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棘の蜜  作者: かすみ
第1章
17/23

因縁の第2高校

それからというもの、毎日同じ様に楽しい日々を迎えている。





源の家で過ごすのもちょっぴり慣れたし。





ゆずちゃんと葉くんのお迎えは交代でする様にして、後、掃除機は毎日ちゃんとかけてる。





びっくり仰天なのが、源が意外と料理が出来る事だ。





簡単なものしか出来ないみたいだけどあたしが作るより絶対美味い。旭くんや特に千穂も遊びに来てはよく食べて帰ったりしている。





「源ー、朝ですよー」





「…ん、朝からブスの顔見るとか溜まったもんねーわ」





布団で包まって眠っている源を乱暴に蹴ってやる。





起こしてと頼んでおきながら、いつもこれだよ。





「源ー、今日ゆずちゃんと葉くん送りに行くのあたし行こうか?」





「今日は俺が行く。ブスさんは千穂が迎えに来そうだから早く用意してさっさと家を出ろ」





「ブスさん言うな」





「つか、そろそろチェーンでもしとくか。当たり前の様に来やがる。朝飯代請求しねーと」





「でもこの家って確か千穂の家なんだよね?」





「千穂の親父だっつの」





「…思ってたんだけど千穂の家ってお金持ちなのかい?」





アパートとか貸したりしてるし。





「全然」





「即答かい!」


「こんなボロいアパートを何件か貸してるだけで別に金持ちって訳でもねーだろ。ま、普通の家よりちーっとは裕福かもしんねーけどな」





「へー」





「家賃も請求しねーし。あいつんとこはみんないい奴だ。」





「そっか」





そんな話を聞いて、笑顔になった





千穂と出逢えたから、今がある。





友情、という言葉が頭に浮かんだ。





「何ニヤついてんだよ」





「いやー友情ってええですなと思って」





「気色悪!」





源があたしをひいた目で見ていると、ガチャリと鍵の開いた音がする。





「やべ、チェーン忘れてた」とそう呟く源。





さっきまで噂していた彼が、眠たそうな顔をして入って来た


「奈実、行くぞ」





まだ源のTシャツ姿のあたしにそう言う千穂。





着替えてもないし、何もしてない。





「千穂、早いよ」





「律が電話かけてくる。早く連れて来いってうるさい」





りっちゃん、もう学校に着いたんだ。





きっと早くヘアアイロンでストレートにしてほしいんだろう。





「すぐ用意するから待って」





「源は」





「ゆずちゃんと葉くん起こして幼稚園連れてくって」





振り返ると、源はゆずちゃん達の眠る部屋へ移動している。





それにしても、二人の寝顔可愛すぎる。可愛すぎて起こせないからいつも源が起こすと決まっている。


用意が終わって、千穂と家を出た。





今日のあたしは、前の学校の時の制服姿。





「暑いねー今日も」





「ああ」





隣の千穂は、今日も綺麗に栗色の髪をセットしている。暑いからか、シャツのボタンが上から4つも開いている。見える鎖骨がなんだかエロい。





見過ぎ注意だね。





「でも夏過ぎちゃったらやばいなー。あたし制服半袖しか持ってない」





「そん時は俺が用意してやる」





「おー、やったー!」





足が長い千穂は、会話をしながらでもきちんと歩幅を合わせてくれる。





そういうさりげない優しさがちょっぴり嬉しくなる。





第3高校までの道筋、徒歩でもそんなに距離はない。





まさか、何か起こるなんて思わない。


千穂との話題は、源とりっちゃんのハマっている動画の話。





源は勿論、アニメで。最近は金髪の男の子が主人公のアニメにハマっている。





りっちゃんは昔のドラマ。これはあたしもハマっていて、いつもりっちゃんとワクワクしながら見ている。何しろギャグが多い。





これらの全てはあたしの持っているiPhoneで。奇跡的に充電器も持って来ていたから、今でも源に不思議に思われている。





「ところで千穂はテレビとかは見ないの?」





「ついてたら見る」





「何それ、へんなの」





なんでも真顔で答える千穂が可笑しくて笑っていると、大きな音がした。





バイクの大きな音。わざとリズムを取って鳴らすコール。





それがこちらに向かって来ている。





あたしの笑顔は段々曇ってきた


なんだか怖くて、後ろに振り向かずただ前に向かって歩く。





だけど隣にいる千穂は首を傾げて、普通に振り返っちゃっている。





「ああ、ダメ!」と言おうとして千穂の腕を掴むと、一斉にバイクの音が静まり返った






目の前に制服を来たあきらかにヤンキーな男が5……いや6人いる。





金髪、金髪、ど金髪。





「ほーら、やっぱ片桐じゃねーかよ」





先頭にいた男がそう言ってニヤリと笑う。





その男に続いて、バイクから降りた男達はずらずらとあたし達を囲むように近付く。





「……うそ……」






こんな道端で、






………喧嘩ですかい?



それにしても、6対2はフリなんじゃないの!?





って自分まで入れちゃってるけど…!






「だれ、お前ら」





挙動不審になっていると、隣から冷静な声がする。





そうだ、千穂は喧嘩慣れしているみたいだし。凄く強いんだもん。





「わかってんだろ~よ。どう見たって第2だろ」





そう言われて、制服を見てみる。





いや、見た所でだけど。その真っ黒なズボンは確かに見覚えがある。千穂にやられてた人達と同じ制服。





「この間の奴らの仲間か」





「はっ?笑わせんなって~。あんな雑魚な奴らと一緒にすんなよ」





あ、あの人達雑魚なの!?





じゃーあなた達強いのか!それってやばくないか!





「お前ひとりとかこんなついてる事ねーよな」





「いや、ほんと。やっばーうずうずしちゃう」





え、あたし見えてない?





一応ふたりですけど。


わざとらしく手と首をコキコキと音をたてる男達。





先頭にいるど金髪のオールバックが口端を上げて笑う。





「やっとぶっ殺せ……」





だけど、途中で声は消えた。





千穂が躊躇もなく強烈な頭突きをお見舞いしたからだ。





ゴッ、て音した。





「………っ……」





身体を崩して鼻を押さえる男。ポタポタと鼻血が地面を濡らす。





痛そー…っと片目を瞑った次の瞬間。





何かの合図の様に始まった。





本当に一瞬、そんな感じだ。


左右から凄い速さで手が伸びてくるのを、千穂がかわす。





そして、千穂の強烈なパンチが第2の生徒の腹部に決まる。





何もかもが速すぎて、目で追うのも大変。





あたしは固まったまま、その場から動けない。





「………っ………」





倒れこむ第2の生徒達を見て思った。






――――格が違う。





千穂は、本当に強いんだ。





周りを見渡せば、6人全員がゆっくりと立ち上がっている。





もう千穂に敵わない事はわかっただろうに。





そう思ったのも束の間、前から殴りかかってくる男を意図も簡単に蹴り飛ばした。





「…すご………」





気がつけば、そんな言葉が漏れていた。


少しだけ乱れた髪を、血のついた指で後ろに流す。





そして口をぽかんと開けたままのあたしに目を向ける。





もう、頭がついてけないや。





そんな風に思った次の瞬間、気配がした。





慌てて振り返ると、ど金髪の鼻が曲がってしまっている男があたしに向かって拳を振り上げた






――――あ。






それも一瞬の出来事。





その速さにかわす事なんて出来なかったあたしはぎゅっと目を閉じた。





ドッ、と音がした。





だけど痛みを感じる事はなくて、恐る恐る目を開ける。





目の前なには、顔を俯かせている千穂の姿。






「…あっ……千穂…」





あたしを庇ってくれた千穂は、口元が真っ赤に染まっている。


男に殴られて、千穂の口が切れたのに気付いたあたしは顔が真っ青になった。





地面に血の混ざった唾を吐く千穂は、目の色を変え、男の首元を掴むと腹部に膝蹴りをお見舞いする





倒れ混んだ男に、最後の一発。





「……千穂、顔」





あたしの声に振り返る千穂は、口元を手の甲で拭う。





「平気だ。痛くねえ」





「嘘ばっかり。痛そうだもん…あたしを庇ったせいだよね、ごめん」





「だから痛くないっつってる」





そう言って、血のついていない左手であたしの頭をポンと叩く。





千穂の顔を見上げてみる。





口元は少し腫れてて赤い。






……あたしも男だったらよかったのに。ロシアンフックとか使えたらな。


男に殴られて、千穂の口が切れたのに気付いたあたしは顔が真っ青になった。





地面に血の混ざった唾を吐く千穂は、目の色を変え、男の首元を掴むと腹部に膝蹴りをお見舞いする





倒れ混んだ男に、最後の一発。





「……千穂、顔」





あたしの声に振り返る千穂は、口元を手の甲で拭う。





「平気だ。痛くねえ」





「嘘ばっかり。痛そうだもん…あたしを庇ったせいだよね、ごめん」





「だから痛くないっつってる」





そう言って、血のついていない左手であたしの頭をポンと叩く。





千穂の顔を見上げてみる。





口元は少し腫れてて赤い。






……あたしも男だったらよかったのに。ロシアンフックとか使えたらな。


男に殴られて、千穂の口が切れたのに気付いたあたしは顔が真っ青になった。





地面に血の混ざった唾を吐く千穂は、目の色を変え、男の首元を掴むと腹部に膝蹴りをお見舞いする





倒れ混んだ男に、最後の一発。





「……千穂、顔」





あたしの声に振り返る千穂は、口元を手の甲で拭う。





「平気だ。痛くねえ」





「嘘ばっかり。痛そうだもん…あたしを庇ったせいだよね、ごめん」





「だから痛くないっつってる」





そう言って、血のついていない左手であたしの頭をポンと叩く。





千穂の顔を見上げてみる。





口元は少し腫れてて赤い。






……あたしも男だったらよかったのに。ロシアンフックとか使えたらな。


千穂と足を進めていると、聞き慣れた声がする。





階段を駆け上がると、携帯電話を耳に付けて色っぽい声を出している旭くん。





「ん、だーめ。体力はまだまだ全然あんだけど、俺若いし?だけどもう学校だしさー」





朝から、お疲れ様です。





「千穂、旭くんて彼女いるの?前にも女の子と電話してる所見たよ」





「いねー。」





「そうなんだ、モテそうだもんねー。そりゃー遊ぶわー」





コソコソと千穂と話していると、旭くんが振り返ってにこりと微笑む





え、なんだ、怖いな。





「なーに後ろでコソコソしてんの?」





「え、普通に話してただけだよね?千穂」





「あ?…つーか千穂、その傷どうした」


歩きながら、先程の出来事を旭くんに話した。





苦笑して、頭をかく旭くん。





「ちょっと最近は油断してたな」





「油断…?」





「気ぃぬいてた。俺も、こいつも」





そう言って、隠れ場所のドアに手を差し伸べる。





「でも、千穂の顔に傷を作るなんてそいつすげーじゃねーか」





「あっそれはあたしが…!」





口を開いた時、中に居たりっちゃんと目が合う。





ソファーに腰をおろしていたりっちゃんは、いつもの様にキャップをかぶっている。





そんなりっちゃんは、物凄いスピードでこちらへ向かって来た





そして、千穂の胸ぐらを掴んで閉まったドアへと押し付ける


「―――その傷どうした!誰にやられた!!」





いつもと違う、りっちゃんの表情。






「第2とやりやった。でも対した事ねえ」





「……第2……」





りっちゃんの身体が、微かに震えているのが目に映る





横から入って来た旭くんがりっちゃんの肩を押さえて、「千穂は平気だっつってるだろ、な?」と宥めている。





だけど、りっちゃんはその旭くんの手を払って、ドアを思い切り蹴った






「―――ぜってー殺す!ぶっ殺す!!」





「……りっちゃ……」






理性を失った様なりっちゃんの変貌に、あたしは戸惑っていた。


「落ち着け、律。な?今行ったって、厄介を引き起こすだけだ」





旭くんの声も耳に届かないのか、無理に此処を出ようとする。





「律、そいつらなら俺がやった」





「…ぶっ殺す…!」





千穂の言葉も聞こえてなくて。





そんな目の前の光景を目の当たりにして、あたしはただ鼓動が早くなるばかり。





さっきまで落ち着いていた旭くんも、暴れるりっちゃんに痺れを切らしたのか、目付きが変わり無理矢理ドアに押さえつけている。





その時ちょうど前のドアから、源が入って来た。





口元にくわえていた煙草を地面に落として靴の後ろで火を消した後、溜息を吐く。





そしてこちらに向かって来て、旭くんの隣からりっちゃんを押さえつける





「また暴れてんのかよ。何があったんだ?」





「千穂が第2の奴にちょっと顔をやられてね」





「あ?第2?なんだよ面白そうじゃねーか。」





「馬鹿言うな。いでっ…」


りっちゃんの肘が旭くんの顎を直撃する。





それに顔を歪める旭くん。






……りっちゃん、どうしちゃったの。






「……律、」





低い、千穂の声が耳に響く。





その声に、一瞬だけりっちゃんの動きが鈍る。その隙をみて源と旭くんは押さえつけている。






「律、俺は刺された訳じゃねえ」





「………っ……」





「落ち着け」





冷静な声。





りっちゃんの動きがピタリと止まる。





「……くそ…っ」


冷静を取り戻した様に見えたりっちゃん。





だけど、旭くんと源の腕を避けて此処を出て行ってしまった。





「り、りっちゃんが…!」





胸の奥がドクドクと騒いで、片手を前に出す。





そんなあたしに旭くんは、肩をぽんと叩いて苦笑して見せた。





「ん、もう大丈夫。第2に行った訳じゃねーから、多分」





そんな言葉に、ホッとする。





だけどまだ頭はついていけてない。






「本当ね、困っちゃうよね、律くんには」





「…りっちゃん、なんであんなに」






千穂が怪我をしたとわかった瞬間の変貌ぶり。





怒っているところは見た事はあるけど、さっきのはそんな次元ではなかった。


「あいつ、仲間に何かあったりするとああやって壊れるんだよな」





「……え…」





旭くんの声に、俯き加減だった顔を上げた。





「……駄目なんだよ、あいつ」





そう言って出て行ったドアの方をじっと見つめる旭くん。





表情は苦笑しているのに、どこか寂しげで。





「…………。」





りっちゃんにも、何かあったのかな。と、思って胸がざわついた。





「まー、すぐに元に戻るから放っておいてやって」





「……うん」





「いい子だね、ドラ奈実は」





ぽんと頭を撫でてくれる旭くん。





あたしは再び俯いた。



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