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棘の蜜  作者: かすみ
第1章
11/23

凄い馴染んでね?

ここ三日。





男達しか居なかったこの場所にレディーが一人加わった。





女の子は勿論好きだけど、この子はまた変わった子で。かなり変な子だ。





「じゃ、コーヒー牛乳一気飲みしてくる!」





「おー、いいじゃねーか今度俺も行こっかなー」





さっきも、あの手懐けが難しい自由人の律と手をブンブンと振って此処を後にした。





どうやら銭湯へ向かった様子。





名前は、奈実ちゃん。ドラ奈実。





「奈実戻って来ても、アニメなしな」





「ああ?さっきの続き見るに決まってんじゃねーかよ」





「目が痛い」





「律、源。奈実どこに行った」





居なくなっても、その奈実の話。





千穂までもキョロキョロと辺りを見渡して銭湯に向かったドラ奈実を探している。


「銭湯だってよ」





「…あいつ戦いに行ったのか。そうなのか」





そしてこいつも変な男だ。戦いってなんだよ、訳わかんね。





「風呂だ、風呂!髪と身体洗いに行ったんだよ!今日もネジ飛ばしてんなー」





源は口は悪いけど、優しい。わざわざ教えてあげている。





「あいつ、髪いい匂いするもんな」





「千穂!お前とうとうイかれたな!」





「なんだよ千穂。いつの間に奈実の髪匂ったんだー?」





「あの甘い匂い好き。でも今日はべたついてた」





うん。やっぱり、奈実。奈実。奈実。





どうしたよお前ら。





俺はいつの間にか現れて、いつの間にかそれが当たり前みたいになっているのが怖い。


いい子だと思う。





だけど、謎が多い。





この第3の、この隠れ場所に安易に入って見せた。





一年の時に、トップ争いのお陰で手に入れたこの場所。





この学校の奴らでこの場所に入ろうとする奴なんていない。ましては女の子なんて。心っちでもここには足を踏み入れる事はない。





転校して来たからという事はわかるが、入る前に何かしら噂は聞くだろう。





謎すぎる。





現に、"奈実"という名前しか知らない。





「今日、久々にあそこ行こうぜ。」





「おー!いいじゃねーかゆずと葉も連れてくぞ」





「ああ、奈実がいるから喜ぶな」





「あ?なんだ、奈実とゆず達会った事あんのか?」





「律、お前には教えねえ」





「意味わかんねーよ、千穂」






…本当に、馴染み過ぎている。


「いつからそんな馴染んじゃったよ、あの子」





そう声をかけてみると、三人の目が集中して俺を捕える。





そんな目で見られたら縮んじゃうぞ。





「どういう意味だ」





千穂が、声のトーンを変えて俺に問う。





それに改めてあの子は凄いな、と感心した。





「いや、別に変な意味とかじゃなくて。単に思っただけ。よく考えたら俺らはまだあの子の事知らないなって」





「これからいくらでも知れるだろ」





千穂の声に便乗して、律が口を開く。ちょっと怒りの含まれた言葉。





「なんだ今更。いつからとか、馴染んだとかどうでもいいだろ。関係ねえ、俺が認めてんだ」





「違う、最初に認めたのは俺だ」





いや、そこ張り合うなよ千穂くんよ。


「あいつはキチガイでブスってことよくわかってから十分だろ」





頭の後ろに腕を回しながら、笑う源。





俺だって別に、嫌じゃない。





"普通"すぎて、自然すぎて逆に驚いただけ。





「確かに女の子いた方が華やかだしな」





ドラ奈実もギリギリのラインで女子だもんな。





「旭、勘違いすんな。華やかなものなんて持ち合わせているかボケ」





「そうだな、うん。…もう俺別に何も気にしねーよ」





「俺が入れるのを許可してる。あいつは悪い奴じゃねえ」





昨年、この学校でトップになったお前にそう言われちゃ尚更頷くしかないな。





この場所も、元々はお前の場所だ。






深く、考えたりすることじゃないかもな。





それと、今あの子の事をもっと知り合いと思い始めてるから本当怖いや。





何者だよ。


ドアがガラ、と音を立てて開く。





噂をすれば。





そう思って笑みを浮かべると、ドラ奈実は「ただいまー!」と無邪気にハシャいでいる。





「コーヒー牛乳飲んだのか?」





「飲んだよりっちゃん!腰に手を当てて一気よ!」





「カックイー」





自慢げな顔をする彼女に、馬鹿なコだなと思ってまた笑った。





彼女のお陰か、この隠れ場の雰囲気もよくなっていたりもする。





「本当だ、シャンプーの匂いいいね」





「な、なんだオヤジ!!」





「オヤジ言うな小娘」


胸元まである茶色の髪に触れると、彼女は俺から離れて行ってしまった。





ソファーに腰をおろしてテレビのリモコンに手を伸ばしている。左隣には律。右隣には千穂。その前には源。





「わー、タモさん若いー」





「あ?どこが若いんだ?」





遠目から見て思う。それにしても色気がないな。





もうちょっと色気のある女の子だったら嬉しいのに。





心っちみたいに。いや、あの子は格別だな。





「おーい、旭ー。今日何時から『まんまるまる』に行くんだー?」





源の声に、俺も近付いて行き答える。





「何時でも。」





「なんだそれ」





「なに?まんまるまるって!!」


ドラ奈実が左右にキョロキョロと顔を動かせて、興味津々。





「ねえ、なにその可愛いの!」





確かに、『まんまるまる』って可愛らしいネーミングだけど。実際は全然可愛いとは程遠く小汚い店。





「お前行った事あるだろうが!」





源の突っ込みに、ドラ奈実は「えー!」と目を大きく見開いて驚いている。





へえ、行った事あるんだ。





「あのお好み焼き屋だ、ボケ」





「え、あのお好み焼き屋?源がゲソばっか食べて挙句の果てにはあたしのお金でさんざん食べたあのお好み焼き屋?」





「お前それ嫌味言いてーのか?お?キチガイ」





源の手で頬を挟まれて、えらく不細工な顔になっているドラ奈実。





それを見て苦笑しながら、俺も会話に入る





「俺らあそこの常連だから」





「へえー…」





納得したように何度も頷いている。





だけど、眉が少しだけ寄っている。何か考えている様なそんな表情。





「どうかしたか?」





「ううん、何食べようか考えてる」





「なんだそれ」




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