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棘の蜜  作者: かすみ
第1章
15/23

気になるのです

ブラウン管の中からは、銃声の音。





そして、りっちゃんと源の口喧嘩。





「てめっ、くらってんじゃねーよ」





「くらったのお前だろ。弱いんだから千穂にかわれよな」





「ああ?んだとコラ、だいたい千穂なんかがやったらすぐゲームオーバーだボケ」





隠れ場所のここは賑やかだ。





あ、千穂にコントローラーが行き渡った。





「ぷっ」





「…ドラ奈実はゲームに参加しないの?」





窓際の壁に身体をもたれさせていたあたしに、近付いて来る旭くん。





「見てるだけでも楽しいよ。旭くんこそゲームしないの?」





「俺はダンディーな男だからね」





「……それってギャグですか?」





そう言うあたしの隣に立って、苦笑を浮かべる旭くん。





「…源、あんなに嫌がってたのに、住むことに決まったんだな」


そんな言葉に、旭くんから源へと顔を向ける。





そこにはコントローラーを振り回して騒いでいる源。





「…うん、お世話になる」





「あ、俺ね、聞いたよ。源から」





もう一度、旭くんへと視線を向ける。相変わらず笑顔な表情。





「聞いたって?」





「育ててくれたおばーちゃんが亡くなっちゃって、住む所がなくなったって」





「…ああ」





「ドラ奈実なーんで黙ってたの。」





「黙ってたわけではなくて…」





「ふーん」





顎に指を置いて、あたしを上から下までジロジロと見る旭くん。





それに反応して思わず身構える。





「な、なに?急に」





「いやー源の体操服が良くお似合いで」





「馬鹿にしてるな、オヤジめ」





「はは。」





「…い、痛い」





笑顔であたしの頬を抓らないでください。


「源、そんなドラ奈実を見捨てられなかったんだね」





「……え?」





「その話聞いて、自分と重ねちゃって放っておけなかった訳ね」





そう言って、源達の所へ歩いて行く旭くん。





源からコントローラーを奪っている。





「…ゲームしないんじゃなかったっけ」





しかも次々に標的を倒していっている。





りっちゃんと千穂なんか、口をぽかんと開けて見ている。





「……………。」






千穂には気にするな、と言われた。





だけど、





『自分と重ねちゃって…』





やっぱり気になってしまう。





あたしの、駄目なところだな…。


「俺の祝福の時を教えてやろう」





ソファーの上に乗って、ポテトチップスのり塩味をパリパリと食べる源。





その前に胡座をかいて座る千穂、りっちゃん、旭くん、あたし。





ゲームをやめた彼ら達。





調子に乗った源が突然、ガキ大将の様にしゃしゃり出て来た。





「そう、そこのブス。朝の11時はアニメの時間だろーが」





え、そんなの知りませんけど。





そんな約束してませんけど。





「そう言うことで、お前ら俺のアニメタイムの邪魔すんじゃねーぞ。邪魔したらぶっ飛ばすからな」





ビシッと、りっちゃんに向けて指をさす源。指にのり塩がついているが、そこには触れてあげないでおこう。





「ああ?俺が今から奈実と学校巡りすんだよ」





「なに!?りっちゃん、学校巡りって…!」





「この学校来てからいつもここしか居ねーだろ?だから中を案内でもしてやろーと思ってよ」





「わ!それ楽しみ!」


りっちゃんの言葉に興奮して立ち上がるあたしの頭をバシッと源が叩く。





「裏切んなボケ」





「裏切るも何も約束してないもんね」





「んだとコラ」





「だって、探検みたいで絶対楽しいじゃん!!」





「意味わかんねんだよ。わかってっか、お前は居候の分際だぞ」





眉を寄せて、睨んでくる源。その源の肩を押すりっちゃん。





「だから家でいくらでも見れんだろうがよ」





そんな言葉に、黙りこむ源。隣の旭くんはケラケラと笑っている。





「……チッ…」





「いいじゃーん、源ちゃん。楽しそうじゃん校内案内。な?千穂」





「ああ」





ん?あれれ?あなた達も参加?





「ひっさしぶりじゃんよ、歩き周んのも」





「ああ、早く行こう」





「てか、旭くんと千穂のが張り切ってるし!」


この時間帯は恐らく授業中なんだろう。





遠くからだけど、廊下に溜まって座り込んでいる生徒もチラホラ見える。





だけど、





「どっから行く?食堂は覚えてるよなー?」





「うん!」





「あ?食堂?今から食堂行こうぜ。アイス食う」





「アイス…。いいな」





「案内すんるじゃねーの…お前ら」





この四人が廊下に出た瞬間、景色は変わる。





廊下に座り込んでいた生徒達は目を丸くしてこっちを見て、すぐに腰を上げる。





近付いて行く彼らに驚いて、そのまま動かない。





「邪魔だっつの、お前ら」





そんなりっちゃんの言葉に、怯えた様に教室の中は逃げ込む。






……なんか、凄いな。この人達。


長い廊下を越えると、階段を下る。





向かう場所は、まだ人気のない食堂。





ここは、一度りっちゃんと来たことのある場所。





「…結局食堂なんだ」





「お前の案内なんて後だボケ。先にアイスだ」





そう言って駆け寄る源。





隣でスパスパと煙草を吸っている旭くんは、「俺、ピノねー」と源に告げている。





「外で煙草なんて吸っても大丈夫なの?」





「20だからいいの」





「…そういう問題かな?」





じゃー、その隣で堂々と煙草を吸い始める千穂はどうなんだろう。





じっと見ていると、白い煙を出しながら「ん?」という顔であたしを見る。





「なんのアイスが好きだ?」





「えっ?」





「アイス」





「えと…シャーベット系」





「買ってやる」





「えっ、いいよ、千穂」





「買う」


シャリシャリ、とラムネアイスを食べながら再び廊下を歩く。





結局、千穂に買ってもらっちゃった。





それにしても、みんなアイスを食べながら歩いているから変な団体みたい。





チラホラいる生徒達も驚い表情でこっちを見ている。





「ガリガリ君うめー」





「つーか、俺ピノがいいっつったのに。なんでガリガリ君?」





「そっちのがお手頃価格だろ」





源と旭くんの会話に、ぷっと吹き出す。





それにしても源はいっつも、お金節約してるっぽい。単に持ってないだけなのかな…?





何か、関係あるのかな。





旭くんの言った、意味深な言葉と。





「………源、」





「ああ?」





「……や、ううん。なんでもない」


首を横に振ると、「んだよ、気持ち悪ぃな」と毒を吐く。





そんな源を見て、やっぱり気にしない方がいいのかなと思い始める。





本当は気になるけど、当の本人はこの調子だしね。





それに、知り合って間もないあたしがズケズケと聞いていいものじゃないと思う。





「ドラ奈実」





「ん?」





旭くんに声をかけられ、振り向くと鼻をぎゅっとつままれた。





「わかりやすすぎだわ」





「な、なにが」





「俺がいらねー事言ったからかな?」





「……き、気にしない様にするから」





「うん、それが一番だな」





鼻から、手がスっと離れていく。





それを目で追ってると、ポタリと滴が地面に落ちる。





アイスの下の部分が溶け始めている。





「ああっ…!まただ!」





学ばないあたしは、棒を滑らせて急いで口の中に放り込む。





そして、今日も。





「本当にアイスを食べるのが下手だな」





千穂が躊躇いもなくあたしの手首を掴まれた。


みんなが見てても、気にもしないで。





ベタついたあたしの指に、触れてくる。





「ベタつきを共有しなくていいから!ね?」





そう言って手を引っ込めると不思議そうな表情を浮かべる。





こっちのが不思議なんだけど。





その後、自分の手を見てちゅっ、と唇につける千穂。





そんな仕草に、思わず胸が跳ねてしまった。





「次…、次どこ案内してくれるの?!」





千穂から目を逸らし、りっちゃんの隣に並ぶ。





奴は危険人物だ。見ていたら頭が可笑しくなりそう。





「どこでもいいぞ」





「どこでもいいなら、俺は可愛い子探しがいいな~」





あたしとりっちゃんの間にふらりと現れて、肩を組んでくる旭くん。いや、エロオヤジ。





「お前一人で行けよ」





「ひでーな律は。いつも野郎ばっかなんだからちっとは癒されに行こうぜ」





「え、なに。野郎ばっかって。あたし思いっきりレディーですけど」



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