異世界飯炊き係、爆発オチで伝説となる
異世界転移?ああ、よくある話だ。
俺も、例に漏れず、女神とかいう胡散臭い奴に導かれ、この異世界にやってきた。
で、何故か飯炊き係に任命された。
……いや、何でだよ。
よりにもよって、スキルが飯炊きってどういうことだよ。
伝説の魔王を倒せ?世界を救え?
知るか。
俺は、飯を炊く。
ただ、それだけだ。
……のはずだった。
森の泉で、俺は額の汗を拭いながら鍋をかき混ぜていた。異世界転移してからというもの、飯炊き係は俺の役目だ。慣れない手つきで、焦げ付かないように慎重に鍋底をこそげ取る。
「ねえねえ、このスープ、アタシ色に染めてもいーい?」
隣で、金色のツインテールを揺らす小柄な魔法使い、メイが目を輝かせ、キラキラとした瞳でこちらを見ている。
「はぁ?何言ってんだ、お前。味付けもまだなのに、色を染めるってどういうことだよ」
「えへへー、アタシ、ピンク色のスープって、なんか可愛いかなーって思って!」
メイは、小首を傾げ、上目遣いでこちらを見ている。まったく、このポンコツ魔法使いめ。
「伝説の秘宝の匂いがするぞ!」
鍛え上げられた筋肉が服の上からでもわかる大柄な戦士、ガルが、興奮した様子で鍋を覗き込んだ。その瞳は、獲物を狙う鷹のようにギラギラと輝いている。
「は?何だよそれ……って、うわっ!」
俺が覗き込んだ瞬間、鍋が突然、虹色の光を放ち、ドカーンと爆発した。俺は咄嗟に鍋を庇うように抱え込んだが、熱風で髪が逆立ち、顔は真っ黒焦げになった。
「メイ!お前、魔法ミスったんじゃねぇのか!このアフロヘアー、どうしてくれるんだ!」
「えへへー、アタシの魔法、ちょっとだけ爆発しちゃったみたい!ごめんね、アタシ、魔法の才能ありすぎちゃって、加減が難しくてー!」
メイは、両手を合わせ、ペロリと舌を出している。
まったく、こいつは…。
スープまみれの俺たちを見て、ガルは屈強な肉体を震わせ、腹を抱えながら笑い転げている。
「こいつは最高の宝の予感!伝説の秘宝探索中に、まさかこんなお宝映像が手に入るとはな!SNSにアップして、伝説の冒険譚に加えてやる!」
ガルがアップした写真は、瞬く間に拡散され、異世界中のSNSで話題となった。「伝説の秘宝より面白い!」「異世界版炎上事件!」「アフロヘアーの勇者、爆誕!」など、様々なコメントが寄せられ、写真を見た人々は、腹を抱えて笑い転げた。
その結果、俺たちは異世界で一躍有名人となり、行く先々で写真を見せられ、サインを求められるようになった。ガルは、「これも伝説の冒険譚の一部だ!」と、満面の笑みを浮かべていた。
泉の森は、今日も騒がしかった。
本作「異世界飯炊き係、爆発オチで伝説となる」を最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。
本作は短編として執筆しましたが、登場人物たちの個性的なキャラクター性や、異世界での出来事をさらに掘り下げてみたいという気持ちもあり、現在、連載を検討しております。
感想やメッセージなど、いただけると嬉しいです。
最後に、本作を読んでくださった皆様に、心からの感謝を申し上げます。