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棘の蜜  作者: かすみ
第1章
12/23

まんまるまる

午後17時半。





古い扉を開ければ、二度目に見る光景。





真っ先に目が会ったのは、今日もツルツルのおじさん。





「らっしゃい。向こうにもう仲間来てるぞー」





「おー、源達だよな」





「あんま騒ぐなって注意してくれよ」





「客いないから構わないだろ」





旭くんがおじさんと親しげに会話をしている。





視線を変えれば、二時間前に別れたばかりの源と、可愛いふたりが目に映った





「あーー!なみちゃんだーー!」





「ほんとだ!姉ちゃんだ!!」






ず、きゅん。





クリクリな目を大きく開いて、手を振るゆずちゃんと葉くんに胸をやられる。





攻撃を受けてグラリとよろめいていると、隣にいる千穂が変な目で見てきた。


左隣には、りっちゃん。右にはゆずちゃんと葉くん。





「千穂、千穂。俺クリームソーダ飲みたい!」





「ゆずもクリーム、クリーム。サクランボ」





「ああ、頼め」





そんな会話を聞いて、斜め前に座る源へと視線を向ける。





お兄ちゃんの座を取られているぞ。





「千穂、俺コーラ」





おい、お前もか。





心中で思わず突っ込みをいれていると、りっちゃんが顔を覗かせた。





「奈実、何食う?」





メニューをあたしに見せてくれている。それを見たゆずちゃんが目をキラキラさせてメニューを指差す。





「ゆず、これ食べたい」





「じゃーそれにしようか。一緒に食べようね、ゆずちゃん」





「うん!!」





「……ううっ」





「どうした、奈実」





「いや、ゆずちゃんが兄に似ず可愛すぎて胸が締め付けられる」


頷くりっちゃんの額を、源が割り箸で指す。





ガタ、とテーブルが揺れて立ち上がる二人。





火花が散る二人を他所に、旭くんは頬杖をついて笑顔で携帯を弄っている。





千穂は「火傷する」と注意しているけど声が小さくて二人の耳に届いていない。





「もう、本当にお兄ちゃんはダメダメね」





ゆずちゃんの顔を覗きこむと不思議そうな顔してコテンと首を傾げる。隣の葉くんは氷をガリガリと噛みながら「まーね」と笑う。





その後は、ハゲのおっちゃんに注意され大人しく座り直してオーダーを伝えていた。





お客はあたし達だけなのに、賑やかなこの場所。





辺りを見渡せば、鮮やかに見える。





まだ二度しか来た事がないけれどこの場所は、好きだ。


それは、ヤクザのおっちゃんのMasa’s cafeと同じ場所だからかもしれない。





10年前は、カフェではなくお好み焼き屋さん。





この店は、いずれなくなってしまうんだろう。





だけどよく見ればこの店の内装、見覚えがある。





天井、造り、広さ。





テーブル等は変わっても、同じ箇所が幾つかある。





「そっか…」





「どうした?」





向かいに座る千穂が不思議そうな顔をするので、ううんと首を横に振った。





「あたし、ここ好き!」





「お前はそう言うと思った」





「へへ。よし食うぞー」





「こらドラ奈実、女の子が食うとかいう言葉使わない」


旭くんに注意され、てへっとお茶目に笑ってみる。これでも女の子アピールのつもりだ。





だけど残念ながら見ていなかった。





「なみちゃん、なみちゃん。見て」





ゆずちゃんが小さな手であたしの肩をぎゅっと握って揺さぶる。





視線の先には、運ばれて来たお好み焼き。





「美味しそー!ひゃっほーい」





「ひゃっほーい!きゃはは」





「…かわい!どうしよりっちゃん、ゆずちゃんが可愛いすぎ」





「ん、ああ」





頷いて、ジンジャエールの入ったグラスを口につけるりっちゃん。





それを見たゆずちゃんは目をキラキラと輝かせている。





「どしたの、ゆずちゃん。そんな可愛い顔して」





顔を覗き込むと、ただでさえ小さいのに縮こまって嬉しそうに笑う。





「律くんがね、ゆずを見てくれた。いつもね、見てくれないの」





そう言ってりっちゃんをチラチラと見るゆずちゃん。





「ん?」






な、なんだと…!





りっちゃんも隅に置けない男だ。





こんな可愛いゆずちゃんに想いを寄せられているなんて。


このこの、とりっちゃんの腕に肘で押すと何を思ったのかジンジャエールの入ったグラスをあたしの口元に持ってくる。





「ん?ジンジャエール?」





「飲みたいんだろ?いいぞ」





「罪な男よ…」





「え、俺奈実に何かした?」





目を揺らして、心配するりっちゃんにううんと首を横に振った。





「お?いらねんなら俺にくれや」





すると、突然源の手が伸びてくる。





りっちゃんのグラスに手を伸ばしたが、空振っている。





「誰がお前にやるか」





「そーだそーだ!」





「てめーも何調子のってんだキチガイ。その顔面鉄板に押し付けるぞ」





「やだーやだお兄ちゃんこわーい。ねーりっちゃん」





「こわーい」





「ぶっ飛ばす!」





「あはははははははは!」






気がつけばお腹の底から、笑ってる自分がいる。





変なのばっかだけど、一緒に居るのが楽しい。


お好み焼きをみんなでつつきながら、くだらない事で盛り上がる。





暴れた源が腕にソース付けてるのも可笑しいし、りっちゃんのお好み焼きにはマヨネーズとケチャップがてんこ盛りなのも面白い。





旭くんはさっきからお好み焼きを切り分けてくれてるし、千穂はもくもくと食べてる。





「ほらドラ奈実、これお食べ」





「わーい!でもそろそろお腹いっぱいだぞ。千穂、半分こしよ」





「ああ」






楽しい。





今までになかった感情があたしの中に芽生えて、胸が熱くなる。





「第3高校っていいね!」





そう言って微笑みかけると、表情が柔らかくなる千穂。





「ああ」





「来てよかった!」





「ああ、俺も思う。お前も仲間なんだから、隠し事はするなよ」






仲間……。





そう言ってくれた事が嬉しくて、帰るまで顔がにやけっぱなしになっていた。


午後20時過ぎ。





お腹がいっぱいになったあたし達は、まんまるまるを出た。





ゆずちゃん達も居て、遅い時間だし解散。





みんなは家に帰るけど、あたしは学校へ戻る。





「じゃーな。」





旭くんの声にみんな歩き出すけれど、千穂だけはあたしの隣。





「お前の家は向こうだろ」





「俺も学校行く」





「こらこら、この子もお年頃なんだから」





旭くんに腕を掴まれた千穂は不機嫌そうに眉を顰める。





まさか、またあたしと一緒に寝ようと考えていたのか。





「千穂、また明日ね。あたしひとりで充分だから」





「…………。」





渋々、といった感じで家路に向かって歩く千穂。





他のみんなももう帰っていった。





あたしはスキップして学校へ向かう。







数時間後。ひとりで充分と、そう言った事を後悔する事になる。



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