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棘の蜜  作者: かすみ
第1章
19/23

騒がしい夜

放課後になると、まんまるまるへ移動した。





本日も、騒がしい。





「律の奢りなんだってな~、片っ端から食ってやんよ」





「お前ぶっ飛ばすぞ」





「こらこら、暴れなさんな」





りっちゃんと源が立ち上がるせいで、テーブルがガタンと揺れる。





今日は他にお客さんがいるだけに、ハゲのおっちゃんがこちらをと睨みつけている。






「何食う。なんでも頼め」





あたしの左隣に座る千穂がメニューを差しだしてくれる。





「ゆずも、ゆずもたのむ!」





「千穂、俺今日はコーラフロート飲む」





向かいに座るゆずちゃんと葉くんは、前のめりになってメニューを指差す。





隣の馬鹿兄貴が煩いから、端の旭くんが「ちゃんと座ってねーと危ねーぞ」とゆずちゃんと葉くんの頭をポンと撫でて座り直させている。


「ゆずね、クリーム飲みたい」





「おお、頼んでやっからな」





にっこりとゆずちゃんに微笑みかける旭くん。





こうやって改めて見ると、やはり旭くんが一番お兄ちゃんらしい。





「わーい!!」





手を上げて喜ぶゆずちゃん。





それを見て旭氏、





「…………。」





無言でゆずちゃんを抱擁。





あまりの可愛さにいてもたってもいられなくなったのだろう。





旭くん、残念ながらゆずちゃんはりっちゃんの事が好きなんだよ。






「…奈実、何飲む?」





目の前の光景を見物していると、千穂が顔を覗き込んでくる。





「え、あ。忘れてた!あたし烏龍茶がいい!」





そう答えると、源と睨み合っていたりっちゃんが座り直して顔を近付けて来た。





「奈実、何か頼んだのか?」





「ううん、今から烏龍茶頼む」





「じゃー俺も烏龍茶にしよ」


全員分の飲み物を注文した後、りっちゃんが適当にお好み焼きを注文した。





「そう言えば千穂、今日は一番遅かったね。学校来るの」





「朝早く家出ようと思って起きてたらいつの間にか寝てた」





「ぷはっ、でもそれでいいじゃん」





「何が」





「毎日、源の家に来なくていいよ」





そう言って笑うと、千穂はむっとした表情を浮かべる。





そこで右隣に座るりっちゃんが口を開く。





「お前まだ奈実と寝ようとしてんのかー?」





「奈実…体温高いから気持ちいい」





んな…!





気持ちいいって何を言ってんだこの男は!





「寝なくていいですー」





「…今日は源の家に泊まる」





「はい?話聞いてた?」





寝なくていいって言ってるのに、泊まるって何だ。





「泊まる」





「りっちゃーん、千穂が意味わかんないこと言うー」





「千穂は言い出すと聞かねーぞ」





「やだやだ。じゃー、りっちゃんも泊まろう!!」


ね?と付け足して、りっちゃんの顔をじっと見る。





もしりっちゃんが加わるのなら、いいかもしれない。





だけど、りっちゃんは困った顔をする。





「だって、生意気な源の家だろ?」





「…そう言わずに!」





「…まー、たまにはいいけど。荒らして帰って困らせてやんのも楽しそうだし」





「あ…チョイ悪りっちゃんが顔を出してる…」





源と本当は仲がいい癖に、わざとそんな事を言うんだから。





そう思って笑ってると、今度は千穂があたしの肩を押さえてくる。





顔を振り向かせると、再びムッとした表情を見せる。





「なんで律はいいのに、俺は『やだ』なんだ」






………へ?







「…はい?」





「……もう知らね」


顔をフイッと逸らして、テーブルに頬杖をつく千穂。





「えっ?千穂?」





もう知らない、って……?





千穂の肩をゆさゆさと揺さぶってみるけど、こっちを向いてくれない。





「拗ねやがったよ、千穂」





右隣のりっちゃんは笑ってる。





「りっちゃん…どうしよ」





「放ってればいんじゃねーの。楽しみだな、奈実。千穂は拗ねてっから俺だけだな、泊まるの」





そう言って白い歯を見せるりっちゃんにこくんと頷くと、





千穂がこっちへ振り向いた。





「違う、行く」





「なんだそれ!拗ねてんじゃねーのかよ」


千穂と目が合うと、わざとらしく逸らされる。





「千穂、機嫌悪い」





ぶすっと口を尖らせてそう言ってみる。





「面倒だから放っておきゃいい。それよりあれ飲もうぜ!オレンジフローズンソーダ」





「あ、本当だ!忘れてた!飲も、飲も!」





テンションが上がったあたし達は、オレンジフローズンソーダを追加注文する。





その後すぐにお好み焼きもきて、胸がワクワクと騒ぎ始めた。





相変わらず、りっちゃんのトッピングは酷いけど。





切り分けたお好み焼きを千穂のお皿にも入れてあげる。





「ほら、千穂くん。スマイル」





「…………。」


素っ気ない千穂は、笑いかけてくれる事はなく、





お好み焼きをもぐもぐと食べる。





あたしとりっちゃんは、オレンジフローズンソーダのあまりの美味しさに感動。





それを見たゆずちゃんと葉くんも目を輝かせて、同じものを注文する。





「何それ、ドラ奈実」





凍ったオレンジをスプーンで救うと、笑顔で聞いてくる旭くん。





「オレンジ」





「あーん」





…あーんて。





口を大きく開けて、顔を近付けてくる旭くん。躊躇ったが、仕方なく口の中に入れてあげた。





「あたしのオレンジなのに~」





「おー、うめーじゃん」


そうだろう、そうだろう。





「あーらあらあら」





「ど、どうした旭マダム」





頬を押さえて、目を大きく開けるマダムは、千穂の方をチラッと見る。





つられて見てみると、旭くんをじっと見ている。





「あ~、面白いな~」





にやりと笑う旭くんに、首を傾げる。





「な、何がだ…?!」





旭くんの意味深な言葉が怖くて、アタフタとりっちゃんに助けを求める





「ついてけねえ」





「だよね!なにこのマダムオヤジ!」





「はは、マダムオヤジって何かな?」


時折、悪魔が顔を出す旭くん。





散々騒いだあたし達は此処を後にする事にした。





会計はりっちゃんと旭くんがしてくれたみたい。






―――そして今あたし達は。






「まじ何もない家だな、奈実」





「うん、でも慣れたよ~」





「エロっちぃの隠してないか、探してやろ」





「…眠い。」





「――ざっけんなよお前ら!!!」






源ハウスへやって来たのだった。



アパートに響き渡る源の声。





ぞろぞろと中に入って行くみんなに、ご立腹の様子。





結局、機嫌の悪かった千穂も来る事になって、旭くんも楽しそうだと言ってついて来て。





あたしの住み着いている襖を開けて、座り込んでいる。





「しっかし、何もねーなー」





辺りを見渡して、呟く旭くん。





「あれ、何だこれ、漫画?」





そして、押入れに隠しておいた漫画を見つけてしまう。





これは、源の部屋から勝手に持ち出してきた不良漫画。





「お前……何勝手に俺の部屋から」





頭上からは、源の怒りに震えている声。





「だってだって、寝付けなかったんだもん!もう、オヤジが見つけちゃうから!」


源に近くにあった枕で頭を叩かれたあたし。





いつもiPhoneで散々アニメ見せてやってんだから、漫画くらい貸してくれたっていいじゃないか。





唇を突き出していじけていると、旭くんがケラケラと笑ってきた。





元はと言えば、あんたのせいでバレたんだ。





「くっそう、オヤジめ」





「はい二回目。さ~て、どうやって反省させようかな」





「すみませんごめんなさい申し訳ないです。」





ペコペコ頭を下げていると、ぐいっと腕を引かれる。





振り返ると、りっちゃんがコンビニ袋を差し出している。





「来る途中で買ったやつ、食う?」





「あ、食べる!!」


源はゆずちゃんと葉くんを寝かしつけに部屋へ行く。





その間にりっちゃんは、源の部屋からゲームを引っ張り出しに行き、





旭くんは、お菓子をつまみながら携帯を触り、





あたしは部屋の隅に布団を敷いた。





「奈実、ゲームやるか?」





「うん、眠くなるまで。旭くんもやるでしょ」





「君ら相手にならねーもん」





「なにこの人!むかつくよ!りっちゃん、こてんぱんにしてやろう!」





「おお、任せろ」





「そうだ千穂も……!」





千穂もするかな?と思って振り返って千穂を探す。






すると、千穂は何故かあたしの敷いた布団の中に入り込もうとしていた。


「こらこらこら!」





何寝ようとしているんだ。





千穂の腕を掴んで、ぐいぐいと引っ張る。なんとか布団から出させる様に。





「……ねみ」





「これあたしが寝る布団!」





「…ああ」





「千穂は、ここじゃないから。わかった?」





「わかんねえ」





「おい。」





なんとか千穂を引っ張り出せたが、隙あれば布団に潜り込みそう。





目を擦っている。





「みんな、言っとくけどゲーム終わったらここから出てってね。あたし寝るから」





あたしも今日は眠いのだ。





「あーらら、何言ってんの。」





マダム…いやオヤジ…いや、旭くんが笑みを浮かべている。



気づけばテレビまで運んで来たりっちゃん。





確かに、この部屋には箪笥しかないけど…!





「源の部屋行けばいい話だよね!」





「え~いつもと一緒じゃ面白くないじゃねえか」





何言ってんだ、このオヤジは。





ぽかんと口を開けていると、せっせとプレステをセットしている旭くんとりっちゃん。





「言っとくけど、寝かせねーよ。ドラ奈実、千穂」





そんな言葉に肩をがっくしと落とす。





その後は、源も戻って来てひたすら桃鉄。





あたしとりっちゃんはチームで、後は個人での戦い。





あたし達は、億万長者。旭くんもいい物件を独占し始め、源はカードで攻撃ばかり。貧乏神がつくのはいつも千穂。





なんだかんだゲームにハマり、気がつけば朝をむかえていた。


ブラウン管から流れてくる、音楽。





さすがに8時間もぶっ通しでゲームは、きつい。





コントーラーは、手から離れる。





「…いでっ…」





そしてさっきから何度も隣に座っている千穂の頭があたしの肩に当たる。





眠くて頭がカクカクしているのだけれど、結構痛い。





避けていても、頭がついてくる。





「ふふぁ~…眠い」





目を擦って辺りを見渡せば、いつの間にか旭くんの姿が消えている。





「あれ、旭くんは…?」





「先に行った。てか奈実、目ぇ開けながら寝てたぞ」





「まじかりっちゃん!白目向いてなかった?!」





焦ってそう言うと、りっちゃんは親指と人差し指で「ちょっとね」と表す。





白目向いてたなんて、最悪だ。


落ち込んでいると、再び千穂がごつんとあたしの肩に頭突きをする。





「いでっ…千穂、起きて」





ゆさゆさと揺さぶってみても、起きる気配はなく仕方なくそのまま肩を貸してあげる事にした。





「そういや源が朝飯作ってくれてるぞ」





「うそっ!やった!」





「じゃー俺、風呂入ってくっから」





「あたしもその後入ろ」





りっちゃんが風呂場へ行き、上がった頃に千穂を置いて朝食を食べに行った。





食パンにベーコンエッグ。





「お前らまじねーわ。もう一生くんなよ、ねみぃ」





欠伸をしながら、そう呟く源。





昨日一番ハシャいでいた様な…。


朝食を食べ終え、シャワーを浴びた後、ゆずちゃんの髪をクシで梳せ、編み込みをしてあげる。





ハートの髪ゴムが可愛くて、朝から胸キュンだ。





「ありがとう!なみちゃん」





「可愛いなーもう。食べたい」





そのほっぺをあむっと。





なんて考えながら、自分の髪もクシで梳く。





「奈実~、俺も~」





そこに、りっちゃんもやって来る。





シャワーを浴びたからか、りっちゃんの髪はくるくる。





「任せなさい」





「さんきゅ。たまにはいいなー」





「ん?なにが?」





「こうやって泊まりにくんのも。」





ニッと歯を見せて笑うりっちゃん。





うん、そうだね。





なんだかんだ、いつもの夜より楽しかった。



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