったとこっそり拳を握る。


 バルマード様からいただいたドレスは、どれも綺麗で華やかなものばかりだから、着られるように直して正解だった。

 でも見た目だけじゃなくて、ちゃんと内面も磨いていかないと、中身を見透かされてしまいそう。




 食堂に足を踏み入れると、すでにバルマード様とローゼさんが席に着いていて、私は彼女に手招きされて隣に腰を下ろす。

 するとウィル君が、私の真向かいの席に座った。


「今日も私が贈ったドレスを着てきてくれたんだね。大事に扱ってくれてるみたいで、ほんと嬉しいよ。朝食にコーヒーを用意してみたから、ぜひ味わってみて欲しい。さあ、いただこうか!」

「また、あの美味しいコーヒーが飲めるんですね!」

「うちの子たちはそんな反応してくれないからね。エストちゃんが喜んでくれて、とても嬉しいよ。みんな育ち盛りなんだから、しっかり食べるんだよ」

 

 運ばれてきた料理は、朝食とは思えないほどの豪華さで、テーブルを埋め尽くす勢いだ。

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