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棘の蜜  作者: かすみ
第1章
18/23

仲良しコンビで探検

「……源」





「んだよ」





「ねえ、源…」





「だからなんだよっつってんだよブス。さっさと引けや」




せっかくりっちゃんが戻って来たというのに、空気を読まない男だ。





睨みつけてやると、睨み返される。





そんな源は置いといて、再びりっちゃんへと視線を向けた。





俯いて、足首を握っているりっちゃん。





「りっちゃん、元気出そう!」





そう声をかけると、顔を上げてくれる。





「……悪かったな」





「そうだ俺様にも謝れ。お前すぐ暴走しやがるんだからよ」





「お前に言われたくはねえ」





「あ?俺はいつでも冷静だボケ」





途中で源が入って来るせいで、空気がピリッとする。





そのつんつんのオレンジの髪引っこ抜いてやるぞ。





あ、そうだ。髪と言えば。





「りっちゃん、今日はまだだったね。ヘアアイロン。」





「うおっ!そうだった!!忘れちまってた!」


被っていたキャップを手に取り、髪に触れるりっちゃん。





それを見て、源がお腹を抱えてゲラゲラと笑う。





終いにはぴょんぴょんぴょんと跳ねたりっちゃんの髪を指差している。





ほら、りっちゃんの眉間に皺が寄ってるぞ。





「りっちゃん、バカは放って置いて向こうでやろ!ね!」





「ああ」





「ほんっと源ってばデリカシーない」





「天パになりゃわかる」





「…ぷ」





「笑うなよ、奈実」






戻った。





りっちゃんが戻った。



「…やっぱ二人でババ抜きは面白くなくない?」





静かな隠れ場。





りっちゃんが此処を後にしてから二時間が経過して、





旭くんも何処かへ行ってしまって(恐らく女子の所)、千穂もソファーでお昼寝中。暇なあたしと源は二人でトランプ。






さっきからジョーカーが行ったり来たり。





「あ?」





「あ?じゃないよ、ほいあーがり!」





カーペットの上にトランプを投げると、源が憎たらしく舌打ちをする。





「スピードやんぞ。負けたらあのテレビ俺に貸せ」





「え、やだ。」





「じゃーアニメ見せろ」





「源、一度見出したら止まらないからやだ。そのせいで昨日寝不足だし」





「あ?面白かっただろが」


家に帰っても、アニメばっかなのに此処に来てまでアニメなんてやだやだ。





首をブンブンと横に振ると、もう一度舌打ちをする。





「じゃーさ、負けたらデコピンにしよう」





「言っとくけど俺のデコピン痛いからな。泣くなよ」





そう言いながらトランプをシャッフルさせる源。顔はもう勝ち誇ってる表情。





あたしのスピードの速さをなめないでよね。





源と火花を散らしていると、隣から気配を感じた。





すぐに顔を向けると、屈みこんであたしの頭にポンと手を置くりっちゃん。





「……りっちゃん」





「…ごめん、奈実。さっきは」





首を横に振ると、りっちゃんも胡座をかいて座る。





「ううん、全然」





「…俺…」





「ブス、早くやるぞ」





「黙って源!」


アイロンを温め終えると、りっちゃんの髪に手をのばす。





スーと挟んで流すと、綺麗に真っ直ぐになる。





ストパー当てちゃった方が面倒がなくていいと思うけど、りっちゃんはこれがいい。





あたしは天然パーマのりっちゃんも可愛くて好きなんだけどな。





「…俺だけなんだよな」





「えっ、なに?」





手を止めて、目の前のりっちゃんの顔をじっと見つめる。





すると、フイッと顔を逸らして呟いた。





「家族、みんな天パじゃねーのに」





「えっ、そうなの?」





「じじぃの受け継いだらしい」





「…ぷっ」





「だから笑うなって」





だってなんか可愛いんだもん。





だけどりっちゃんはコンプレックスかもしれないけれど、それで良かったんじゃないかと思う。






だってこの時間が楽しい。


「…なー、奈実」





もう少しで、終わる頃。





目の前で胡座をかいて座っているりっちゃんが、瞳を細くして揺らした。





声が、さっきより低く感じた。





「…ん?どうしたの?」





そんなりっちゃんに、あたしは微笑んでみる。





「…どうやったら理性保っていられんだろうな」





「…理性?」





俯くりっちゃん。





膝の上に握り拳を作っている。それに力が入っているのがわかった。





「さっきみたいに…すぐに理性失ってしまう。わかってはいるつもりなんだけど…」





「…でもそれは千穂が怪我したからでしょ?」





「…俺、大切な奴に何かあるとああなってしまう。奈実に何かあっても、絶対暴走しちまう」





「…………。」


りっちゃんの言葉を聞いて、俯く。






…あたしって本当駄目な奴だ。





さっきの言葉に嬉しいと思ってしまっているなんて。





「……奈実?」





俯くあたしを心配して顔を覗き込むりっちゃん。





「そう言ってくれて嬉しい…だけどあたしはそれでりっちゃんが怪我したら悲しいよ」





「………奈実…」





「よし、ストレート終わり!今日もキマってるよ!りっちゃん!」





「そ、そか…」





「うん!せっかく髪もキマってるんだから、探検でもしようよ!」





「校内探検…?」





「小腹も空いたし、何か食べよ!」





「お、いいな」


辺りは授業中のこの時間なだけに、食堂はやはり空いている。





ちらほらと授業を抜け出している生徒はいるけれどね。





そんな人達も、りっちゃんの姿を見ると後退っている。





「ジロジロ見んな」





おまけに低い声を出すから、余計にビビってしまっている。





「まーまー、早く行こ」





りっちゃんの腕をぐいぐいと引っ張って、食堂の前まで歩いて行く。





「おお、悪い」





「りっちゃん、スマイルスマイル」





「スマイル…?」





「ほら、ニッて笑ってみて!」





「…ニッ。」





白い歯を見せてあたしと同じ顔をするりっちゃん。





か、かわいい…!





こんな姿を他の生徒も見たら、人気者になると思んだけどな。





「りっちゃん何食べる?」





「ホットドッグ」





「じゃ、あたしカツサンドにしよ」


今日もりっちゃんは、元から入っているにも関わらずケチャップとマヨネーズを大量にかけている。





それをもくもくと食べながら、校内を歩く。





それにしてもこの学校のカツサンド、超美味しい。





「奈実は前の学校ではどんなだった?」





「えっ、前の学校?」





突然そんな質問を投げかけてくるりっちゃんに、ふふっと笑う。





あむあむとホットドッグを頬張るりっちゃんは不思議そうな顔をしてる。





「うーんと、前の学校ではねーよく教頭とバトッてた!よく悪戯してやった!」





「ははっ!奈実らしいな。後は?」






後……。





教頭とのバトルしかスッと出てこないのが、ちょっぴり悲しいな。





「あたし浮いてたからさ、あんまいい記憶はないかな」





「……」





そんな言葉に目を丸くさせるりっちゃん。





「でもここに来てから楽しい記憶ばっかり!」





「…おお、そっか!俺も奈実が来てからもっと楽しくなったぞ」


りっちゃんの言葉が嬉しくて、顔がニヤニヤしてしまう。





今日みたいにビックリさせられる事もあるけれど、本当に楽しい。





…今日。





「そう言えばりっちゃん、隠れ場飛び出して何処へ行ってたの?学校からは出てないんだよね?」





「あー…出た」





「えっ、うそ!」





それってもしかして、第2の所に行ったって事…?





「ムシャクシャしてたから何かしてたくて、スロットしてた」





「あれ?スロット?」





「おお、それが千円入れたらきちまってよ。それで今日勝ったからな、まんまるまるでも奢る」





「本当?やったー!」





「やったー、律のおーごり!」






…ん?


「うわっ!」





突然、後ろから声がして振り返る。





そこには、手をひらひらと振って満面の笑みの旭くんの姿。





「二人でこっそりまんまるまるはずるいだろ。みーんなでな」





いつからいたんだ、と言う突っ込みは置いといて。いつもフッと現れるから怖い。





「女子の見学は終わったの?」





「あれー?なんで知ってんのー?」





「そうしか考えられないから」





即答で答えてやると苦笑する旭くん。





りっちゃんはわざとらしく「ケッ」なんて言ってる。





「今日は律の奢りでお好み焼きかー。あー楽しみ」





「財布と相談させろ」


本当に財布の中を覗き込んでいるりっちゃん。





万札がちらっと見えた。





前に行った時も、みんな沢山食べるから会計結構いったんだっけ。





「ドラ奈実ちゃ~ん」





「な、なにさ!」





急に猫撫で声を出して、あたしの肩に手を回すエロ親父。





あたしの額からは冷や汗が出てきているぞ。





「やるね~本当。律の扱いうまい」





「…扱いってなにさ」





「だってもう機嫌いいじゃんか。すごいぞ。よしよし」





「何故あたしの頭を撫でる」





あたしなんて、本当に何もしていない。





ぽかんと突っ立っていて、りっちゃんが居なくなった間もトランプしてたただけ。





「第2の所に行かずにすんでよかった」


第2高校。





ここに来てから、よく出てくる。





度々喧嘩を売ってきているよね。





「そう言えば、どうして第2とそんなに仲が悪いの?」





疑問が頭の中に浮かび上がってくる。首を捻って、旭くんとりっちゃんに訪ねてみる。





あたしの肩から腕を引っ込めた旭くんは、首元を押さえながら唸る。





「…第2と第3は元々因縁の仲なんだよな。俺がここに来る前からだから」





旭くんがここに来る前…即ち何年前だ?うんと…うーんと。





「結構前って事だね、うん」





「こらこら。しばくよ」





「りっちゃん!オヤジが怖いよ!!」


りっちゃんの腕にしがみつくあたしを見て、笑顔を見せる旭くん。





怖い、最強に怖い。





「で、第2は常に俺らを倒そうとしてる訳よ。自分らが上につくために。」





「…ほ、ほう」





「でもその第2がタチが悪いのなんのでよ。そんな奴らに負ける訳には行かねーじゃん」





「じゃ、ボコボコにしよう」





「そう簡単に言うなよ。こっちは向こうの情報何も知らねんだから。裏とか、誰が頭張ってるとか」





「第2にも頭とかいるの?」





「それもよくわかんね」





「なんじゃそりゃ」





わからないことだらけなんだ。





だけど、因縁が消える事はないんだ。





「だからこっちもそう安安と情報与えらんねーし。乗り込まれたら終わりだしな。それで隠れ場所とか作った訳」





確かに、あんな人目のつかない教室だったら安心かも。中に入れば何かと凄いけど。


実際、まだ乗り込まれたりしてないみたいだけど、あそこなら探すのに苦労するかもしれない。





あたしは見つけてやったけどね。えっへん。





それにここの学校の生徒も隠れ場のある四階は上がって来る事はないから、隠れ場所の存在を知っているのも数人らしい。





そして、あたしは第2高校が謎めいているという事はよくわかった。







「奈実、それよりいい事教えてやるよ!」





「え!どしたのりっちゃん!」





「今まんまるまるに期間限定でオレンジフローズンソーダがあんだぞ」





「わ!なにそれ!超美味しそう!飲む!」





オレンジフローズンソーダを頭の中で想像して、口元をにやつかせる。





この暑い夏にもってこいじゃないか。






「…お前ら話変えるの早ぇし。つーかおじちゃんちょっと寂しいし」





「オレンジとか、まんま氷ってんだよな」





「うわー、やばい!早く、早く行こ!」





「……お前達、俺の話を聞けーい」




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